02.物書き、初恋の話

まずはどこから話そうか、と思う。

こういう時普通の小説なら


"あの人に惚れたのだ、一目惚れだ。

黒く艶やかな髪、白い肌、赤いサンゴのような唇。

美しかった、目を奪われた。

だからこそ、恋に落ちた"


なぁんて、出会いの話でもして苦悩すればいいんだろうが……。


ここで一旦逡巡。画面の中の青いバーがチカチカと点滅して早いとこ文字を打てと急かしてくるみたいだ。


先程すでにわけのわからんプロローグを挙げたばかりで、

次に何の話をするかはすでに手詰まりだ。

いや、ネタはある。ネタはあるが、ありすぎてどこから話していいやらわからない。


そうだな、さっきの出会いの話にかこつけてみようか。


私の初恋は女性、同性だ。


この時点で雲行きが怪しくなってきた人はそっと立ち去ってくれて構わない。


最初は幼稚園の先生、次は教師。


大人の女性への憧れなのかどうか、その時はそこまではわからなかった。


ただ、"恋をするとドキドキするらしい"と言われて、じゃあドキドキした相手はだれかっていったら、それがたまたま同性だっただけって話だ。


かといって、べつに男性にときめかないわけじゃない。


だから多分その時は、異性よりも魅力的な人が同性に多すぎた。私はそう解釈している。


好きになった人は、

だいたい年上で

さっき書いたみたいに髪が長く、艶やかで。

どちらかといえば美人で、

笑うと可愛い人。


そういえばみんなそんな風な感じで好みが一貫していたな、と思う。


嗚呼、そういえば一度だけ同級生に惚れ込んだことがあったけれど、

どの時も一度も、態度にもそぶりにも出したことがない。


そうすればそばに居られるし、

優等生なら割と可愛がってもらえる。

まあわりと小さいながらに姑息だったってわけだ。


それに、それが声に出してはいけないことなのも知っていたからカムフラージュのように、「誰がすき?」と聞かれた時のために、答えるための人気な男子の名前を二、三人ストックしていた。


それが私にとっての"普通"だった。


みんなにとって普通でない、私の普通だ。


だからこそ、これからご登場することになる恋人とやらは、まあ何もかもが規格外で普通ではない。


だけどそれも、私には、存外あっさりと受け入れてしまえた。


その話はまた、すぐにすることになるだろう。

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