第8話『真実へのプロセス』

黒雲が立ち込め、時折雷が遠くで鳴り、

バケツをひっくり返したような勢いの雨が降りしきっていた。


私はそんな豪雨の中を飛び、ある場所へ向かった。


「博士...さん?」


驚いた目で見たのはアリツカゲラだった。


「どうしたんですか?

こんな雨の中、ずぶ濡れじゃないですか!

今拭くものを...」


「....タイリクオオカミはいますか」


「え?ああ、えっと、多分...」






漫画を描いてる最中、いきなり誰かが来たと思ったら博士だった。

アミメキリンも驚いていた。


「博士さん?」


「ど、どうしたの?」




「...助手が、死にました」







ロッジにいる3人で博士の話を聞いた。

アリツカゲラは気を使い、暫くはここにいても良いと言った。

私は一番アミメキリンが気掛かりだったが、

事情が事情な事を察したのか、余計なことは言わなかった。


アリツカゲラが部屋を案内した数分後に、

やはり私は気になって


「ちょっと、博士の様子見てくるよ」


そう彼女に言って部屋を出た。





普段明るい部屋が天気のせいか、

また、彼女のオーラのせいか、薄暗く見えた。


「博士...」


「...これで良かったのです」


その言葉の意味を何となく察した。


「邪魔者は消え去りました」


虚勢を張っている様にも聞こえた。


「あなたの声を心置きなく聞くことが...」


「なあ」


彼女の言葉を遮った。

きょとんと、私の顔を見る。


「...もう、やめないか」


「...え?」


「私を好きになったて、良いことないじゃないか。こそこそ隠れて、楽しんで...。

助手が死んだのが、私のせいみたいで...

だから...、もう、こういう付き合いは...」


理由を述べている途中、彼女は泣きそうな声で

言った。


「あなたまで私を捨てるんですか...!?

私を一人にするんですか...?」


「....」


ぐすんと、涙ぐむ。

いつもの彼女が見せることのない涙。


私は、そんな姿を見せられいたたまれなくなり、咄嗟に彼女を抱き締めた。




「嘘だよ...。君を1人になんて...。

私ができるはずないじゃないか...」


情に訴えられ、易々と彼女を受け入れた。









「ふふ...、幸せそうなこと。

そういられるのも、今のうちですよ」


パチャ






翌日、博士は図書館へ一度戻ると言った。

やはり、生まれたてのフレンズがいつ来るかわからないからだ。


「タイリク、暇でしょう。助手として少し

手伝って欲しいのですが...」


「私は...、いいけど、君も来るかい?」


アミメキリンに誘いの声を掛けた。


「え、私ですか?...えっと、じゃあ...」


すると、肩を叩かれた。


「アミメキリンさん、どうしても頼みたい事があるんです」


両手を合わせ懇願してきたのはブタだった。


「...え?」




「見かけない顔ですね。昨日いましたか?」


「ああ、彼女はブタだよ。アリツカゲラの知り合いで少し前から清掃員としてここで働いてる」


博士とタイリクはこそこそと話した。



「ごめんなさい、タイリク先生。

ちょっとアミメキリンさんに用事があるので、お二人で行ってきてください!」


半ば強引にアミメキリンの背中を押しブタは

奥の方へと行ってしまった。



「....」


「...なんなんですかね」


彼女の行動は二人に理解できなかった。





「ちょ、ちょっと、何なんですか?」


流石の彼女も、困惑した顔を見せる。


「すみません、アミメキリンさんに見せたいものがあったんです」


「見せたいモノ...?」


妙にその口振りに胸騒ぎを覚えた。

ブタが連れてきたのは、ロッジの一番奥にある、自分でも行ったことない部屋だった。


扉を開けると中はとても真っ暗だ。


「ホテルに残っていた使い捨てカメラを持ってきて正解でした。今から写真を現像しようと思いますが...、最後の確認です。

アミメキリンさん、“真実”を知りたいですか?」


「....」


正直に言うと、まだ心の気持ちは整理ついていない。真実を知りたいという気はあるが、少し躊躇してしまう。


しかし、これからタイリクオオカミとの関係を

どうするか、重要な判断材料になることは間違いないだろう。


清水の舞台から飛び降りる覚悟で、小さく、

はいと返事をした。

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