第9話 襲撃

「ライルさん、危ない!」

「!」

「気付いたところでもう遅い」


 彼に言われ後ろを振り向くと、黒い服に全身を覆った人間が私に刃を振り下ろしていた。その刃が私に触れる瞬間、障壁が現れる。


「っ!?」


 弾かれた事に驚きすぐその場から離れようとする襲撃者。しかし、見逃す気はさらさらない。すぐに駆け付けたセティが襲撃者を抑えつけ、魔石に施した収納魔法から、封印の加工術を施した丸い石を取り出す。


「君、この石を正体不明の不審者に当て、魔力を流してくれないか」

「分かりました!」


 彼は石を受け取ると、私が言った通りに行動した。すると、石が光り、徐々に不審者が吸い込み、影も形も無くなった。


「え!? き、消えた? こ、これ大丈夫なんですか!?」

「安心しろ。さっきの人間をその石に封印しただけだ。拘束してもどうせ抵抗されるんだ、封印した方が早いだろう」

「た、確かに。で、でもびっくりしましたよ! というか、大丈夫なんですか!? さっきの壁みたいなのも加工術なんですか!?」

「落ち着け、ゆっくり説明する」




――――




「その服って防御の加工術を施していたんですね。デザインかと思っていました……。それにしても、封印されていても呼吸はできるんですね」

「あぁ。だが、その代わり飲食物を吸い込まないかぎり、食べることも飲むこともできない。だから、ぺリティカ王国に戻って『金獅子亭』の彼女に引き渡さなくてはな」

「はい! ……あの、ライルさん」

「ん?どうした、いつもより真剣な顔をし――って、おい!何故跪く!」


「申し訳ありません、俺がいながらあなたを危険な目に遭わせてしまうなんて……魔法剣士失格です。俺なんかがあなたの魔法剣士になんて――」

「それ以上、喋るな。それ以上口を開くと、怒るぞ」

「……」

「誰が、魔法剣士失格だ。私の魔法剣士を侮辱するな。君の姿を見て私は年甲斐もなく高揚した。君は私が夢見た英雄そのものだ。

 確かに、もしあの時、加工術の魔法が発動されていなかったら私は死んでいたかもしれないだろう。しかし、それで君を責めたりしない。あの時、私も油断していたんだ。悪いのは、私だ」

「そ、そんな! あなたが悪いなんて――」

「喋るなと言っただろう。分かったら、さっさとぺリティカ王国に戻るぞ」

「……はい」


 納得していない様子ではあったが、ちゃんと私の後ろを歩いていた。転移すると目の前に彼女――レオーラが立っていた。


「! おかえり、ライルちゃん、セティちゃーん!」

「レ、レオーラさん! ライルさんには抱き着かないでください! また気絶したらどうするんですか!」

「あら、ごめんなさい。 ならセティちゃんに抱きつくわ!」

「そ、それはちょっと……」

「それよりも、大事な話があるんだが――」

「え、告白ぅ?」

「違う!」


 今まであった事を全て話し、彼女に誰だか分からないやつを閉じ込めた石を渡した。同時に、解除の仕方も教えた。どうやら、全身黒だらけの何かは憲兵に引き渡すようだ。用事も終わり、家に戻ろうとすると引きとめられた。


「今日はここに泊まりなさい」

「嫌だ」

「拒否権はないわよ。今日、命を狙われた子を易々帰す訳にいかないわ! いやならセティちゃんに泊まってもらいなさい!」

「何故そうなるんだ」

「決定事項よ! いい、セティちゃん?」

「はい! すぐ支度してきますので、ライルさんをお願いします!」

「任せてちょうだい!」


 私抜きで、勝手に話を進めるんじゃない! せめて、どちらか選ばしてくれ!

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