杖との会話

「とりあえず、まほうでどうにかできないか、やってみよう」


 黒原くんと別れるとき、あたしたちはそう約束した。


 今日はもう遅いから、あたしたちは自分の家へ帰ることにしたんだ。


 家に帰ったら、杖を使ってまほうを使ってみよう。


 あれ、でもまほうを使うのって、まほうせきが必要なんじゃなかったっけ。


 違う、自分のために使うまほうじゃなかったら、いらないんだっけ。


 そんなことを考えながら、あたしは家に帰った。


 お母さんに叱られたかどうかって? それは想像に任せるよ。


♦♢


 宿題を終わらせて、夕飯を食べた後。


 あたしは、自分の部屋に戻ってベッドにねっころがってたの。


 そばには、杖とまじょの心得が書いてある本。


 人のために使うまほうには、まほうせきがいらないことが多いのは分かった。


 ただ叶えたい願いによっては、まほうせきが必要になることもあるみたい。


 あたし、杖を見つめながら聞いてみる。


「あたし、高園寺さんを助けたい。どうにかできないかな」


 すると、杖はあたしの頭上を数回飛び回ったかと思うと、勉強机の上へ。


 あたしが慌てて勉強机まで走っていくと、開いたままのノートに文字が広がる。


『あいまいな願いは、叶えられません』


「助けるっていう言葉があいまいってこと?」


『そういうことです』


 そっか。助けるって言っても、色々あるもんね。


「おまじないを教えてくれることに感謝してる人だけ、依頼できるようになるとか」


 とにかく、あれだけの人が常にいる状態を、なんとかしてあげたい。


「一人一つしか、おまじない教えられない制限つけるとか」


『人の流れを止めるには、噂を止めるしかありません』


 噂を止める? つまり、噂を流してる人をつきとめるってこと?


『そして今、噂を知っている人の記憶を消去するのです』


 え、そんなことができちゃうの。


 あたし、とってもびっくりする。


『人の記憶を消去するには、たくさんのまほうせきが必要です』


 そりゃあ、そうだよね。難しいことだもん。


『そのためにも、人の役に立って、たくさんまほうせきを集めて下さい』


 話はそれからです、そう書き残して杖は、ランドセルの中に入ってしまった。


 もう話すことは何もない、ということなんだろう。


 人助けをしたら、まほうせきが手に入る。


 仕方ない。こうなったら、まほうせきのために、人助け頑張ろうじゃないの!




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