第9話『わたしはあなたをうらみます』
ブタは私に真実を教えると言った。
その真実がグッドニュースにせよ、バッドニュースにせよ、現在進行系で起こっている事であるのは間違いない。その現状をどう受け入れるのか。どのようなアクションを後に起こすのかは、私次第だ。
覚悟を決め、私は真実を知る道を選択した。
暗室で作業を進める。
私は少しそわそわしながら、その時を待った。
#
やっぱり、私というのは心の弱い人物である。
“してはいけない”と誓っていても、禁じられた行為に手を染めてしまう。
何故そういうことをしてしまうのか。
答えは簡単である。
単に気持ちが良いからだけではない。
彼女を心底から愛しているからだ。
彼女にもこういうことを覚えさせてはいけないことは十分わかっている。だから、別れまで切り出そうとしたのに。
しかし、私が我慢できなかった。
白く細い身体が妖艶である。
高地に自生する白樺の如く淑やかで、
また、どこかあどけなさの残る幼い顔をして、
それでいて、気取っているものの本当は誰かに甘えたいと心の底で思っているこのギャップも
非常に私の心を強く動揺させ、私の欲求を、覚醒させているのだろう。
小さく聞こえる吐息がいとおしい。
どうして彼女はこんなにも、こんなにも可愛らしいのか。
やはり、彼女を守れるのは私しかいない。
彼女をぎゅっと優しく抱き締めながら、
そう思った。
あのキリンのことなんて、頭の片隅にもなかった。
#
小一時間くらい経過しただろうか。
意外と時間がかかった。
つい、壁に寄りかかり眠ってしまったかもしれない。
「...出来ました」
丁度良いタイミングでブタが声を掛けた。
外に出てると、光が眩しく感じた。
「アミメキリンさん、これが全ての真実です」
数枚の写真。
慎重にそのうちの1枚を捲った。
「.....」
「やはり、あの人は“ウソつき”でしたか」
私の心は狼狽えた。
やっぱり、アイツの事が好きだったのか。
私は先生に騙されていた。
悔しさと怒りで自分の握った拳が小刻みに震えていた。
「アミメキリンさんの純情を踏みにじるなんて
最低な行為だと思います」
ブタはそう言った後に、悪魔の様な囁きをした。
「...裏切り者には裁きを下すべきですよね」
「...えっ」
「だって、憎らしいでしょう?あの人のこと」
彼女は自分の手を握り、ニヤニヤと笑いを見せる。
「それに私、薄汚い事をするヤツが大嫌いなんです。ああいう汚れを一緒に落としましょう」
「...何をすればいいですか」
「私の言った通りの事をすればいいだけですよ...」
2人がそんな事を考えているなど、博士達は知るよしもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます