第17話 禁忌の魔法 セティ視点
「これが、貴方の魔法ですか。――素晴らしい!
なら、こちらもそれに応えましょうか!」
水の蛇はシャドーマンに吸収され、影も形も無くなった。そして、その魔法を二倍の威力にして返してきた。とっさに光のマークに触れ、防御壁を張って蛟を防ぐ。なんとか耐え、防御壁を解除する。そこを狙ったかのように火でできた矢の雨が襲い掛かってくる。避けれる矢は避け、無理なものは水を纏った青銅の剣で打ち消す。攻撃が治まり敵を見据える。
今の力はどう考えても加工術によって生み出された魔法ではなかった。加工術を発動させる様子が見えないし、隠しているようではなかった。
「もしかして、魔術を使ったのか?」
「流石、ぺリティカの英雄ですね。魔術の存在も知っていたとは。
えぇ、貴方が考えている通り魔術ですよ」
あまり上品とは言えない笑顔をして堂々と答える不審者。これは困ったことになったかもしれない。
魔術、それは悪魔の力とも言われる禁忌の魔法。加工術を通じて発動させるのではなく、自身の魔力を使い、詠唱か無詠唱で発動させられる。加工術由来の魔法と比べ威力は高く、発動時間が短い。しかし、その代わりに代償が伴う。通常の魔法より魔力を使い、使用者にダメージを与える。そのため、悪魔の力とも呼ばれる禁忌の魔法である。――だが、目の前の不審者はダメージを受けている様子も魔力を大量消費して疲れているようにも見えない。
もしかしたら、影を纏っているためか? あの影には力だけでなく、魔力・生命力をも上げるのかもしれない。とりあえず、敵の謎の自信が分かった。確かに、化け物じみた力だ。魔法を撃ったとしても、倍にして返されるだろう。もしかしたら、俺が負けるかもしれない。
でも、かもしれないは可能性だ。一つ、思いついた策がある。成功するかどうかは今はどうでもいい。成功させなくてはいけない。早くライルさんと合流するためにも!
「おや、もう諦めましたか? 私に攻撃しなくていいんですか? どうせなら先攻をお譲りいたしましょうか?」
「ふふっ、そんな分かりやすい挑発が俺が乗ると? 先攻はいらないよ。好きなだけ撃てばいい。俺は逃げも隠れもしない」
「言う通りにするとでも? まぁ、乗ってあげましょう。今ここで貴方を殺さないと、後程辛くなるのでね。
さようなら、ぺリティカの英雄」
そういうと、火・水・風・土・雷・光・闇の魔術を発動する。火は狼の、水は人魚の、風は鳥の、土は竜の、雷は虎の形を取る。光と闇は球形になり混ざり合う。それが自我をもっているかのように、俺に襲い掛かってくる。怖くない、といったらウソになる。
だけど、それよりも俺はどこか高揚をしていた。今まで危険という危険はなかった。だからこそ、高揚する。もしかしたら、笑っているのかもしれない。こんな時、ライルさんが居てくれたらどれほど良かっただろうか。収納魔法がかかっている石から取り出したアメジストを握りしめながら思う。握りしめている方の手を魔術の方に向ける。
その時、俺に向かってくる魔術が砂の粒のように細かくなり、アメジストに吸い寄せられる。徐々に形を失い、そこにはアメジストを握りしめた俺と呆然に立ち尽くす敵だけが残った。
「な、なんだその石は……。魔術を、魔法を吸収した、だと?」
「少し、聞いていいかな? 魔石に魔力を補充する方法は知っている?」
「い、いきなり何を聞く! や、やめろ! それを持ってこちらに来るな!」
「魔石に魔力を補充するには、手を握って魔力を流すか魔石に向かって魔法を放つ。すると、魔力が補充されるんだ。魔石はね、流れた魔力や魔法を吸収し、貯めこむ。そう、ライルさんが教えてくれたんだ。魔石であるこのアメジストが、かなり多くの魔力を吸収することが可能だってことも」
「やめてくれ……やめてくれ……」
「その様子だと、その力も魔法、いや魔術の一種かな? まぁ、どちらでもいいや。
このアメジストはまだ魔力を欲しているんだ。そう、君の魔力を、ね」
そう言いながら、逃げようとする敵に一瞬で近づき魔石を近づける。瞬間、アメジストに吸い寄せられるように黒い影がアメジストの中に入っていく。そのすべて吸収されたあと、不審者は気絶した。
「これで俺の勝ちだね。今度こそ、聞こえていないようだけど」
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