第21話花火上がったね、始まる


 スタンピードから逃げ出してスンケイまで戻ることとなった私達。スンケイまでの道はだいたい無言でした。いつもの能天気さを出せよ私。


「着いたー。ワング君はこれからどうするの?二人で討伐隊に参加するつもりで私ここまで来ちゃったけど」


「もちろん参加するさ、『スタンピード』だからな。だが今は魔導銃の整備と弾の補給をしないといけねえな。整備補給が間に合わねえんだったら前衛職としてでも出るさ」


「ほーん、私は鎧を受け取ってくるよ。そういえばその魔導銃ってサガット産だよね、魔導研究はサガットが一番だもんね」


「ああ、サガット産だ。この国に来たのはこっちにて改良しようと思ってな、弾の安定とか再装填とか、物理的な技術の方でな」


「なるほどー、だから語学学校に通ってたんだね。いまサガット語で会話してるもんね」


「久しぶりだから懐かしさを感じるぜ、それじゃまた後でな。」


 そんなわけでここで解散。私はハーフエルフの板金屋に行ってこよう。


「こんにちはー、鎧どんな感じですか?スタンピードの討伐隊に参加したいので、それまでに合わせてくれると嬉しいのですけれども」


「やあ、よく来たね。ほぼ出来上がってるよ。布に対衝撃と消音効果をもたせた液体を染み込ませて定着させてある。厚布、金属板、厚布、の順番で挟んであるから早々音は出ないはずだし、積層効果で防御効果も高いよ。」


「やった。腕甲と、すね当はどうなってますか」


「鎧と同じような構造の、ピッタリとサイジングした物が出来上がってるよ。腕甲はかなりしっかりと作ったから簡単な盾代わりとして使えるはずだ。申し訳ないけど、どれもメンテナンスはウチでしか出来ないと思う。作れてないのは頭だね。やっぱりその大きくて可愛い耳を守るのが難しいよ。鉢金やサークレットなんかで額を守ることは出来ると思うけどね。」


「頭はスタンピード終わってからまた考えましょう。メンテはこの国にいる間はおまかせしますよ。じゃあこれ全部の最後の代金の手形です」


「ありがとう、死なないでね。」


 本当に100金貨吹っ飛んだ。でも魔法の品一式よりは安いし、音がしなくて防御効果も高いのを欲したからしょうがないね。スタンピード終わったら狩猟するんだ。カリブーン革で足の甲と手首より先を作ってもらうぞー。後お洋服も買って美味しい料理食べて……


 よし、頑張ろう。


 数日かけて行軍準備した後、ワング君と合流して冒険者ギルドでパーティとして登録、参加申請を出したよ。


 ここは冒険者の集合場所。今回はみんなで行軍するんだって。この先の衛星都市が襲われてるんだから当たり前だね。


「すごい人数だね。冒険者の平均Lvは22~3、らしいよ」


「腐ってもオルクだからな……」


「人数は冒険者100名程度、兵士が180名程度の280人位だって。大規模だね」


「腐ってもオルクだからな……」


「ワング君それしか言ってない。」


 こんな話をしているとみんなが動き出しました。兵士について行ってるだけな感じだね。指揮官とかいないのかな。


 整備された道を走る馬車で2日位のところを歩いていくわけで、しかも大群の行軍なわけで……。6日かかってしまいました。携帯食料一週間分、つまり10日分詰め込んであるけど最初から20日食べる予定で消費していってよかった。ワング君が食料切らしちゃったからね。


「すまねえな、俺はマジックポーチとか持っていねえからそんなに食料持てないんだ」


「私のポーチだってそんなに容量大きいものじゃないよ。とにかく入る場所に入るだけ詰め込んで、ぶら下げられるところ全てに袋ぶら下げたんだよ。」


 いつもはごちゃごちゃ入ってるのをかなり整理して野営セットと携帯パンそして水筒だけを詰めた。酒保さん(軍隊についていく商売人)から野菜なんかの食料購入したりしたけどね。値段高かったなあ、ぼったくってた。


 ちなみに参加している冒険者はある程度おカネ持っているようで、2輪馬車4輪馬車で荷物運んでいる人が結構多かったよ。下道コースでここに来るときに考えたポニーとリアカー買おうかな。


 DON!!


「あ、花火上がったね、始まる」


「ああ、俺たちは兵士の左翼に位置して、兵士の支援を担当することになる。兵士の種類が重装剣盾兵と衛生兵だから、遠距離支援と横の防御が主な任務になるな」


「ワング君モンスター以外の戦闘もわかるんだ」


「戦闘特化だからな。というか話聞いてろよ、そう言ってただろ。」


「てへ☆」



 酒保さんなどの後方支援部隊はその場を離れ、今まで行軍陣形だった兵士が横隊を組み陣形を整えていく。私達は陣形はないけど集団となって脇を固めて一緒に歩いていく。

 まだ衛星都市は見えないけれど煙が上がってるし鳥系使い魔を持っている魔法使いなんかが上空を飛ばして大体の距離を推測している。500m先なんて言葉を拾った。


 推定距離400m、私の目で都市とを捉えた。距離300、撃てる魔法使いはもう範囲魔法を撃ってる。300mを飛ばすかー凄いね。先程鳥を飛ばしていた魔法使いさんがなにか叫んでる


「恐らく上級種がいるわ!陣形……とは呼べないけど群れを組んでこっちに向かってる!」


 マジか。


 推定距離200m、弓使いが矢を飛ばし始めた。一矢一矢が魔法で誘導されてオルクの頭に命中し、その数を削っていく。


 推定距離100m、まだ兵士は突撃しない。ワング君が魔導銃を撃ち始めた。まだ必中ではない距離らしい。弓に劣るのであれば確かに改良が必要、なのかも。カヤクに早く行きたいね。


 距離100mから5歩あるいたところでオルクが突撃を仕掛けてきた!それに呼応するかのように太鼓が打ち鳴らされて兵士が突撃していく!結構削ったけどおおよそ400体のオルクがいるってさ!あの魔法使いさん斥候係なのかなー珍しい。


 ぶつかる直前まで、魔法が、矢が、飛び交っていく!前衛の兵士は走り出してる!


『両軍』がぶつかる!


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