第 13話 万能人
―レリウス歴1586年7月9日夕方
パノティア王国、王都・ルナ―
内戦が集結して2年。パノティア王国は、新たに生まれ変わろうとしている。
エリンスケルコをその手で殺めた英弘は当初、秀吉から大目玉をくらったものの、結局は英弘の手柄として処理された。
英弘にとって初めての手柄であり、初めての殺人であったそれは、彼に一生忘れることの出来ない記憶として残るだろう。
敵対勢力の排除に成功した
まずは王国直轄の常備軍、王国陸軍と、海軍の創設。
陸軍には忠道をその長に据え、海軍にはハルゼーを据えた。
秀吉とアンリマルクの兵を中心に組織されたそれらは、彼らギフトの指導の下、統一された
内政面においては、英弘と秀吉が画策した通りに改革が進められることとなった。
秀吉は各領地の統廃合や再分配、領主の転封を段階的に断行しつつ、太閤検地に見られるような、全国的な測量と税収の統一を実施していく。
その際、各領民に対し、”パノティア国民”である自覚を促したのだ。
それをより早く、より分かりやすく自覚させる為に作られたのが、”国旗”と”国歌”であった。
内戦終結以前から作製に掛かっていたこれらは、瞬く間に全国へと広まったのである。
その他にも、パノティア国内の関税撤廃や、各領主の兵権を制限したり、王都で試験的に、身分関係なく勉強ができる学校を設立するなど、改革が推し進められた。
ただ、その急速な改革は、当然のことながら混乱も招くこととなる。
その混乱の最中、当然各部署では人材不足が深刻化した。猫の手を借りてもまだ足りない中、影響をまともに受けているのが、坂本英弘その人だろう。
「えーっと……カモネッリ商会が終わったから……次はダルコ商会か……」
王都の商工街を、英弘は歩いていた。独立騎兵隊長という地位にありながら、部下も従えずに1人で……。
左手には商人と商会のリストが載った冊子を、右手にはそれにメモするためのペンを持ち、足取り重く彼は練り歩く。
14歳になり、身長も高くなったものの、しかしそのあどけなさの残る少年は、くたびれた中年のような雰囲気を醸し出していた。
さらりと靡く、明るい茶色の髪は、本来なら艶と潤いのある髪質なのだろうが、連日の疲れによって今はしなびて見える。
英弘の前世で言えば、過労死寸前のサラリーマン。といったところだろうか。
「くそ、あの禿ネズミめ……そもそもこんなメンドクサイ作業を俺に押し付けるなよな……」
帰ったら文句言ってやる! などと英弘は不満を口にしていた。
それもそのはず。エリンスケルコ討伐の褒賞として新たに部下1百人を与えられた英弘は、その把握と訓練で手一杯の状況だったのだ。
その上、改革によって生じた混乱のコントロールに駆り出されたのである。
「それにしても、ホントに商人が増えてきたよな……そりゃ管理やら監督に人手が足りなくなるわけだ……」
英弘まで駆り出された理由がこれである。
パノティア全土で領地間の関所、関税を撤廃したことにより、英弘達が望んでいた経済の流れが加速した。
だがこれにより、商人が王都へと集まることにもなったのだ。
集まった商人は、管理統制や法律の制定が追い付いていないことをいいことに、好き勝手に商売を始めたのである。
それが戦後行政の混乱と相まってか、商人の管理に避ける人員があっという間に枯渇し、ついには英弘まで駆り出される結果となったのだ。
「はあ……」
溜息を一つ。英弘はゲンナリとした顔で冊子を見やった。
商人の登録と、商会の規模、資本の見当。これらが終わった商会は、未だ冊子の半分である。
「破り捨ててやろうか……」
誰に言うでもなく、英弘は呟く。
されど、そんなことをしたところで仕事は無くならない。
