第13話 異色のパーティー

「パーティー申請って、冒険者登録をしてギルドに申請しないといけないんですね。誰かに誘われて組むことは多かったんですが、代わりにやってもらっていたので、知りませんでした」


 それ、報酬を横取りされていないか? と、言いたくても言わなかった。そもそも、パーティー申請は全員の確認をしないとできないはずだ。それはギルドでも魔石通信機で申請しても同じことだ。知らないという事を利用して報酬を騙し取る、そんな冒険者なんて五万といる。これだから、人間は……。


「それにしても、これが魔石通信機なんですね! 実物は初めて見ました。これで仕事とか買い物とか出来るんですよね!」

「そうだ。動画配信や小説投稿ができるサイトもあるそうだが、まぁ私には関係ないな」

「というか、魔石通信機ってなんでサイトやメールと通信できるんですか?」

「あぁ、それはな、魔力の波、魔波で繋がっているんだ」

「魔波なら知っています。各地の魔波発信所から流れているんですよね」

「その通りだ」


 魔波とは、専用の魔石の大結晶から発せられる魔力を加工した目に見えない存在である。場合によっては魔法戦士に魔力を大結晶に流し込んで魔力を貯蔵している所もあるようだ。この魔波のおかげで遠いところでも通信が可能だ。

 サイトの管理は魔石通信局が管理しており、魔力で作られた情報を保存しており、そこから魔石通信機を通じて情報などを引き出すというわけだ。リアルタイムでは、まだ少しラグがあるが生放送や、同時に遊戯を行ったりすることも出来るらしいが、私には関係がないな。


 どうやら、魔石通信局についてはあまり知らなかったようで彼は興味津々に話を聴いていた。


 魔波と魔石通信局の話はこれ位にしておいて、『金獅子亭』のサイトに向かう。ギルドのサイトでは冒険者登録、パーティー申請、クエスト受諾ができる。彼のように実際に行く人もまだいるが、私のように魔石通信機でクエストを受諾をする人も多い。受諾されたクエストはクエストボードから外されるので早い者勝ちである。

 まぁ、今はクエスト受諾に用は無い。冒険者登録の項目を選択する。パーティーを組むには、まず冒険者登録しなくてはならない。画面に私の情報を打ち込む。最後に魔力検査がある。この検査は魔力を登録する為のもので、本人を識別するのに魔力が必要になる。特に、ギルドカードは魔力登録をした本人にしか使えない。


「これってもしかして、ライルさん登録できないんじゃっ!?」

「安心しろ。冒険者の中には魔力が無い人も存在している。もう1つ登録する方法があるんだ」


 不安そうな彼を落ち着かせ、魔力が無い人の項目を選択するすると画面に小さい正方形が現れる。そこに、指をしばらく当てる。認証終了の文字が出たので指を離す。


「認証された! どうしてですか、ライルさん?」

「魔力というのは、人間によって違う。だが、そのようなものは何も魔力だけではない。指紋という、指にある細かい線達の形も人によって違うんだ。これのおかげで、魔力が無くてもギルド登録が出来るということだ」

「へぇ、凄いですね!」

「別に凄いことじゃない。指紋というのはな、君にも、他の者にも存在している。そのため、事件の証拠にもなるのだと最近発見されたようだ」

「こんな細い線たちが……。なんというか、不思議な気分になりますね」

「まぁ、そうだな。私にとって、この線達が私を証明してくれるモノであるがな。さて、利用規約も読み終えたし、パーティーの申請をするぞ。

 私と君の名前を書いて登録――って、パーティーの名前も決めなくてはならないのか」

「パーティー名ですか……。じゃあ、最強の二人とかどうでしょう?」

「却下だ」


 その後、彼が提案し、私が却下することを繰り返し、最終的に私が決めることになった。

 仕方ないので、私が子どもの頃よく読んでもらった童話から取るとしよう。



『パーティー名:勇気の雫 メンバー:ライル・エリドット セティ・ギャリバーン』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る