第18話 ≪亡霊≫ セティ視点
気絶した不審者を石の中に封印し、一息つく。
もし、ライルさんのこの魔石を渡されなかったら、死ぬほどではなくても、無傷ではいられなかっただろう。半分位は防ぐことはできたかもしれないけど、全てを防ぐなんてまだ俺には出来ない。最悪の場合、判断を誤れば重症もありえただろう。この勝利は俺の力だけじゃない。ライルさんのおかげだ。合流したらお礼とともに伝えよう。
そう思い、転移石を使おうとした瞬間、ナイフが飛んできて転移石が真っ二つになる。
「! 誰だ!」
「流石、ぺリティカの英雄、セティ・ギャリバーン。あれ位ではお前を倒せないようだ」
声をした方に振り替えると、黒い服に身を包んだ、だけど、今まで見てきた謎の集団達とは違う雰囲気の男が立っていた。一目で分かった。今までの奴等とは違う。まやかしではない、本物の強者であるということが。
「お前もさっきの奴等の仲間なのか? それも、仲間の中で上の立場の。」
「ほう、一目で見抜くとは、流石英雄と言ったところか。
そうだ、俺はあいつの仲間で、リーダーと呼ばれている」
リーダー、ってことは奴等をまとめる一番上の人間ということか!
「どうして奴等のリーダーがこんなところに……っていう顔をしているな」
「!」
「俺はあいつらのリーダーだが、後ろに隠れるつもりは毛頭ない。
だが、安心しろ。今回は、お前と戦いに来た訳じゃない。ただ、足止めに来た。まだ、あの加工術師の所に行かせる訳にはいかない」
「それは、どういうことだ! お前たちは何者で、なんでライルさんを狙っている!」
「何者、か。そうだな。名称をつけるとすれば、≪亡霊≫。そう呼んでくれたまえ。
それと、俺達がライル・エリドットを狙っている理由だな。それは単純に、彼が優秀すぎる加工術師だからだ。是非≪亡霊≫に来てほしいからな」
それもあるだろうが、それだけではない。表情は見えないが、奴の話し方で直観的に分かる。≪亡霊≫は技術的面ともう1つの理由でライルさんを欲している。どんな理由かは分からないが、こいつ等に、ライルさんを渡す訳にはいかない。それだけは理解できた。
今すぐ合流したいところだが、転移石が壊され、ライルさんが今どこに居るか分からない。むやみやたらに探しても良いが、会えなければ意味がない。だが、今はそうするしか無さそうだ。
「おっと、彼を探しに行こうと? そんなこと俺が許すと思っているのか」
そういうと、≪亡霊≫のリーダーは指を鳴らす。すると、遠くに居たはずのシャドーモンスターがこちらにやってくる。それだけではなく、他の≪亡霊≫の奴等が俺の周囲を囲む。
その間に、いつもの間にか不審者を封印していた石とさっきまで居た男が居なくなっていた。目を離している隙に逃げられたか……。
それよりも今はこの状況を打破するか考えるべきだ。このままでは、ライルさんを探しに行くことすらできない。まだ危険ではないようだが、それでも何かあったらと思うと、気が気ではない。やっぱり、あの時に無理やりにでも一緒に着いていくべきだった。だが、今後悔してもしょうがない。
剣に魔力を流し、全ての属性の魔法を発動させる。苛立ちをぶつけるようにモンスター、人間構わずぶっ放す。モンスターの一部は消え、≪亡霊≫のメンバーは全員気絶させることに成功した。しかし、シャドーモンスターの数が、時が経つほど増えていく。このままでは、キリがない。
どうしたらいいんだ。良い方法が思い浮かばず焦る。とりあえず、魔法と剣で向かっていくしかないのか……。そう思った矢先、モンスターの一部が吹き飛んだ。
「よう、かなり苦戦しているようだな」
「! あ、あなたは!」
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