第12話


 色々あり2月1日である。

色々というのは、トイレから暖かいお湯が尻に当たるのをビックリしたり、洗濯機や電動の歯ブラシにビックリしたり・・・

この世界には魔法はないが電気というものがあり、その電気や電池を使う事で便利な生活ができるらしい。

今朝使った電動歯ブラシや髭剃りもそうであるらしい。仕組みはよくわからないが・・・。


 大阪タイヤーズとの契約が決まってから半月がたった。

その間は、指導など決まりで出来ないらしく、ひたすら野球のルールを本を見ながら覚えていた。

やっと、今日は2月1日なのである!


 そう、俺はこの野球をやってみたいと心から思いはじめている。

入団会見の翌日から、身長や体重を測り病院に行き身体検査を行いおいしいご飯を色々食べた。

ケーキを食べた時は衝撃が走った・・・こんな食べ物があったのかと!


身長190cm 体重85kg 健康状態:良好 健康診断でわかったことは健康ということ!これもわかるのは嬉しい。


 朝ご飯を食べ準備を整えて、バスに乗ると2軍の仲間達が「おはよう」と声をかけてくる。

「おはよう」と声をかけ空いてる席に座り外の景色を見ていた。


ここは入団テストを受けた海に近い球場、2軍キャンプが行われる球場だ。

バスから降り球場に入ろうとすると、間宮さんがいた。


「レイ選手おはよう!」「間宮さんおはよう」

と、お互い挨拶を交わすと、スーツを着た若い2名の男性が大きな荷物を抱えてこちらにやってきた。


「レイ選手はじめまして、風野スポーツの久保田といいます。こちらは小林です。

 よろしくお願いします。今回のこの荷物は、レイ選手に使って頂こうと持ってきました」


「はじめまして~ 久保田さん小林さんありがとうございます」

とお礼もそこそこに道具を受け取り、使わない荷物はスタッフが管理してくれるようで持っていった。

グローブやバット、スパイク等至れり尽くせりだ。うれしい事だね。

でも、これだけのことをしてくれるということは、球団は俺の事に期待しているということだ。

がんばらないと!って考えてるうちに、早速、谷本監督が挨拶をはじめる様だ。


皆で円陣に並び


「昨シーズン我が球団は最下位という不本意な結果となった。監督や一部のスタッフも大幅に変わり新生タイヤーズとして今シーズンはスタートする。新人も今までの選手も外国人も裏方も全員で優勝をつかむ為に1軍に早く行ける様、がんばっていきましょう」


と気合の入ったいい挨拶だった。


ランニングやストレッチの後、ブルペンにきてほしいと投手コーチの井山さんに呼ばれて行くことに。


「レイにはけん制とクイックを覚えてもらう」

ということで身振り手振りでクイックやセットモーションなんかを教えてもらう。

覚えたと伝えると、グランドの方に行くことになった。


グランドでは、打撃練習をやっていてサブのグラウンドでスタッフをランナーにおいてけん制の練習やクイック、セットから投げる練習をする。

昼迄、ずっとこの練習に費やし、昼からは守備練習やバントの練習を懸命にした。


キャンプの前半はこればかりで時間を費やしていく。全部を自然にできるようになった頃、「レイ1軍に合流だ」と言われ1軍キャンプ地の九州に行くことになった。








初めての飛行機だ・・・祈るように飛行機に搭乗する。飛び立つ時に凄い圧力と尻にヒュンという感触が残る。窓を見ていると見る見るうちに地上から離れている。

凄い・・・鉄がなんで空を飛べるんだろう・・・。なんて思っていると・・・あっと言う間に九州の空港に着き、バスで1軍の宿泊しているホテルについた。


ホテルのロビーに着くと矢上監督自ら迎えてくれて「一緒にがんばっていこう」と握手をしてくれる。

笑顔がとても優しい人だと思う。


ホテルの自室に荷物を置き、食堂に行くとスタッフが食事を持ってきてくれた。

なんかカロリー計算とか栄養を考えた食事というのをするらしい。だが・・・旨いのである。

米も好きだし味噌汁も大好きで、野菜がふんだんに定食に入っている。魚は・・旨いけど・・骨が苦手だな・・・。

さて、お腹も膨れたし風呂だ。やはり風呂はいい、この生活は最高だ。この生活を続ける為に必死でがんばろうと思い風呂を出て部屋で早めに寝ることにした。


 昨日は早くに寝たこともあり、今朝は朝早く目が覚めた。着替えて朝食をと思い降りていくと、間宮さんとばったり会う。

軽い朝の挨拶を交わし、パンとサラダ卵にハム、スープに野菜ジュースの朝ご飯を食べて、部屋に戻り荷物をして早めにロビーに下りていくと、

まだ、誰も来てなかった。なので座って待つことにしているとだんだん選手が集まりだした。







バスに乗り球場に、今日は昼から紅白戦があるらしく、俺は赤組の先発を任された。

ランニングやストレッチをしたあと、セットやクイックの確認、軽く投げながら肩を馴染ませていく。

凄く綺麗な球場だな。整備もされてお客さんもいる。カメラと言われるものをこっちに向けて見ている人もいる。

マウンドに綺麗なユニホームを着て俺は立っていた。



「レイ。気楽に打たせていけよ」と一塁のマイルが話しかけてきた。「OK」と答えて大きく息を吐き出し、『プレイボール』との審判の掛け声で

試合が始まった。


キャッチャーの桜野さんが横のスライダーを要求している。首を縦に振り、外のベースの隅を意識して低めにスライダーをボールからストライクになるように

狙って投げてみると決まった!審判が『ストライーークッ』と大きい声で大きいアクションで叫んでいる。


続いて、桜野さんは内にストレートを要求!内角ギリギリに狙ってセーノーでギュンと投げてみる!

ズバーン『ストライーーーク』気持ちいい!!


観客が「おおおお」とどよめいている。後ろを見ると179kmと表示されて相手のバッターはビックリした顔で自分のバットを見ていた。

この日は3回を投げて三振は6個。内野ゴロが3つでノーヒットに抑えてコーチや赤組の皆に褒められて嬉しかった。





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