第14話 出立準備

「申請も無事に完了したようだ。で、これから私は仕事だが、君のことだからどうせ――」


 見ているだろう? という言葉は、小型魔石通信機の着信音に掻き消された。どうやらレオーラからのようだ。


「私だ。あの人物について何か分かったか?」

「それはいま調査中よ。それも大事だけど、本題はそっちじゃないわ。

 王都が謎の集団とシャドーモンスターの襲撃に遭っているの! 出来れば、今すぐセティちゃんと一緒に王都へ来てもらっていい?」

「何だと!? 普段は結界のおかげで誰も侵入することはできないのにどういうことだ!」

「その結界が破られたのよ」


 あの結界がだと? 城壁には、私が考案した結界の加工術が作動しているはずだ。もし消された場合なら警告が鳴って、すぐに侵入することはできないようにもしていた。それが侵入されていたとは、もしや……。いや、今はそんな事を考えている暇はないだろう。


「そちらの状況は分かった。まだ、大丈夫か?」

「えぇ、ギルドマスター、冒険者、王宮騎士総出で対処しているわ。一般人の避難は完了しているから、建物以外の被害は出ていないわ」

「そうか。少し時間はかかるが、準備をして彼と共に向かう。それまで耐えていてくれ」

「えぇ、任せてちょうだい!」


 その言葉を最後に通信を切り、心配そうな顔をしている彼に、レオーラに言われた状況を伝える。彼に魔石がたくさん入っている袋を渡し、これに魔力補充を頼んだ。その間、いつものローブとを手にした。魔力が無い私のためにつくられた特注品だ。工房に行き、加工ペンと素材、さまざまな加工術を収納する。もしかしたら、必要になるかもしれない。居間に戻り、彼に魔石と交換にいくつかの加工術や便利なモノが収納された石を渡す。どのようなモノが入っているのかと発動方法を教え、魔石の転移装置へ向かう。


「忘れ物はないか?」

「大丈夫です。鎧と剣は装備しました。準備万端です!」


 その言葉を聞き、今回は王都の中に座標を設定し、発動する。

 不思議と不安はなかった。きっと彼がいるからだろう。まぁ、直接言ったりはしないがな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る