第3話 朝にしては早すぎる
昨日の予想通り、セティは早朝に工房兼家にやってきた。
「ライルさん、おはようございます!」
「……外はまだ暗いのにおはようだと?」
「す、すみません! 帰ってすぐ寝たら、早く目が覚めてしまったので徒歩でここまで来たんですけど」
「いや、別に責めているわけではないから、頭を上げてくれ」
というか今、徒歩でここまで来たって言ってなかったか?ぺリティカ王国の近くにあるが、山奥だから徒歩だと大変なはずだ。それにしては着くの早くないか?
「え、そうなんですか? いつも行きと帰りは走ってるので分かりませんでした」
「はし、は? もしかして昨日もか?」
「はい! 嬉しすぎて、気づいたら走っていました!」
転移だと思っていたら、走っていたって? 強化の加工術を使ったとしても、一般人では速すぎて行うのが難しいはずだ。これが、英雄と呼ばれる彼の力なのか?
いや、実際に戦う姿を見なければ、彼の実力は分からない。だが、英雄と呼ばれるだけの身体能力があるのは確かなようだ。
「というか君、今日の装備、皮の鎧と青銅の剣って私を嘗めているのか?」
「ち、違います! この装備は俺が駆け出しの頃、初めて買ったライルさんの加工術が施されたモノで、長い間使っている大切な相棒なんです!他の装備を買っても、俺にとっての一番はこれなんです!」
よく見ると、かなり使い古されてボロボロになっているが、確かに私が駆け出しの頃に加工術を施した大量生産品の武具であった。彼にとっての一番という言葉は嘘ではないようだ。まだ、外に出るには早く、朝食も食べていない。仕方ないか。
「中に入れ。君も朝食はまだだろう」
「え、ライルさんの手料理食べていいんですか!」
「残念だが、私の手料理ではなく、加工術で動いているドールが作った料理だ。
そんな残念そうな顔をするな。代わりにもっと良いモノをやろう」
「良いモノ?」
「そうだな。まずは脱いでくれないか」
「?!」
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