煙草はほんとうに害なのか~平凡社世界大百科事典14【タバコ】より

 平凡社世界大百科事典14【タバコ】の項に喫煙の人体におよぼす影響について科學的に記述してあるのでに引用する。百科事典とはレファレンスブックの王であり、一次資料の権威であり、びゆう性がたかいことはいうまでもない。


【タバコと人体】タバコの煙中にあって人体生理に関係があるとされている成分としては、ニコチンを主とするアルカロイド類をはじめ一酸化炭素、シアン化水素、硫化水素、ヒ素および芳香族多環性炭化水素などがあげられているが、アルカロイド類を除いては量的にはきわめて少なく、認められるほどの影響を及ぼすためには不十分な量であるとみなされている。(中略)放射性同位元素C14を含むニコチンを用いた動物実験によれば、ニコチンは体内に摂取されたのち同化されやすく、3時間後には約40%、6時間後に85%、16~19時間後にほとんど完全に尿中に排出されるという。ニコチンの一定量をある一定時間にわたって分割投与するときは、これと同じ量を一時に投与した場合に比較してその影響が著しく低減されることも、この同化、排出されやすい性質に基づくものと思われる。(中略)ニコチンの大量投与によって動脈硬化とふんりゆうほつしんを認めたという動物試験の報告もあるが、対象が不明確で結論は得られていない。(中略)ビリジンは、大量投与によってネズミに肝臓障害を与えるが、たば煙中の量はきわめて少ないものであるから、その作用を喫煙の結果とするわけにはいかないようである。

 両切りたばの煙中のタールの長期間大量連続塗布によってネズミ(実験用ハツカネズミ)の皮膚にがんを形成させたという実験例があり、タバコの煙中からこん跡量分離されたといわれる3,4-ベンズピレンによるといわれているが、その量はネズミの皮膚に悪性腫瘍を生ぜしめるにはあまりにも微量にすぎ、また相当量の3,4-ベンズピレンをもいってしても10年間の連続投与試験によってサルにがんを発生させることができなかったという。最近、葉タバコ精油中から分離されたα-ピリルメチルケトンは、局所麻酔、血圧降下、解熱作用を有し、毒性が少なく、あまと芳香をもつ揮発成分であって、タバコのみ味を著しく緩和することが明らかとなったが、その効果については生理的作用に基づくものとみなされている。

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