設定的おまけ

 堂島 ナガセ(どうじま ながせ)

 27歳

 職業: 派遣退魔師

 所属:京都御所組合東京支部

 職務内容:一週間以内に定められた妖怪討伐ノルマを達成すること

 戦闘時には契約により魂魄の力を身にまとう。


 2011年1月3日、正月など知ったことではなく社会の歯車の一つとして営業に駆けずり回っていた男が家に帰ると、玄関先にブルドックが捨てられていた。

 不細工な面構えに、やる気のない瞳、力なく垂れた耳。

 妙に庇護欲を誘う、いかにもバカ犬といった風情に心引かれた男はブルドックを飼うことに決めた。今月のたばこ代を餌代に変えて。


 しかしそれがすべての始まりであった。

 近所で起こり始める神隠し、そのために行われる地域パトロール。夜な夜な現れる百鬼夜行の行列が起こす騒音被害。そして突然家に現れた美少女座敷わらし。

 仕事と自治体の板挟みでろくに休む暇さえ与えられず、睡眠時間を削られた上、セーフティーゾーンである家がもはや安らげる場所ではないことに男は慟哭した。

 唯一よかったことは座敷童のおかげか給料が少し良くなったことぐらいか(なお金をつかう暇などない)


 そんな日々が続く中、体力の限界を迎えた男はついに寒空の下で意識を失う。薄れゆく視界の中で浮かんだのは不細工ながらもかわいい愛犬の姿と美しい座敷童のおみ足であった。


『契約、するかい?』


 ブルドックの無駄に渋いボイスが頭に響き、男は弱弱しくうなずく。

 ブルドックは小さくおならをすると口からよだれを出して男の耳の中に注ぎ込んだ。


『わかった、お前に力を与えよう』


 その瞬間男のすべてが変わった。

 詳細に言うならば、よれたスーツから平安貴族のような装束に、右手に持っていた書類の入ったかばんは『虫でもわかる退魔師入門・規則編』という本に、そして上司の怒声をリアルタイムでつなぐ二世代ほど前の携帯は鈍く光を放つ金属バットへと変貌した。


 そう彼は新しく生まれ変わったのだ。

 強きを挫き、弱きを助ける。世界の人々を妖怪の魔の手から救うため立ち上がった正義の退魔師。

 専用の装束(154000円)に身をまとい、世をただすために奔走する。

 契約退魔師(時給2400円、年齢性別資格経歴問わず)堂島ナガセ!

 これはそんな退魔師の日常に埋もれそうな闘いの日々である(なんだこれ)。



 -退魔師

 遥か昔から日本を守護してきた妖怪退治のエキスパートたち。

 目から浄化の光線を放つ、「破ァッ‼‼」と叫んで敵をバラバラにする、拳をお札でコーティングし殴りかかる等、基本的に肉体派である。

 急激な近代化とともに表立って活躍することはなくなったが、それでも裏では日夜妖怪を狩り続けている。しかし妖怪ブームを引き起こし一世を風靡したアニメ『妖怪少女ハナ』の第三話にて、ハナの敵役である退魔師カズモトが『実際に手を下さないが権力に媚び、弱者をつぶす屑』タイプであったために退魔師の不人気ムードが広がった(カズモトの技の一つには他人の体に術を埋め込み攻撃対象の近くで爆発させる技がある)。

 現実では命がけの戦いに臨んでいるにもかかわらず、本部に届くのは子供からのたどたどしい罵声の手紙と大きなお友達からの警察にお世話になるレベルのお手紙の数々。本部がお通夜ムードになったのは言うまでもない。

 蛇足ではあるが、現在退魔師は将来就きたくないランキング職業ランキング、アニメですぐ死にそうな職業ランキング共にぶっちぎりの一位である。


 ―妖怪

 古来から語り継がれてきた伝承や噂などが実体化したもの。詳細にはわかっていないが一応知能生命体ではあるらしい。

 老いる、死ぬという概念がなくたとえ一時的に消滅したとしてもそのうち再生する。基本的にはいたずら好きであり争い好き、たがいにちょっかいを出し合っているうちにマジ切れ、都市一つを壊す争いに発展することもしばしば。そんな時に活躍するのが退魔師…であるのだが妖怪たちには喧嘩に参加したい強い人間くらいの認識である。


 ―魂魄 

 気合…というのは冗談。

 御所組合が崇拝している様々な神々の力をお借りして利用しているものである。神に匹敵する力を使えるというようなものではない。御所組合に認められたものには魂魄と書かれた木札が配布され、それを心臓のある位置に重ねることで力を借りることが可能になる。

 効果は運気上昇から身体強化など色々

 ちなみにこの木札、そこそこの貴重品であり仕様のたびに組合事務所に申請書類を提出しなければならない。

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座敷わらしでブルドックな派遣退魔師の日常 嘉代 椛 @aigis107

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