ありさちゃんの証言
私、寂しかったの。
いっつも家では一人ぼっち。
お母さんはいっつも、ママ友と遊びに行っていて、いない。
欲しいものも、買ってもらえない。
「え、でも今は……」
あたしが言いかけた言葉に、ありさちゃんは頷く。
「そう、今はほしいものは何でも買ってもらえる」
それに、とありさちゃんは続ける。
「それに、今まで絶対来なかった学校の行事にも来るようになった」
それを聞いて、黒原くんがぽんと手を打った。
「確かに、去年までは広内のお母さん、見たことがなかったな」
そう言われてみて、あたしも思い出す。
確かに、あのきれいなお母さんを初めて見たのは、今年に入ってからだ。
「そう、何もかもが変わったの。あの時から」
「あの時から?」
あたしが聞き返すと、ありさちゃんは、思い出すのも嫌そうに言った。
「あるまじょに、会ったの」
「まじょ!?」
ありさちゃんから出てきた言葉に、あたしはびっくりする。
ありさちゃんからその言葉を聞くなんて、思ってもみなかった。
黒原くんを見ると、彼もまた驚いた表情を浮かべてる。
「そう、まじょ」
ありさちゃんはそう言って、うつむく。
「信じてもらえないだろうけど……」
「信じるよ。続けて」
あたしが言うと、今度はありさちゃんが驚いた顔をした。
「う、うん。……まじょはね、願いを叶えてあげると言って近づいてきたの」
「願いを……叶えてあげる」
あたしが繰り返す。ありさちゃんは頷く。
「三つだけ、願いを叶えてあげるって」
まるで、どこかの、まじんさんみたいだね。
「一つ目に願ったのは、今好きな人と両想いにしてほしいってこと」
「他の二つは?」
「欲しいものはいつでも買ってもらえますように。それから」
ありさちゃんはまた、うつむいて言った。
「ママが家にいてくれる日が増えますようにとお願いしたの」
「願い事は……叶ったの?」
「うん。叶ったよ。でも、それから色々おかしなことが起きるようになったの」
ありさちゃんは、とても苦しそうな顔をしながら話してくれた。
今までずーっと好きだった、両想いになった男の子が嫌いになってしまったこと。
それからは毎週のように、好きな人がころころ変わるようになってしまったこと。
好きな人が変わるたびに、誰かに言いふらしたくなってしまったこと。
ほしいものがどんどん増えていったこと。
でも買ってもらっても、最近は全然嬉しくないこと。
それらを、彼女は半泣きになりながら、あたしたちに話してくれた。
「そんな私を見て、京歌はまじないを教えてくれたの」
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