第16話 戦闘 セティ視点

 ライルさんと別れ、他のシャドーモンスターを倒しながらレオーラさんを探す。さっきレオーラさんから連絡があった時からそこそこ時間が経っている。とりあえず、『金獅子亭』に向かって、安否の確認だけでもしなくては。

 そんな時、後ろから僅かだが気配を感じた。どうやら、俺に向かってくるのは一人だけだが、周囲に複数の気配を感じる。剣を縦にもち、雷のマークに触れて魔力を軽く溜め、気配全部に放つ。何人かは直撃したようで、気絶させる事に成功した。しかし、後ろの誰かには当たらなかったようだ。


「おっと、いきなり攻撃とは。英雄にしては卑怯ではありませんか?」

「後ろから攻撃を仕掛けようとしてくる不審者だけには言われたくないね。

 というか、俺の事知っているみたいだね。用は何? 立ち去らないと、危険な目に遭うよ」

「おやおや、怖い怖い。英雄は穏やかな人物と聞いていたが、ガセのようですね。

 用は貴方じゃない。ライル・エリドット、用があるのは彼の方ですよ。最近貴方と彼が一緒にいると伺っていたのですが、今は違うようだ」


 ライルさんに用だと? という事は、本当にライルさんが狙いという訳か! それも、個人ではなく集団で。それに、なぜ彼と俺が一緒に居たことも知っている? 謎は深まるばかりだが、一つだけ分かったことがある。


「前回、ライルさんを狙ったアイツもお前たちの仲間かっ!」

「ご名答、その通りです。ですが、これ以上、話すことはありません。貴方はここで死ぬのですよ、英雄セティ」

「俺が? どうやって?」


 仲間は数人気絶しており、目の前の気配達は消えている。逃げたようだ。それなのに、俺を殺そうとしている。一人でも俺を殺せる程の何かを持っているというのか?


「それは、こうですよ!」


 そういうと、不審者は黒い球を口に放りこむ。瞬間に、目の前の人間に影を纏う。見た目も力の感じもシャドーモンスターにそっくりだ。そのままだけど、名付けるならシャドーマン、かな? シャドーモンスターと同じ存在か? いや、シャドーモンスターは、モンスターの影のようなもので実体ではない。そこにあるように見えるが、斬っても血は出ないし、死体も残らない。致命傷を与えれば黒い粒子となって消えていく。なら、このシャドーマンも同じなのだろうか?

 とりあえず、色々考えたって今は何も分からない。いつも通り戦う、ただそれだけだ! 鎧の加工術を発動させ、防御力と身体能力を上げ、精神を集中させる。敵がシャドーなら、使う属性は光の方が良いだろうか? しかし、シャドーだからといって、光属性が有効な訳ではない。見極めて使っていこう。それに、ライルさんから渡された加工術もある。どんな手を使ってでも、目の前の敵を倒さないと。


 しばらく敵と睨み合う。先に動いたのはシャドーマンだった。素早い動きで俺の間合いに入り込み、キックを繰り出す。それをとっさに光の膜で覆った剣で受け止める。やはり、攻撃力も上がっているようで、少しだが後ろに下がる威力であった。


「やはり、貴方にはこの程度は効きませんか」

「へぇ、喋れるんだね」


 通常、シャドーモンスターは理性がなく、意思疎通は不可能だ。しかし、あの黒い球を飲み込んだ場合は違うようだ。自分の意識を残したまま、シャドーモンスターの力を手に入れることができるのか。少し厄介かもしれない。とりあえず、早く倒してライルさんと合流しないと。鎧から収納魔法が書かれた紙を出す。そこに魔力を流してライルさんの加工術を何個か出す。


「おや、何をするつもりですか?」

「魔法剣士は、剣とで戦う。それは何も、剣に魔法を纏うだけじゃない。」


 石に施された加工術の一つに魔力を流す。すると、蛇のような水流が渦を巻き、敵を呑みこんでいく



「魔法≪ミズチ≫ これが、魔法で戦うということだよ。

 ……もう、聞こえていないかもしれないどね」

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