番外編『丁度いい大きさの石があってもどうにもならなかった、己の肉体を信じろ』
いやぁ、危なかったですね。
ゴブリン相手でも油断は禁物です。
【暗殺者】は優秀ですが、他のジョブと比べて真正面から戦う能力は低いみたいですからね。それにしても、スクワットするゴブリンの集団に寝起きドッキリされるのなんて、私ぐらいじゃないでしょうか。
ところで、生きて帰れたのは良いものの、大分傷を負ってしまったので、治療しないとですね。
ギルド併設の治療院か教会で治療してもらっても良いのですが、それだと無駄な出費になってしまいます。なので自分でジョブを取って治療してしまいましょう。
なので治療系のジョブ。
【治癒術師】になりました。他にも、
【調薬師】や【神官】なんかがありましたが
前者は元手が必要、後者は就職条件が少し面倒なので候補には入りませんでした。
【調薬師】は【調魔薬師】なんかに派生するらしいので興味があったのですが、魔薬を作るのはまたの機会にしておきましょう。
そして傷の治療です。
ジョブのレベルが上がれば、《欠損接合》《欠損回復》なんかが使えるようになるらしいですが、そこまで重大な怪我でもなく、まだレベル1なので、《治癒》を使います。
すると、みるみる内に身体中の傷たちが塞がって、うっすら痕が見える程度になりました。すごいですね異世界。
さて、傷も治ったところで行きましょうか。
◇
現在、ゴブ森に来ています。
しかし、前回の教訓から、今回はパーティーを組みました。【剣士】【弓術士】そして【治癒術師】の自分で、3人パーティーです。
今の所順調で、治せないような大きな怪我もなく進んでいます。
しかしいかんせん効率が悪い、一人でやった方が捗るんじゃないでしょうか。
理由は分かっています、練度の低さです。
自分もですが、このパーティーは全員駆け出し。それ故に【剣士】や【弓術士】が只のゴブリン相手にビビってしまって、時間が掛かるのです。
ほら、今だって、剣士がゴブリンと鍔迫り合いしています。
じれったいですね、ゴブリンなんかこうですよこう。競り合って動けないゴブリンの頭に石を叩き込みます。
ほら、これで終わりです。
いや、なんですかその顔。やめて下さいよ。
◇
緊急事態、大変です。
ゴブリンが現れました、大量に。
しかも
どうしましょうか、正直一人で逃げるなら苦労はしますが可能でしょう。
無駄に多い魔力を使って無理やり《治癒》でゴリ押せます。
しかしそれは、二人を置いていくなら、という前提が必要です。でも、それでは後々面倒な事になりそうですし、何よりそんな理屈は抜きに、見殺しは気分が悪い。
と言うわけで、自分が囮になって二人を逃しましょう。それなら何とか逃げられるでしょう。
え?自分は大丈夫なのかって?
大丈夫ですよ、さっき見てたでしょ?《治癒》もありますし。ほら、さっき新しい技を思い付いたんですよ、腕の関節を外してパンチ!
いや、そんな顔しないで下さいよ、気持ち悪い見た目なのは認めますけどね。
ほら、早く行ってください。
◇
二人が無事に逃走してから数分ほど経ちました。しかしまぁ、何と言うか....。
思っていたより余裕ですね。
雑魚は粗方倒し終わって、残るは戦士や将軍なんかのでかい奴らだけ。
戦士の拳を石で受け止め、将軍が背後から放った斬撃を躱す。
石を投げて1匹沈め、次の得物を拾う。
致命傷は避けて、少しの傷も直ぐに【治癒】する。隙を見てズームパンチでまた1匹。
そうしている内に最後の一匹が倒れ、素材だけを残して、痕跡もなく消え去りました。
戦闘中は拾えなかった素材達がそこら中に転がっています。目玉なんかもあるのでちょっとグロい感じです。
と言っても中々疲れましたね....お?
先に逃げた二人が戻ってきました、強そうなおじさんを連れて。
しかし残念、戦闘はもう終わっています。
二人とおじさんは驚いているようです。
だから大丈夫だって言ったじゃないですか。
ほら、ズームパンt.......。
だからそんな顔しないで下さいよ!
止めれば良いんでしょ!止めれば!!!!
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