ありさちゃんと高園寺さん

 高園寺さんと広内さんは、遠野さんと同じく昔からの友達みたい。


 高園寺さんは、友達である広内さんのために色んなおまじないを教えてくれた。


「でも、三つの願いを叶える前の自分に戻してほしいっていう願いが叶わないの」


 好きな人とうまくいきますようにってお願いしたときは通じてたのにね。


 ありさちゃんは、そう言って、廊下の窓の向こうの外を眺める。


「あれはきっと、まじょに叶えてもらった願いだから、元に戻せないんだよ」


 ありさちゃん、すっごく悲しそう。


 黒原くんとあたしは、顔を見合わせた。次の瞬間。


「そのまじょを見つけて、願い事の話、聞いてみる」


 あたしは思わず、ありさちゃんに向かって宣言していた。


 ありさちゃんは、難しい顔をして言う。


「そんなの、無理だよ。どこに住んでるかも分からないのに」


「名前か何か、言ってなかった?」


 あたしが聞くと、ありさちゃんは考えこむそぶりを見せる。


「確か……、キヨセって言ってた……かな」


「キヨセ、だね。調べてみる。何かわかったら教えるね!」


「え、ちょっと!?」


 今日放課後、キサラおばさんのところに行こう。


 そして、キヨセってまじょさんを知っているか聞いてみよう。


 同じまじょなら、知ってるかもしれないから。


♢♦


「キヨセだぁ? そいつは、アタシと同じキートンのジイサンの弟子の一人さ」


 キサラおばさんは、ロッキングチェアに座ったまま顔をしかめた。


「しかし、困ったねぇ。アイツはなかなか厄介だよ」


 何が厄介なんだろう。知ってる人なら、どうにかなりそうなのに。


「アイツは弟子の中でも一、二を争う優秀なまじょだった」


 キサラおばさんは、いったいどのくらいの順位にいたんだろう。


 知りたい気もするけど、聞いたらこの口が二度と開けない気がする。


「そして、こちらの世界の人間が、すさまじく嫌いだ」


 キサラおばさんは、ふうっとため息をつく。


「どうやらこの件は、なかなかややこしい話のようだね」


 キサラおばさんは、あたしと黒原くんを見比べながら言う。


「とりあえず、この件は少しアタシに任せてくれないかい」


 そう、キサラおばさんに言われてしまったらあたしたち、何も言えない。


 ただ、頷くことしかできなかったの。


♢♦


 キサラおばさんの店を出た後、あたしと黒原くんは、高園寺さんの家へ向かった。


 そして高園寺さんに、じぶんたちがまじょの弟子になったことを話した。


 あ、もちろんキサラおばさんの許可は、もらったよ。


 それから、ありさちゃんの願い事を叶えたまじょさんの話をしたの。


「広内の問題を解決しないと、おそらく高園寺の問題も解決しない」


 黒原くんが困った顔をして言う。


「だから、もう少しだけ待っていてほしいの」


 キサラおばさんが、何か手掛かりを手に入れてくれるまで。


 あたしの言葉に、高園寺さんは頷いた。


「もちろん、構いません。こちらは、手伝って頂いてる身ですから」


 ご迷惑をおかけします、と言って優しく笑ってくれる、高園寺さん。


 その胸元から、まほうせきが飛んできて、あたしと黒原くんの小瓶に入る。


 まだ問題、解決してすらいないのに。


 高園寺さんは、本当に優しくていい人だ。


「高園寺さん、問題が解決したら。あたしたちと一緒にまじょになってくれる?」


 あたしが尋ねたら。高園寺さんは、にっこり笑ってくれた。


「ええ、もちろん! こちらから、お願いします。仲間にぜひいれてくださいね」


 

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