モテモテ男子! 星谷くん

星谷くん

 高園寺さんをまじょにスカウトした次の日。


 学校で机に突っ伏して大きなため息をついていると。


「うわあ、悩みごとなんかなさそうな元気マンが、ため息をついてるやん」


 と明るく元気な声が降ってくる。こんな時に、嫌なヤツにからまれちゃった。


 あたしは仕方なく、顔を上げる。


 そこには、まさにイケメンがニヤニヤと立っていました。


♢♦


 星谷理ほしたにおさむくん。同じクラスの男の子。


 多分、一般的に見て「イケメン」にあたる顔の人。


 目鼻立ちすっきりっていう感じなのかな。


 ニャニーズに応募したら、そのまま合格しそうな感じ。


 関西弁がとても特徴的で、学校にはファンクラブがあるとかないとか。


 ただし、性格は本当に残念。


 あたしのことをいつも『元気マン』って言ってからかってくるの。


 英語が苦手なあたしでも分かる。マンは、性別違いだってことくらい。


 まあ確かに、あたしには元気くらいしかとりえないんだけど!


「元気マン、最近変わったな。好きな人でもできたん?」


 星谷くんがニヤニヤしながら聞いてくる。


「なんでもないよ、なーんでもっ」


 あたしはそれだけ言うと、そっぽを向く。


 星谷くんは、こうやって時々あたしに、ちょっかいを出してくる。


 ファンクラブの女子たちに目をつけられたくないから、やめてほしいんだけどね。


「そういえば、お前、知ってるか」


 急にヒソヒソ声になって、星谷くんはあたしの耳に顔を近づけて言う。


「何をよ」


「この辺に、まじょがいるってこと」


 それを聞いて、あたし、どきっとする。


 え、もしかして噂か何かが広がってる?


「まじょ?」


 何も知らないふりをしてあたしが聞き返すと、星谷くんは得意そうに答える。


「そう、まじょ、や。お前、まほうとか好きやろ」


 絶対そうやろ、と星谷くんがあたしを見てウインクする。


 こうやって女子たちをメロメロにするんだわ、あたしはひっかからないわよ。


「あたしがまほうが好きだったら、どうなのよ」


 あたしがそっけなく答えると、星谷くんが笑って言う。


「まじょの居場所、知らへんかなーと思って」


 知ってたとしても、教えるわけないでしょーが!


 あたし、心の中で舌を出す。


「知らないわよ、まじょの居場所なんて。他を当たってよね」


 あたしが冷たく言うと、星谷くんは少しだけ悲しそうな顔をした。


 悪いことしたかな、とあたしが思った次の瞬間には。


「そりゃ、そうやな。お前は、選ばれるタイプちゃうよな」


 そんな意味深な言葉を投げかけて、あたしから離れて行っちゃった。


 選ばれるって、何に? まじょに? それなら、選ばれちゃってますけど!?


 考える間もなく、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。


 授業が始まって数十分後には、あたしは星谷くんとの会話のことは忘れてた。


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