第20話スタンピード直前



 人が倒れてる。私は勢いよく駆け出して


「大丈夫ですか!?」


 安否を確認した。

 残念ながら息絶えていた。何事!?


「レイ、俺たちは帰ったほうが良いかもしれない。この武装だと傭兵の一員だ。それが死んでるってことは15名の中の主力チームが何らかの出来事によって崩壊したってことだ」


「本当?ここはワング君に従うよ。この人はどうすればいい?」


「捨て置くしか無いな。傭兵ならなにか識別票を持っているかもしれない。それを拾うくらいだろう。武具を奪い取っても良いが……」


「それは普通にダンジョン潜ったときだね。今回は召集とはいえ依頼だし識別票を探して、帰るよ。外にいる担当者に魔石を渡せば良いんだよね。」


 ということで衣服をガサゴソしてタグを見つけ、回収。右手に沿いながら地図を使いながら最初のフロアに帰って、るんです、今。


「ヤバイよこれ、凄い音が最初のフロアから聞こえてくる。スタンピード始まってるんじゃない?……かなと思うんだけど」


「レイ、悪いが偵察頼めるか?俺は鎧が重いし音が大きいから偵察に向かない」


「任せて。まだイッポンツノイノシシに破られた防具のままだけど、修復してあるし音はしないよ。」


 そう言って颯爽と駆け出していく私。気配消すのは出来るさ。伊達に狩猟をやってはいない。



 うまいこと見つからずに全容が見渡せる位置まで忍び込めた。オルクがどんどん集結している!最初のフロアに集結されたら閉じ込められちゃう!


 急いで帰って


「大変!もう集結が始まってる!」


「突破できそうか?」


「まだ間に合うと思う。集結している最中だし」


「強行突破だな、イヌ系亜人の力の見せ所だ!」


 ちなみにキツネはどっかの世界ではイヌ科イヌ亜科分類です。ただし私はお狐族属という独立した属ですので……


 先頭を狼のウルグ君が走り、後ろを狐さんの私がついていきます。だんだんスピードを上げていき、最初のフロアに入った瞬間にワングくんに合わせて猛ダッシュ!


「ウガーー!」


「邪魔だどけー!」



 大量のオルクが襲いかかってきますが振り切ります。真正面に相対しちゃって振り切れないときはウルグ君が更にギア上げてから突っ込んでなぎ倒してた。伊達に狼やってねえな!かっこいい!


「はぁはぁ、入り口通路まで逃げおおせたね。この後は?」


「入り口の担当者に報告して逃げるしかねえ。」


 つつがなく撤退して担当者へ報告。と思ったらいない。


「お狐の鼻には血なまぐさい匂いが香ってきているので、先に逃げた人達がいるんじゃないでしょうか」


「そうですか、じゃあ我々も逃げましょう」


 なぜか敬語になる程度の恐怖にかられながら、集落までこれまた走って戻りました。そこには集落を放棄するのか逃げ出す人々の姿が。


「馬車、無さそうだね。ウルグ君食料ある?すぐ走れる?」


「大休止しないとさすがに無理だ。食料は3日分だな」


「そっか、じゃあここからは小休止を繰り返しながら歩こう。私野営セットこのマジックポーチに詰めてあるから、それで夜はしのげるよ。とにかく首都のスンケイか衛星都市に戻ってスタンピードから逃げよう」


「マジックポーチ持ちとかお前どれだけ金持ちなんだよ。しかし情けねえな、ダンジョンから逃げるのは良いが、集落を捨てて逃げ帰るのは狼の主義じゃねえ」


「生き残らないとね。そして討伐隊に参加しよう。」


 逃げ出す人をかき分けながら二人で街道沿いを歩いて、近くの衛星都市まで逃げました。


「召集の方アルね、生き残っていて何よりアル。報酬は出るアルからゆっくり休むと良いアル」


「ありがとうございます、討伐隊に参加したいのですが、冒険者ギルドではなにか動きがありますか?」


「スンケイで募っているアルね」


「わかりました。ニカクから一番近いこの都市はどうなるんですか?」


「ここは門が閉鎖されて籠城するアルね。ニカク対策都市でもあるから準備はしてあるアルね。戦力も物資も多いアル」


「わかりました。私達はスンケイに一度戻ります、ええと……頑張ってください。」



「じゃあ、行こうか」


「お前は戦闘以外だとしっかりしてるな……」


「ウルグ君が戦闘とダンジョン探索しっかりしてるんだよ、私ハイハイ言うだけだったもん」


「そうか。早くまた馬鹿の言い合いをしたいな」


「そうだね。」

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