第7話 緊急クエスト

「ベフィロス平原にドラゴンだと!? あそこは低級のモンスターしか出ない筈だ! そもそも、ドラゴンは高所以外に生息していなかったんじゃなかったか?」

「それはあたしが聞きたいくらいよ! それに、そのドラゴンは最近現れるようになったシャドーモンスターで、手を付けられないのよ。Aクラス以上の冒険者は、各地に現れたシャドーモンスターを討伐しにいっていて、暇な冒険者がいないのよー! あの平原はぺリティカ王国の主要の道だし、この国に攻めに入られたら、莫大な被害が出るわ。だから、早く討伐しなければならないのに!」


 だから彼を呼ぼうとしていたのか。シャドーモンスター、それは最近現れた影を纏っているモンスターで、通常のモンスターより狂暴で全てが強化されている。シャドーモンスターなら、彼の実力を見るのには丁度良い。それに、周りの被害のためにも迅速に解決しなくてはな。


「分かりました。その依頼、セティ・ギャリバーンの名に懸け、必ず成功させます」


 胸に拳を当て、いつもは見たことが無い真剣な顔と声で彼は答えた。


「良かったわ~。セティちゃんに断られたらどうしようって思ってたのよ!」

「当然じゃないですか。人々を守らなくて何が冒険者ですか! あ、でもライルさんはここに残った方が良いですよね」

「いや、着いていくぞ。安心しろ、力はないが戦えないことはない。倒すことはできないが、自分の身くらいは守れる」

「ほ、本当に大丈夫ですか? ライブ魔法で、俺の様子をここで見ていた方が良いんじゃないですか?」

「そんな魔法ではなく、自分の目で君の戦っている姿を見せてほしいんだ。君の邪魔にならないようにする。だから……私を連れて行ってくれないだろうか」


 じっと彼の瞳を見据える。私の表情は見えないだろうが、覚悟は伝わったようだ。しばらく沈黙したあと、彼はうなずいた。


「分かりました。できるだけ、あなたには攻撃が当たらないように防ぎますが、危なかったらすぐ逃げてくださいね!」

「心遣いどうも。話はここまでにして平原に向かうぞ」

「はい!」


 私を抱えて走っていこうとする彼を何とか説得してギルドにある転移装置を使う。ベフィロス平原に設置してある転移装置の座標を設定する。

 不謹慎かもしれないが、今までにないほど気分が高揚している。どうやら彼もそのようだ。レオーラが真剣な顔で見送ってくれるようだ。2人で転移装置の上に乗る。さて、英雄と呼ばれる彼がどれほどの実力か、見せてもらおうじゃないか。

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