第10話 自分への……

 自分への……


 さてと、王都にいます。


 ここまででなんやこらして大体10ヶ月、遺跡めぐりすれば一年経って17歳になるかな?


 ということで、遺跡の前に私服探しです。

 いや、身長は伸びてない感じなんですけどいま着ている私服の胸周りが苦しくなっちゃって。

 羨ましい?戦士をする冒険者にとっては重いだけなんだよねえこれ。


 ま、王都ですよ、王都。みすぼらしい格好をいつまでも続けるのは女をぶっコロコロしているようなもんですよ。着飾るのは女の使命!


 ギルドのハイエルフのおねーさんが私の胸を睨みつけながらお手頃なお店を紹介してくれました。とりあえずお化粧屋さんと仕立て屋さん。服は新品を買いたいけど金貨が吹っ飛ぶ王都の物価なので、買えないようなら素直に中古品探します。お化粧は新品以外ちょっとありえないですね。

 魔導機械紡績に石油精錬始めてるから生地が安くなってきているみたいですけれどもね。石油繊維なるものが登場し、それで作った生地が作られ始めてるそうです、ちょっと興味があるなー。


 まずはお化粧屋さんでーす。会話は数時間のおしゃべりだったので省きますけど、下地からリップまで基本のメイクセットと鏡、それと髪の毛も全身も洗える石鹸を購入。爪を磨いてくれたり眉を整えてくれたり(釣られて眉整えるハサミ買っちゃった☆)上級生活魔法のリフレッシュで髪の毛ツヤッツヤにしてくれたりと至れり尽くせりでした。メイクポーチついて50銀貨なりーまた来よう。


 えー、本命の前にかなりお金が吹っ飛びましたが仕立て屋さんに来ました。


「こんにちはー、服を一着見繕ってほしくてきたのですが。」


「あーらあなたも冒険者さんザマスか、こんなに小さいのに。」


「あ、すごい言葉使いの人きたな。ええ、16歳から17歳にそろそろなるんですけれども、サイズが合わなくなってきてしまって。また、王都でも恥ずかしくないようなお洋服を手にいれておきたいので。」


「あーーーーらそれは素晴らしいザマスわ。冒険者はきったねえ洋服しか身に着けないというのに。まあ持ち物を軽くしたいのはわかるザマスが。それで、先にご予算を聞いてから仕立てに入りたいザマス。」


「今出せるのは70銀貨くらいなんですけど、逆にどれくらいかければ王都の一般市民レベルの洋服が作れますか。」


「70銀貨でも作れなくはないザマスが、1金貨位あると一般市民の『どこにでも行ける』お洋服がご用意できザマスね。中流階級なら4金貨、上流階級なら10金貨以上というところザマス。お貴族様はこういうところじゃ作らないザマスね。一般市民も頑張って2金貨あるとお高めな生地で作れるザマス。」


「むう、2金貨で良いやつかぁ。じゃあ2金貨でいいやつを作ってもらいます。いいやつだけが手元にあれば重量と荷物の軽減になりますよね。」


「そうザマスね。それでは採寸だけ先にしておくザマス。2金貨を持ってきてくれることを楽しみに待っているザマスよ。」


 採寸した後、服の形状の相談。といってもワンピース一択ですが。プリーツも少々つけてもらいました。あと胸の折返し。強調されるけどこれで寸胴に見えにくくなるし着苦しくなくなります。楽しみだなあ。


 お金が必要になったので労働労働。スライム液の収集がやはり楽ですね。でかいスライムもわざと作ってしまって、事前にお知らせしておいた魔導旅団さんに退治してもらうことで分前をもらえることになりました。美味しい……


 2金貨は2ヶ月かかるくらいで集まりました。これで17歳になりましたね。1年経っちゃった。

 なんか熱い日も寒い日もありましたが全然気にならなかったです、生きるのに必死だった。季節って食べ物?


 2金貨かけて作った衣服は表地がレーヨン、裏地がキュプラという魔導文明渾身の素材で作りました。表地に絹の選択肢も用意してくれたんですけど、冒険者的な持ち運びが出来ないよアレは。レーヨンなら防水加工のされた布で包めばなんとかなるみたい。


 折返しの代わりに腰にベルトを巻くことにしました。これでも十分にシルエットを出した感じです。なんもないと胸から下が寸胴になって太って見えるんだよね……。

 レーヨンは水洗いがまずもって出来ないのでクリーニング屋さんで上級生活魔法のリフレッシュを定期的にかけてもらわないといけないですね、通常のお手入れはクリーンで十分ですが。


 なんか、自分への誕生日プレゼントって感じで結果的にいい感じになりましたね、ウフフフ。

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