困っている人を探しに

 放課後、いつも通り、キサラおばさんのお店へ向かう。


 お店には、キサラおばさんはいなかった。


 代わりに、木のカウンターの上に、置手紙がおいてあった。


『アタシが留守の間、しっかり人助けをするんだよ』


 キサラおばさん、出かけてるみたい。


 まほうせき集めをしてなさいってことだね。


 黒原くんと一緒に、困ってる人を探しに出かけようとしたとき。


 久々に、あたしの首かざりが反応したの。


 あたしは、いつも通り首かざりに引っ張られるように歩き始める。


 黒原くんが、心配そうな顔で聞いてくる。


「それ、痛くないのか」


「痛くはないんだけど、恥ずかしいんだよね」


 これ、首から外したらダメなのかな。


 ふとあたし、思い立って、首から外してみた。


 そしたら、手の上でも変わらずに引っ張ってくれる。


 なんだ、首にかけてる必要はないのか。それなら外しておこう。


 首かざりにひっぱられていく人間なんて、気味が悪いだろうし。


 首かざりを握りしめて、あたしたちは再び歩き出した。


♢♦


 たどり着いた先で出会った人物に、あたしは驚きが隠せなかった。


 そこにいたのは、星谷くんだったから。


 河原で体育座りして、遠くを見つめてる。


 んー、これで性格がよければ、本当に絵になるイケメンなんだろうけど。


 あたしたちの視線を感じたのか、星谷くんが振り向いた。


「なんや、元気マンに黒原か。何か用か」


「星谷くん……、何か、困ってる?」


 あたしが聞いかける。その時。


 星谷くんが答えるより前に、あたしの杖が星谷くんの方へ飛んでいく。


 すると、星谷くんの鞄のふたが勢いよく開いて、中から杖が出てきた!


 え、杖!?


 星谷くんの鞄から出てきた杖と、あたしの杖は、二振りでくるくる回ってる。


 杖同士で、知り合いなのかな。


 それを見て、星谷くん、嬉しそうに笑った。


「なんや、やっぱり元気マンもまじょの弟子になっとったんやな」


「え……? それじゃあ、星谷くんも、まじょなの?」


 星谷くんの言葉に、あたしは聞き返す。


 まあ、杖を持っている以上は、きっと星谷くんもまじょなんだろうけど。


 すると、星谷くんは悲しそうに笑って答えてくれる。


「そう、おれもまじょや。……いや、まじょやった、というべきやな」


 え? それって、どういうこと?


 あたしは思わず首をかしげる。


 星谷くんは、自分の杖を振りながら言う。


「残念ながらおれ、まじょの弟子をクビになったんやわ」


「クビ!?」


 あたしも黒原くんも、思わず大声を上げてしまった。


 まさか、この年齢で「クビ」って言葉を聞くことになるなんて、ビックリ。


 それって、まじょの弟子をやめさせられたってこと!?


 


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