キクコおばさんの過去と、これから
「それじゃあ、せっかくなのでウチがなぜ男の人が苦手なのか教えるわね」
キクコおばさんは、大きく息を吸った。女の人はもう、立ち去ってしまった。
自分が悪いことしたって、分かったのかな。そうだといいな。
「ウチやキサラと同じ、キートンさんの弟子の中にこちらの世界の男性がいたのね」
キートンさん、つまり黒原くんのおじいちゃんはこちらの世界の人間。
だから、こちらの世界の弟子もたくさんとった。
同時に、キサラさんたちの世界の未熟なまじょも積極的に弟子にしてたみたい。
「その、こちらの世界の男性の一人のことをウチは……」
「愛してしまったんだよ。しかしその男の性格が悪くてねぇ」
キサラおばさんが顔をしかめる。
「キクコに好意があるフリをして近づいてきたんだけどね、実際は」
「ウチの知識を盗んだら、さっさと逃げてしまったのね」
それから、こっちの世界の男性は苦手なんですね。
キクコおばさんは悲しそうな顔をして言う。
「まあでも、いつまでも引きずっていても仕方ないですね」
そう言って、明るい声を出すキクコおばさん。
「ちょうどいい機会ですね。あなたで男嫌いを克服しますね」
キクコおばさんが星谷くんを見てにっこりする。
星谷くんは困った顔をして、でも笑ってた。
よかった、星谷くんがまじょのままでいられて、よかった。
♢♦
「ところでキクコ」
キサラおばさんが紅茶を飲みながらキクコおばさんに向き直る。
「アンタ、キヨセのこと、何か知ってるかい」
「キヨセさん? 最近は会ってないですね」
キクコおばさんは、首をかしげる。
「あなた、キヨセさんのことは嫌ってませんでしたかね」
「ああ、そうだよ。でもちょっと気になることがあるんだ」
どうやら、この辺をうろついてるらしいんだ。
キサラおばさんの言葉に、キクコおばさんも顔をしかめる。
いつも笑顔のキクコおばさんをしかめっ面にさせるくらいの人なんだ。
いったい、キヨセさんってどんな人なんだろう。
あたしは紅茶をすすりながら考える。
「どうやら、こっちの世界の人のことを困らせて回ってるみたいなんだ」
「それはいけないですね。同じ師匠の下で学んだ身としてね」
キクコおばさんが、悲しそうな声を出す。
「あの人、こちらの人間を嫌ってましたもんねぇ」
「アイツがこっちの人間を嫌ってる理由、知ってるかい?」
「いいえ、何も」
「アイツのことで何かわかったら、知らせてくれ」
「探ってみるわね」
紅茶ごちそうさま、そう言って、キクコおばさんは星谷くんと帰って行った。
キクコおばさんと星谷くんという新たな協力者もできたし。
問題が解決するといいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます