黒まじゅつ大好き! 黒原くん

黒原くん

 ああ、朝から疲れたよー。


 あたしはざわつく教室の中で、自分の勉強机に顔をくっつける。


 すると、あたしの隣に気配が。


「立夏ちゃん、おはよう」


 聞きなれた声がして、あたしは机から顔を上げた。


 あたしの大親友、石口絵美ちゃんが心配そうに見つめてる。


「あ、絵美ちゃんおはよう」


 あたし、絵美ちゃんを見たら元気になってきた。


「絵美ちゃん、あのねあのね! 昨日、すっごーいことがあったのっ」


 あたしは、昨日のことを絵美ちゃんに話そうとして、ふと考えた。


 あ、昨日のことって、絵美ちゃんに話しても大丈夫なのかな。


 ランドセルがかたかたと鳴っている。あ、杖がだめって言ってるのかな。


「立夏ちゃん、どうしたの」


 絵美ちゃんが、不思議そうな顔をする。


「あのっ、えっとね……」


 どうしよう、なんとか話をそらさないと! そうだ!


「あ、そうそう! 今日の宿題、できた?」


「宿題? もちろんできたけど……」


 絵美ちゃんメガネを押し上げて、当たり前じゃないって顔であたしを見てる。


「あたし、今日の朝、頑張って仕上げたんだぁ」


 あたし、ドヤ顔をする。ほめられることじゃないけど、まほうで、ね。


 でも、宿題はできたけど。小瓶の中のまほうせき、なくなっちゃったんだ。


 せっかく頑張って人助けして、やっと手に入れた、まほうせきだったのに。


 宿題やってほしいって、声に出したのがまずかったよね。


 ああ、もっと別なことに使いたかったなぁ、まほうせき!


 きれいだったから、集めたかったのに!!


 あたしが落ち込んでいると、隣の席に乱暴に黒いランドセルが置かれる。


 隣の席の住人、黒原楽くろはららくくんだ。


 黒縁の分厚いメガネに、いーっつも、黒いTシャツを着ているの。


 休み時間には、いーっつも本読んでる。


 彼が読んでる本のタイトルが、とーっても珍しいんだ。


 『世界の黒魔術事典』とか、『悪魔と黒魔術』とか。


 黒魔術とか、悪魔とか、ちょっと怖そうだったりする。


 図書室とか図書館で借りてるんだろうけど……。


 あたしが、見たことない本ばっかり!


 授業中とかでもよく、


「儀式だっ!」


 って急に叫んで机の上で「儀式」を始めたりする。


 儀式って、何なんだろうね。


 その彼が、あたしの方を見て、そしてあたしのランドセルを見る。


 それから、驚いた顔をしてあたしのランドセルを指さしたの。


「……黒魔術。お前、黒魔術が使えるのか」


 あたしも驚いちゃった。普段、黒原くん言葉を話さないから。


 でも、あたしが黒魔術が使えるって、どういうこと?


 反対側に立ってる絵美ちゃんも、びっくりした顔をしてる。


「立夏ちゃんが、黒魔術を使えるわけないじゃない」


 そう言ってくれたけど。そもそも、黒魔術って何だろう。


 その時、休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴っちゃった。


 あーあ、休み時間、終わっちゃったよ……。



 


 




 




 











 


 


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