第5話「星の見える窓辺にて」
夜はいい。
特に、風呂に入った後の夜風に当たるのが。夏という時分には贅沢で、火照ったからだを適度に冷やす。
だが、長いは無用だ。
なにぶん、下着のまま過ごすのは腹が冷えるし、それでいては気分もだだ下がる。
なのでほんの5分。
少しばかりと決めておいて、冷たい飲み物片手に空を見る。
ここは、虫の鳴き声が聞こえる山の中だ。風が吹けば木々が揺れ、虫が鳴けば耳まで届く。加えて、ここにあるのは自分の家だけで、満点に広がる空を独り占めできるのだから文句はない。
⋯⋯いや、あった。電気をつけると虫が寄る。こればかりは文句のつけようがないのだが、人間が自然様に土地を借りる代価だとすれば、往々にして諦めもつく。
さて、夜空を眺めると言っていたか。
実際、数分もすれば飽きるのが現実だが、ここはあえて浪漫風に行こう。
と、言っても星座などオリオン座の三連星程度しかわからないが。
窓からか体を乗り出して、足をぶらつかせる。空にあるのは星空で、どこまでも広がる宇宙をまざまざと見せつけられる。
このような幸せがあるものか。
いや、現実にあるのだが。
まぁ、兎にも角にも。
5分持ったかどうかという所で寒気が襲う。気が付けば冷え切ったからだを両手に抱いて。それからのグラスを持って立ち上がる。
早く布団へ入りたい気分だ。
そう思いながら戸を締めると、鳴いていた虫の声が少し小さくなる。
グラスをキッチンへ置き、歯磨きを済ませ、床へついた体は、急速に深い眠りへと落ちるのだった。
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