第11話 朝の一幕

 目が覚めると彼はまだ眠っていた。起こさないように寝具から立ち上がり、ドールに朝食を頼む。昨日は彼の実力を見るため、一個も依頼を受けなかったが、今日はそういう訳にはいかないだろう。工房へ行き、魔石を嵌め込んでいる通信機で加工術師協会のサイトにアクセスする。自分のパスワードとIDを打ち込んで、ログインする。どうやら、今日は小物の依頼だけのようだ。期日を確認すると、全部余裕があるものばかりであった。

 ちょうど朝食が出来る頃合いなので、ログアウトして居間に向かった。居間に着くと、椅子に彼が座っていた。


「あ、おはようございます!」

「おはよう。今日の朝食はラピッグのステーキ、スクランブルエッグ、サラダ、スープ、パンだ。言っておくが、ステーキは君だけだからな」

「分かりました! それにしても、油物が苦手って珍しいですね」

「別に肉と魚が食べられない訳では無いが、揚げ物やステーキなどの油が多いモノを食べると気持ち悪くなるんだ」

「それは、俺がそんな体質だったら耐えられませんね……」

「まぁ、もともと小食で野菜や卵の方が好きだから、私は構わないんだがな。あと、コケーコのササミとか、脂身が少ない魚などのサッパリしたものは好きだ」

「なんというか、俺とライルさんって本当に正反対な存在ですね。価値観とか夢とか、さまざまな事が」


 彼にそう言われ、確かにそうだと思った。何から何まで私達は正反対な存在であった。言葉に言い表せない不思議な気分になった。


「だからこそ相性が良いのかもしれませんね!」

「言っておくが、パーティーになると言ったが、私は君と仲良くなるつもりはない。今日は特別だが、私の仕事と君の戦闘以外に関して関わるつもりはない。それだけは覚えてくれたまえ」

「なら、俺が関わっていきますね。俺はあなたと仲良くしたいので」

「やめろ」

「嫌です! いつか親友、それが無理なら友人ぐらいにはなってみせますとも!」


 ――こういう所まで正反対じゃなくていいだろう。半ば呆れながらスクランブルエッグを口に運んだ。

 

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