第8話 セティ・ギャリバーンの実力

 ベフィロス平原に着いた時、真っ先に目に入ったのは黒だった。どうやら話に聞いていたとおり、シャドーモンスターのようだった。ドラゴンを倒すにはギルドランクA級以上の戦士で無いと倒せないモンスターである。それも、通常より強いシャドーモンスターなら、S級でなければ倒すのは難しいだろう。一体だけだから良いものの、これが何体もいたらと思うと生きた心地がしない。


「今はまだベフィロス平原で暴れているが、いつぺリティカ王国に牙を向けるか分かったものではないな」

「そうですね。早く倒さないと!」

「その前に、その剣でどうやって魔法を使うか分かっているか?」

「分かりません!」


 その答えに頭を抱えた後、簡潔に使い方を教える。すぐに覚えたようで、彼は防具の加工術を発動させ、シャドードラゴンにに向かって駆け出した。

 それはあまりに一瞬だった。剣に記された光の記号に触れたと思ったら、光が剣を覆うように包んでいく。全属性の記号は、上と下のにも繋がっているため、魔法の威力が増し、剣の切れ味も青銅ではなく鉄の剣だと思わせるほど上がっただろう。シャドードラゴンは向かってくる彼に気付いたのかも黒いもやの形をしたブレスを彼に放つ。

 しかし、その全てを薙ぎ払い、敵へと真っすぐ向かう。ドラゴンは天高く舞い上がり、剣の攻撃が届かない位置にいる。彼はどうするのかと考えていると、彼は剣を構え、魔力を溜めているようだ。ドラゴンはその間も彼に影のブレスが放たれるが、その全てが光の膜に防がれる。彼の魔力は小さいが鋭い光の刃を無数に生成していく。かなりの数になった時、彼は剣を横に振った。それを合図に、光の刃全てがドラゴンに向かっていった。

 ドラゴンは魔法を尻尾で薙ぎ払おうとするが、それすらも貫き、小さな穴を開けていく。


「グギャアアアアアアアァァァァァッ」


 ドラゴンは断末魔を上げながら、地に倒れ伏しのたうち回る。その隙を彼は見逃さなかった。息を整え精神を集中させた後、剣を覆う光の力を上げ、剣を覆いつくし、彼の背も超える光の刃となった。


「はぁっ!」


 大きな掛け声とともに剣を十字に斬る。その力によってドラゴンは4つに分断され、断末魔を上げる暇もなくドラゴンは息絶え、黒い粒子となり消えていく。

 シャドードラゴンの消滅を確認した後、彼は剣を鞘に戻した。今の彼の後ろ姿は、いつもの明るい彼とは違う何かを感じた。まるで彼が彼でないかのように。その姿に、恐怖よりも私は憧憬を覚えた。なぜなら、彼の姿が子どもの頃、母に読んでもらった勇者の姿と被ったからだ。危険も顧みず、勇敢に敵を討つ姿に抑えていた感情があふれ出す。


 伝説の勇者のような魔法剣士カレのようになりたい。それは何も知らなかった子どもの頃、何度も願っていた事であった。




 しかし、彼に見とれているあまり気が付くことが出来なかった。背後から近づく敵の気配に……。

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