第2話 スタンピード


「ぬーーーーーーーーーん…………………」


 スタンピードの朝だって、朝の始まりは瞑想から行います。だって少しでも魔法関係強くなりたいじゃない。心落ち着かせないとパニクっちゃうじゃない。




 この世の生命全てには成長の元、通称経験値が入っていて生命を殺めればすればそれだけステータスが強くなります。

 農家のみなさんが集団で狩りにいってゴブリンを殺してレベルアップをして農作業を楽にするとか、そういうのがよく行われていますね。

 稲刈りするだけでも経験値は入るんですけどね、強い生命体のほうが圧倒的に豊富な経験値を持ってます。


 それ以外にも瞑想や鍛錬をするとスキル値が上がります。


 だから朝の瞑想は重要。これをすることによって魔法関連が伸びるかもしれないじゃない!魔力操作がつくかもしれないじゃない!12年間やってついてないんだけどさ。


 ん、なんか下の階がうるさいぞ、瞑想の邪魔だなあ。そろそろかなあ……


 なんて思っていると男の人が駆け上がってきまして


「おいみんな起きろ!冒険者ギルドの緊急招集だ!詳細は下で!!」


 な、なんだってー!


 急いで仕度して下に降りると、そこはグワッとした緊張感に包まれていました。


「繰り返すがスタンピード魔物大行進が正式に起こった。斥候の情報によると規模は小規模とのことだ。しかし上位種がいることが確認されている。」


「小規模って言ったって50はいるんだろ!?冒険者と街の守衛で対処できるのかよ!?」


 痩男の言うとおりだ、無駄死にはごめんだー!


「この村は比較的大きい上に壁もある。季節は春で食料もある。助けを呼んで籠城戦を行うぞ。今日の夜にはここに襲来するとの話だ、急げ!」


 まじかー、籠城戦かー。


「お、お、お、俺は逃げるぜえええええええ!!」


 あ、逃げた。それにつられて何名か一緒に逃げたよ!やったねレイちゃん!いや全然良くないよ!


「冒険者カードには逃亡がしっかりと刻まれてギルドから追放されるが、命のほうが大事だと思うやつもいる。まあやつらは帰農するしかないが…… ほかに辞めたいやつは?…………いないな、じゃあ準備に取り掛かるぞ!」


 おう!!


 あ、ちなみにペラペラ喋っていた人ギルドマスターさんみたいです。雙眼。忍殺しそう。Lv35くらいだそうです。




 さ、籠城戦の準備です。門を閉じて石岩をありったけ持ち込んでそして矢を作って、木製の壁だから防火処理を「魔法使い」さんがおこなって……ちくしょうちくしょう、私だって魔法使いなんだ、あんなこと出来ないけど。



 さあ準備し足りないけど夜になりモンスターがやってきました。足が震える。

 私は一応オーブで遠距離攻撃ができるということで木製の壁の上で敵を迎え撃つことに。足がガクガクブルッチョだお。


「敵意感知できるものはいるか?おお、お前できるか、やってくれ大体の数がわかる。……そうか、敵の数は約50!籠城戦なら勝てるぞ!もう冒険者ギルドの通信網で救助依頼は出してある!」


 うおー!


 なんか盛り上がってるけど私は見逃しませんでした、敵意感知した人の顔が真っ青なことに。倍はいるんじゃないか?え、私死ぬじゃん。ざんねんわたしのぼうけんはここでおわってしまった!



 アホなこと考えてないで敵の遠距離部隊を始末しましょう。いけっ!


 あれ、斜め上の方角に飛んでいきましたね?ミス?いえいえ違います


「光れっ!」


 ぴかー、結構な明るさの光が、オーブから発せられて敵陣を明るく照らし出します。夜間戦闘なので明るくしないとこっちが一方的に不利なんですよ、今回の主力であるゴブリンは夜目が効くので。


「ナイスだちびっこ、距離200!!弓矢隊撃てー!」といっても弓矢撃てる人7名のみですが


 弓矢って移動物体に当てるのすごく難しいらしいのですが、そこは魔法で軌道修正することで解決。すぽすぽ脳天に刺さって倒れていきますね。ただ軌道修正する分連射が出来ない。これだけで削るのは難しそうだね。


 距離50mくらいからゴブリンの突撃が始まった。あっちはスタンピードでバーサークしてるから、壁に張り付いたら一晩中殴り続けるだろうなあ。突っ込んできた数は多分30前後。奥にはホブゴブリンらしき部隊が待ち構えてるなーバーサークしてる割には意外と規律がいい。


「炎よ弾となり敵を焼き払え!」


「俺様の石投げを喰らえー!」


「スットコドッコイスットコドッコイ!!」


 みんなできる範囲で近づかせないように頑張ってる。私もライトだけじゃなくて攻撃しなきゃ!でも普通にやってもぶっころころできないから……そうだ、いけっ!


