関係のリセット

絵美ちゃんのおばあちゃんは、建物を見上げる。


「あら? 前に来た時より、綺麗になった気がするよ」


そう言って、さっさと建物の門の中へと入っていく。


屋根は無理だったけど、手の届く範囲は、みんなで綺麗にしたんだもん。


きっと、絵美ちゃんのおばあちゃんが前来た時より綺麗になってるよ。


建物入り口の扉に近づくと、扉は勝手に開いた。


中に入ると、キサラおばさんとキクコおばさんがいた。


おばあちゃんとあたしを見ると、二人は驚いた顔をした。


「キィラさんじゃないか!」


絵美ちゃんのおばあちゃんのまじょとしての名前。


それがどうやら、キィラっていう名前みたいね。


「おや、新しく弟子をとったんですね」


キクコおばさんがあたしに笑顔を向ける。


「ウチの今の弟子、手がつけられないのですね。うらやましいですね」


「相変わらず、女の子しか弟子を取ってないのかい」


「そりゃあそうだよね。ウチはルールを守るタイプなのね」


二人の会話を聞きながら、あたしは悲しくなる。


やっぱりキクコおばさんも忘れちゃってた。


あたしのことも、新しく弟子にした星谷くんのことも。


あたしはキサラおばさんの方を見る。


キサラおばさんもきっとあたしのことを忘れちゃってるよね。


キサラおばさんはあたしの視線を感じて、あたしを見返してくる。


キサラおばさんは顔をしかめると、あたしに声をかけてきた。


「アンタ」


「はっ、はいぃっ」


キサラおばさんに呼ばれると、つい緊張しちゃう。


キサラおばさんは忘れちゃっただろうけど。


あたしは、キサラおばさんと過ごした日々を全部覚えてる。


「アンタ、アタシと会ったこと、あったりするかい?」


あたし、その言葉を聞いて、嬉しくなった。


少しだけでも、あたしのことを見て引っかかりを覚えてくれた。


それは、キサラおばさんに少しはあたしという存在が残ってるってことだから。


キサラおばさんは、呟くように言う。


「初めて会った気がしないんだ、アタシは」


「キサラにしちゃ、珍しいじゃないか。他人に興味示すなんて」


絵美のおばあちゃん、キィラさんがびっくりしたように言う。


「なんだかしらないが、気になるんだよ。その子のことはね」


キサラおばさんは、頭をかきながら言う。


キィラさんは、嬉しそうな顔をする。


「ババは嬉しいよ。キサラが気にかける人ができてくれたことがね」


そう言うと、キィラさんは杖を振った。


キィラさんの杖から出た光は、キサラおばさんやキクコおばさんを包み込んだ。


え? え? 一体何が起きてるの?


















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