第13話 墜ちても尚、屈しない思い。そして、少年小説。
墜ちても尚、屈しない思い。これは拙作、「堕天使の夢~それでも少年は、世界を愛する」のキャッチフレーズであり、また同時に本作のテーマでもあります(最初は「堕とされても」でしたが、より能動的な意味で「墜ちても」に変更しました)。ある社会思想家の主張から今の社会に対して疑問を抱いた天使の少年、レウード・ウィルは、自らは貴族の身分でありながら、彼の意思を継いで、社会の思想を変えようと動き出します。
「主体性の無い世界」は、いずれ滅んでしまう。幼いながらも「それ」を直感的に感じ取った彼は、(過去の体験)から暴力によるモノでもなく、また言葉だけの主張にも寄らず、より良い改善案、「代案」を模索して、周りの皆に納得して貰う、それにとって周りの意識が変わっていくように奮闘して行きます。僕は……と言うより、「僕」もですが、「現行の社会がどんなに歪んでいるから」と言って、それを力でねじ伏せたり、知略で制するのは、何処か違っていると思っています。
人間の心を動かすのは、やっぱり人間の心。それも見返りを求めない、純粋な善意だと思っています。彼が行動するのは、自分の未来もそうですが、皆の未来が良くなるため、天使が天使らしく生きるために必要なモノは何か、を必死に追求しているからです。だから、その過程でどんなに酷い目にあっても挫けない。僕がこの話を書いたのは、「純粋な善意」、そして、「物事の本質を見る力」こそが、世の中を良くする根幹であって欲しいと願ったからです。
今は「善意」や「慈悲」すらも、何処か自分よがりな所がある(あくまで主観ですが)、「いいね」や「凄いね」を稼ぐ道具になっている部分があると思います。彼の場合は、そう言うものを一切(内心では、僅かに思っているかも知れませんが)求めていない。彼は、天使が最も大事にする物、「愛」と言う感情に従って行動しています。愛は、相手の事を
昨今の娯楽作品は、どちらかと言うと、人間の快楽を満たす物は多いが、精神の透明化を満たす物は少ないような(これも主観ですが)気がします。相手がどれだけ気持ち良くなれるかを追求した結果、主人公が絶対的な善、その欠点すらも全肯定して、相対する者が問答無用に叩き潰されている。それをヨイショする脇役達も、主人公への称賛ばかりで、誰も主人公の行動に疑問を抱かない。これは、一種の洗脳に近いと思いました。洗脳から生じる愛は、危険です。これでは子どもを拉致監禁し、自分の奴隷とする犯罪者と何ら変わりません。
本作は(僕の考える限り)、その行為に真っ向から立ち向かった少年小説です。少年小説は既にあり、その定義も決まっているかも知れませんが、僕が考える少年小説の定義は、「探偵、ロード」と同様、「主人公の少年が能動的な意思、行動、夢、志を持って、困難な問題(現実)に立ち向かって行く小説」、「主人公の思想が必ずしも絶対ではない小説」としています。主人公にも何かしらの欠点、そして、未熟さがある。作中では主人公の思想が善側として描かれていますが、相手の思想にも一理あり、それを完全な悪として割り切れない物として、相対的な視点を楽しむ事ができます。だから、敵側の登場人物達もできるだけ魅力的な人物になるよう描きました。彼らの考えは、そこに生きる大人の考えであり、それに相対する彼の思想は、物事の本質(のような物)をどんなに分かっていても、それは所謂、子どもの考えなのです。そこには、明確な違いがある。
本作は昨今の異世界モノ、特に主人公の快楽を満たす事に特化した小説へのアンチテーゼとして新たに書き直した小説です。現実でも上手く行かない事は、物語の中ではもっと上手く行かない。厳しい現実の中でも、自分の夢を決して見失わない少年、レウード・ウィルの物語は、僕の中ではかなり気に入っている作品です。文章の量はもちろん、作品の内容も真面目すぎるかも知れませんが、それでも読んで頂いたら、これ以上に嬉しい事はありません。
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