第40話加藤奈月
私の名前は
次記憶が戻った時はなぜか赤ちゃんになっていた。
え、ライトノベルで大人気な転生ってやつか。ライトノベルの編集やっていたんだけど、私。
新しい名前はアメジット。どうやら農村に生まれたらしい。5歳の頃には働き始めてた。
でもそれで良いって思った。何も考えずに働く、これはこれで良い。勉強はしたいなって思ったけど。
ちなみに前の記憶がある以外は特になにもない普通の輪廻転生だった。
はずだった。
どうやら私は幸運持ちらしい。喧嘩をすれば上手いこと顎にヒットするし、川で釣りをすればなぜか大物がHITする。ま、これくらいは『アリ』かな。
幸運な暮らしだったけど、大体15のときにオークが襲ってきた。私はさらわれてオークの苗床になるみたい。まあ、15年ほど楽しめたからこれはこれでよいっしょ。幸運だったな。
幸運は続く。そこに狐亜人が現れて助けてくれた。
完全な一目惚れだった。
艶のある毛並に、自分の身長を超えるんじゃなかろうかというほどの巨大尻尾。とてもとても大きい耳。何より私を積極的には助けるつもりはないようなその性格。その全てが美しかった。
この人の役に立ちたい。そう強く思った。名前はレイというらしい。お気楽旅をしているという。
連れて行ってと強く激しく懇願した。幸運なことに連れて行ってくれることになった。
強くならねば。強くならねば!
狐亜人レイ様は、全てを1から手取り足取り教えてくれた。私も真剣に取り組んだ。早く吸収しないと!
とあるダンジョン都市で私のカードを作ってくれることになった。どんなのだろう。
そこにはこう書いてあった。
アメジット 神に祝福されし娘
スキル
超幸運 オールスキル 超成長 神の加護
ライトノベル編集していた私にはわかる、これは超幸運以外は超幸運がもたらしたものだ。私は幸運だ。
それから私達はブキョーという街で勉強し始めた。役に立つために勉学に励まないと。
幸いスキルのおかげで吸収は楽なものだった。魔法も全部余裕で使える。レイ様の主力攻撃オーブも改良した。これでレイ様の役に立てる!
しかしレイ様は私を自立させたい旨を言ってきた。なんで、自立なんてしなくていい、私はレイ様の役に立てればそれでいいのに!!
「アメジットは大学卒業したら何がしたい? 」
「レイ様のお側についていきたいです! 」
「うーん、それでも良いけどもっと良い何かがある気がするんだよな」
「私いちゃ駄目ですか? 」
「そんなことはないよ、旅は道連れ世は情けだし。そうじゃなくて旅をわざわざしなくてもってところかな」
「逆に旅ならどんな事も起こりえるから、私の能力が存分に発揮できると思いますよ」
「そういう部分はあるねえ。しかし私の従士で良いのかいよ」
「従士以外ありえないです、仮にパートナーだったら恐れ多くて申し訳ないです!! 」
「いやー、それも良いんだけどさあ、アメジットがやればそれで全部済んじゃうから、私の存在意義がないんだよねえ」
「!! それは……確かに……」
「まあ、何をやるにせよアメジットは自立できるね! 安心安心」
「……レイ様のお側にいたいです。」
頭を銃で撃ち抜かれたような衝撃だった。私はやりすぎたのだ。
チート転生でもやりすぎればバランスが崩壊し『あいつ1人で良いんじゃないかな、あとはハーレムでも作っとけ』という状態になる。
今の私が正にそうだった。レイ様は強いけど普通の強さでしか無い。
私はチートを使ってバリバリにスキルを上げた状態だ。レイ様とのバランスが全く取れていない。
これじゃ駄目だ。もう弱くはなれない、でもレイ様は強烈な強さを望んではいない。
旅のお話を聞けばよく遊んでいることが伺える。男で失敗したことも話してくれた。
『後天的狐亜人』という神のご加護があるにせよ、レイ様はごく普通の人なのだ。
神様、どうかレイ様とのバランスを上手く取ってください……!
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