まほうせき集め


 「あー、まだこれだけかぁ……」


 あたしは、まほうせきの入った小瓶を光にかざす。


 今日だけでたくさんのお手伝いをしてきたつもりなんだけどなぁ。


 部屋のベッドの上で、あたしは大きくため息をつく。


 小瓶の中では、小さなまほうせきがカラカラと音を立てて揺れている。


 やっぱり一粒一粒が、きらきらしてて綺麗。


 でも。


 でもでも! 全然足りない気がする。


 今日、どんな人助けをしてきたっけ?


 迷い猫探しに、自分が食べた朝食・夕飯のお皿洗い。


 それにそれに! 学校の先生のお手伝い。


 授業の準備を手伝ったり、黒板を消してあげたり、色々。


 あれ、でもこれだけだっけ。


 なんだかもっと、お手伝いしたような気がするんだけど。


 自分ではやったつもりでも、大して人助けてしてなかった。


 けれど、今日人助けをしてみて分かったことがある。


 それは。


人助けをしたとしても、必ずしも、まほうせきがもらえるとは限らないこと。

 

 今日だけで多分、10回くらい人助けしたはずなんだけど。


 小瓶の中には、3個のまほうせきがちんまり収まっている。


 人助けの大きさによって、もらえるかどうかが決まるのかな。


 それとも、もっと別の理由?


 あたしは頭を抱える。


 あとは、一日にもらえるまほうせきに、制限があるとか……?


 うわーん、キサラおばさんに確認しないとおおおぉぉっ。


 あたしがベッドの上でジタバタしていると。


 ランドセルの中から杖が飛び出して、また勉強机の上に直行。


 あたしも、勉強机の方へと仕方なく歩いていく。


『噂を流した人なら、そのまほうせきで探し出せます』


 ノートに書かれた言葉を見て、あたしはガッツポーズ!


「それじゃあ、噂を流した人を探し出して!」


 あたしの言葉に、杖が反応して一瞬ちかちかと光った。


その後、杖がこんこんと、ノートをたたくと文字が浮かび上がってくる。


 その名前を見た瞬間、あたしはげっそりする。


 ああ、なんとなく予感はしてた。でも、信じたくはなかった。


 これは、大変なことになってきた!


 あたしは、噂を流した人の名前が書かれたノートを持って、部屋を飛び出した。


♢♦


 ノートを持ってあたしが向かった場所は、キサラおばさんのところ。


 キサラおばさんの店の中に入ると、既に黒原くんが待っていた。


「ごめん、お待たせ」


「遅いぞ、鳴川」


 今日は、キサラおばさんの店に行く前に、おやつを食べたかったの。


 だから、一度家に帰ったんだ。


 最近絵美ちゃんと一緒に帰ってなかったし、ちょうどよかったんだ。


「高園寺さんのまじないの噂を流した人の名前、分かったよ」


 あたしが得意そうに言うと、黒原くんちょっとだけ驚いた顔をする。


「もう分かったのか。オレはまだ分からないままだ」


 そう言って、黒原くんは中身がぎっしり詰まった小瓶を取り出す。


 あれ? 黒原くんが手に持ってる小瓶、あたしが持ってる小瓶と同じ。


 ということは……。


「黒原くん、それってもしかして……」


「これ? これはまほうせきを入れる小瓶だけど」


 お前も持ってるだろ、と不思議そうな顔をして言う黒原くん。


 やっぱり。まほうせきを入れる小瓶なんだ。


 でも、どうして黒原くん、そんなにたくさん貯まってるのおおお!


 ずるいよおおおおっ!!


 

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