第2話 思い出

 学校の教室で、二人の少年が話している。

「なんだよお前、まだ元カノのこと引きずってるのか?いい加減辞めろって」

  一人の少年が言う。

「るっせぇな。まだ別れて一週間ぐらいしか経ってないんだぞ?気持ちの整理がつかないって 」

 もう一人の少年が反論する。

「あのな大地、別れたんなら潔く次の恋すれば良いんだよ」

「弘樹、俺だって引きずっちゃいけないことぐらい分かってるんだよ」

「じゃあなんで……」

「んなもん決まってんだろ。俺はあいつのことが好きなんだよ。今でもな」

「んなことだろうとは思ったよ。さっ、休憩は終わり。練習に戻ろう」

 そう言って、弘樹は立ち上がる。

「だな。悪かったな、話し込んじまって」

 大地も弘樹に続き立ち上がる。

「良いんだよ。いつまでもくよくよされてたら全体の士気に関わるからな。言っとくけどな、部活に私情は持ち込むなよ」

「分かってるよ。それは大丈夫。安心してくれ」

 二人は教室を出て練習に向かった。

       ◆

       ◆

 帰り道、大地は携帯の画面をみつめていた。そこには、元カノである里奈のトーク画面が表示されていた。別れ話を切り出された日の次の日を最後に彼女の返信は途絶えた。

メッセージを遡ると、『大好き』とか『大切な』とか恋人らしい言葉がずらりと並んでいる。別れてから数日間はこれを見て現実逃避をしていた。

「そういえば、あいつから告白された時もこんなだったよな」

 大地はポツリとつぶやく。数か月前、大地は里奈から告白された。一度、大地から告白したのだが、振られてしまった。だが、仲直りのためにカラオケに行った数日後に大地は里奈から告白されたのだ。

「はぁ~あ。なんでこんなことになったんだよ……」

 トーク画面を最新の場所に戻す。そこには、

『あのさ、今度二人で落ち着いて話さない?話すこととかまだあるでしょ?』

 と、大地は送信していた。だが、里奈の返信には

『私にはないから』

 とだけだった。

 それ以来返信はなく、大地はただ思い出を巡っているだけだった。

 その行為をしていると、周りから、「未練がましいな」とか言われるようになったが、気にせず大地はそれを続けた。

 里奈の学校に行くことも考えたが、それはそれでやばそうなのでやめた。それに、部活の大会があるしで大地にはそんな時間はなかった。

 里奈とは部活関係で出会った。それでいろいろあって付き合うことになった。

「俺には話したい事あったんだよ。最後ぐらい、話ぐらい聞いてくれても良いじゃんか」

 また独り言を言う。そして、里奈のいた右側を見る。だがそこには誰もいない。

「……里奈」

 名前を呼ぶが誰も返事しない。

 そして、ため息をつき少し歩を早める。そうすれば、二人で一緒に歩を合わせて歩いていた思い出を忘れられる気がしたから。

 

 

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