第15話 ライルの武器

 着いた時、そこは戦場だった。巨大なモンスター達に立ち向かう冒険者や兵士、マスター。レオーラが言っていたように、戦える者達総出のようだ。


「ライルさん、俺から離れないでくださいね。今度こそ守ってみせます!」

「安心しろ。守られるだけの私ではない」


 そう言って、目の前にいるトロールの脳天に照準を定め、魔法弾を放つ。私の姿に気付いていないのか、弾が早かったのか見事頭を貫通した。それにより、トロールは倒れ、黒い粒子となって消えた。どうやらトドメを刺すことが出来たようだ。


「な、なんですか、それ! それも武器なんですか?」

「あぁ。確か、≪銃≫といったか。これは魔石を嵌め込んで使用する魔法銃、いや魔石銃だろうか。特注の銃だ。この銃専用のいろいろな種類の魔法の弾が放たれる。そのままかもしれないが、私はこの弾を魔法弾と呼んでいる。今のは風属性の力が籠められた弾で、目に見えない速さで放たれる」

「そんな武器もあるんですね。

 あれ、あの時はなんで使用しなかったんですか?」

「あの時? あぁ、ドラゴンの時か。あれは君の実力を見るためだ。持っては行ったが、もしもの時用だ。私が一緒に戦ったら君の邪魔になるだろう」

「た、確かに」


 目線をトロールがいた場所から、戦っている者達に視線を移す。無事な者もいるが、何名か怪我しているようだ。

 仕方ないが、人がたくさんいて、嫌な気分になる。とくに重傷の人間がいるのが気に食わない。私は彼らに銃を向ける。


「な、何をするつもりだ! トドメでも刺そうというのか!」

「そ、それは駄目です、ライルさ――」


 周りの冒険者や彼が必死に私を止めようとする。しかし、制止も聞かず引き金を引く。瞬間に光が重傷の冒険者を包み、傷を癒していく。


「傷が……」

「今撃ったのは回復弾だ。これを撃てば、死んでいない限り、欠損していようが、致命傷だろうが治る」


 確かに、私は人が嫌いだ。だが、私の見えるところ、見えないところだろうがなんだろうが、勝手に死なれるのも嫌だ。矛盾していると思われるかもしれないが、それが私だ。仕方ないだろう。

 傷の具合に関係なく治療弾が届くように空中に放ち分散させる。分散された弾は光となり、傷を癒していく。どうやら、ここの負傷者はすべて治療できたようだ。だが、怪我している人達は他にもいるだろう。だが、治療しながらでは彼の邪魔になる。それなら――


「そこの冒険者、他にも負傷者はいないか?」

「……。! は、はい。負傷者は救助テントで治療中です。案内しますね!」

「これから、私は負傷者を治療していくから、君は先に敵を倒しておいてくれ」

「で、でも!」

「さっきのを見ただろう。あまり強くなければ、身を守ることができる。早く治療を終えて君と合流するから、他の冒険者を助けに行ってくれ。私と行動しているよりも、ここで別れた方が英断だ。君の力を、私だけに使わないでくれ」


 だが、それでも彼は嫌そうな顔をしてその場を動こうとしなかった。仕方ないな。


「君にこれらを渡そう」

「石? 転移石と、もう一つはなんですか?」

「それは私が危険な時に光る石だ。その転移石は私がもっている転移石と繋がっている。使うと、片方の石の方へ移動できるから、その石が光ったら転移石を使え」

「……分かりました。今は、我儘を言っている場合ではないですよね。この国の為、戦ってきます」

「あぁ、行ってこい」


 彼が行ったのを確認した後、案内人と共にテントへと向かう。彼の心配はしていない訳ではないが、私が居ない方が彼も動きやすいだろう。それよりも、敵の狙いが何か気になる。

 人が何かをするにはそれには何かしらの理由が伴う。もしや、昨日捕らえた人間の仲間で、助けに来たとしたら……。それか、他の理由か、それに加えてか……。

 考えても今は何も分からない。とりあえず、今は負傷者の治療を優先しなくては。 

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