 オーブは上空に舞い上がると、ゴブリンの頭を狙って急降下!これぞ鈍器風味の物体で重力落下と加速しながら頭殴られたら死ぬよね攻撃!


 くっそー動いてる目標には真上からだと当たらない!斜め45度から当てよう。


 これは結構効いてる!私でもゴブリンを始末できてるわ!私素敵!


 などとうっとりしているうちに10体くらいは門に張り付いて殴り始めました。


「せーの、そいやっ!」

 岩を落とされてグチャッとした音が。キコエナイキコエナイ。


 岩落とししたあたりで夜間の攻勢は鳴りを潜め、お互いににらみ合う格好で朝を迎えました。


 うーん敵軍後ろに見えるのはモンスターの群れだね。ゴブリン第2陣ですか?


 この第2陣のゴブリンは使い捨てらしく、勢いよく突撃して殲滅されました。うーん矢とかの在庫が減っちゃうなあ。


「ジリ貧だが隣町で今頃救援隊が編成されてるはずだ!」


 ギルマスの鼓舞で士気はさほど落ち込んでないです。私もどんどんゴブの首を折ろうね♪


 日中はこちらに優位性があって、弓矢隊の狙撃やギルマスなんかのLv高い人の石投げでどんどん数を減らせます。相手は武器が貧弱なのでこちらまで届かないみたいです。ちなみにオーブも届かないです。32対120くらいでもなんとかなってますね。




 なんとかなるなんて言ってごめんなさい、総攻撃が来ました。

 私は鼻水垂れ流しながらオーブで攻撃してました。だって死ぬよこれ。

 門じゃないところが崩れるって言うのでそっちに配属されて。でも13人くらいしかいなくて。ぶえええええ。


 そしてついに壁が崩れました。這い出てきたのはおそらくゴブリン・キング。しまったよギルマスは門の方だ!


「オマエラ、オレサマ、マルカジリ」


 させませんー、でも勝てませんーなみだじょばじょば。


「おい、ちっこいの、お前がギルマスを呼びにいけ。」


「わ、私ですか?」


「お前はこいつ相手に役に立たないだろ。」


「確かに。では!」


 ぎるますーたすけてー!!!


 こてっ



 こ


 け


 た


 しかも足をくじいた。終わった。


 ゴブリンキングはニヤーっと笑うと、他を捨て置いて私に狙いをつけて襲いかかってきたー!!


 あ、死ぬ


 昔のことが走馬灯のように流れてきて


 ……気がつくとオーブが振り下ろされたゴブリンの剣を止めていた。ふぇ?あ、自動迎撃が働いたんだ。そういえばそういう機能があった気がする。


 ゴブリンキングの後からたくさんのゴブリンが這い出てきて他の人は手一杯で助けは望めない、私は足を痛めて動けない


 ゴブリンキングはオーブを追い払おうとしてキンキンカンカンとオーブと争っている


 これは、チャンスだ!最大のッ、チャンスッ!!


 この数秒もらった!


 イケる!!




 左手をキングに向けて


「いけぇぇぇぇぇ!!」


 形状を槍のように変化した、電撃を纏うオーブ達がゴブリンキングを襲う!


 マジックポイントを使えば、少しの間だけ属性付与と形状変化は出来るんだ!!


 ゴブリンキングはオーブを受け流そうとする、馬鹿め、それは悪手だ!


「グガガガガガ!!」


 ゴブリンキングは痙攣したあとばたりと倒れた!


 雷撃は金属を通すし、近くを通過すれば静電気パッチンで痛い!


「そしてトドメに!!感電した筋肉は!!一定時間動けなくなるんだァァァアアアアアッッッ!!」


 私の叫びと共に槍の形状のオーブが四方八方からキングを突き刺してゆく。刺さる度に吹き出る血液。その血液が出なくなるのと私の記憶が飛ぶのは大体同時だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る