まほうを、取り返しに。

「確認だけど。立夏ちゃんは、キサラの弟子に、なったのね?」


家の外へ出て、道を歩きながら絵美ちゃんのおばあちゃんが聞いてくる。


「はい」


なんだか、キサラおばさんを知ってるみたいな言い方。まさか。


「キサラさんを知ってるんですか」


「ああ、そういえば言ってなかったねえ」


絵美ちゃんのおばあちゃんは、ぽんと手を打つ。


あたしに何を言ってなかったんだろう。


「ババはまじょでもあるし、キサラの先輩弟子でもあるんだよ」


先輩弟子? つまり、おばあちゃんもキートンさんの弟子だったってこと?


世界って、狭いね。


「立夏ちゃんがまほうを使えなくなったのはねぇ」


ここで言葉を切って、絵美ちゃんのおばあちゃんは深刻な顔をする。


「まじょにならなきゃよかったって思ってしまったことなんだ」


うん、なんとなくそんな気はしてた。


まじょになったことで、新しい関係が広がったのも事実。


でも、それまでに築いてきた関係を壊してしまったのもまた、事実。


新しく広がった関係がなくなるより。


前から築いた関係がなくなることの方が、怖かった。


だから、そんなことを呟いてしまったんだ。


でもまさか、本当にまじょじゃなくなってしまうなんて。


「ただ今回は、それ以外の力も働いたとババは思うんだ」


絵美ちゃんのおばあちゃんは、厳しい顔をして言う。


「絵美と一緒にいたっていう女性だけどね。おそらくそいつは、キヨセだ」


キヨセさん。ありさちゃんの願いを叶えたっていうまじょさん。


こちらの世界の人間嫌いだっていうことは聞いたけど、そんな人が、どうして。


あたしは首をかしげる。


すると、絵美ちゃんのおばあちゃんは言う。


「キヨセは、こっちの人間を極端に嫌ってるんだけどね」


でも、嫌いって言うだけならいいんだけど。


おばあちゃんはそこまで言って、大きくため息をつく。


「こっちの人間なんか、いなくなればいいって思ってるからねぇ」


絵美に近づいたのも、あの子が何か弱みを見せたからじゃないかと思うんだよ。


そう言い終わった時、突然絵美ちゃんのおばあちゃんが立ち止まったの。


あたしも慌てて立ち止まる。


そして、その場に広がる景色に、ただただ驚くしかなかった。


だって自分では探しても探しても来れなくなってしまった、キサラおばさんの店。


あのボロボロお屋根が懐かしい、あのお店が。


いつのまにか目の前に、まるで当たり前のように、現れていたんだもん。


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