彼はもう1回溜息を吐くと、次の商会へと足を運んだのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ごめんくださーい! 王宮から参りました商工監督官ですけど、ダルコさんはいらっしゃいませんかー?」
扉に向かって英弘は呼びかけた。やや貧相な家の、そのドアを2回叩き、名乗りを上げる。
「おーい! 誰かいませんかー? おーい! チッ、ったく、返事くらいしろよ……おーーい!!」
幾度となくドアを叩き、呼びかけるも、なんの音沙汰のない現状に、英弘は苛立ちを隠せずにいた。
これまでにも居留守を使われたことの多さといったら……。
郵便の不在通知を出す配達員や役人の気持ちを、英弘はなんとなく理解した瞬間でもあったが。
「おーい! いるのは分かってんだぞ! 早く出て来い!」
段々と荒くなる呼びかけ文句と連動し、ドアを叩く強さも増していく。
具体的には、コンコンから、ドンドン! といった具合に。
「……返事は無し、か……」
また居留守か……と思い、一端離れようかと考えたその時だった。
「もう! 何よ! 今良いところだったのに邪魔しないでよっ!」
出てきたのは美しい女性である。家の扉を開け、険しい表情で英弘を睨む、赤毛でハスキーな声の女性だ。歳は20歳くらいだろうか? スレンダーな体系にやや派手なチュニクとエプロン姿の女性は、顔に絵具を付けたまま仁王立ちする。
エプロンや顔には、様々な絵の具の色がついていた。
「で? アンタ誰」
「あっと、申し遅れました。私は商工監督官のキルク・セロと申します。早速で申し訳ありませんがお宅の商会の調査と記録をさせて頂いてもよろしいですか?」
女性に誰何された英弘は、捲くし立てるように用件を述べた。
いるならすぐに出ろよ。と思いつつも、早く用件を済ませる為、ついつい早口になったのだ。
「ふ~ん? 商工監督官ね……」
赤毛の女性が英弘をマジマジと見つめる。頭の先から足のつま先まで、舐めるかのように。
なんだか品定めされてるみたいだなあ……と感じた英弘は、仕返しのつもりで女性の胸を注視する。スレンダーな体つきに、やや大きめのチュニクとエプロンを着ているが、その胸の大きさは大体わかった。
かなり小振りのAだろうが……なんとなく違和感があるな……、と。
「そういえば最近、パパが言ってたわね……『王都に商人が増えたから、ただでさえ少ない収入が更に減った』って。大方、その商人の監督と調査に来たんでしょ? アンタ」
「お察しの通りで」
素っ気ない返事をする英弘。そんな彼に、女性は何を思ったのか、途端に妖艶な笑みを浮かべ――。
「いいわよぉ。好きなだけ調べていきなさいな」
と、快諾の意を示してくれたのだった。それも舌なめずりしながら。
「うん? じゃあ、早速……」
「ええ。小さい事務所だけど、案内するわ。ウフフ」
女性はそう言いつつ、中に入ろうとした英弘の腰に手を当て、事務所の中へと招き入れる。妖艶に笑いながらだ。
その手が、何故か尻の方へスルリと移動した気がするのは、きっと英弘の気のせいなのかもしれない。
いや、気のせいでなければ、これは妖艶なお姉さんから誘われているのかもしれない!
そんな邪な期待をしてしまった英弘は、期待に胸と股間をパンパンに膨らませるのであった。
「これがウチの会計記録と、こっちが取り扱い物品のリストよ」
「あ、ありがとうございます……」
英弘はドキドキしていた。誰もいない……いや、英弘と赤毛の美しい女性の2人しかいない事務所の席に着き、関係資料を手渡された英弘は、何とか必死に理性を働かせる。
頬を赤らめ、落ち着かない様子の英弘。
エプロンを取った女性は、そんな英弘の初々しい反応を見て微笑みつつ、机の上に腰掛ける。
わざとらしく足を組み替えては、長い丈のスカートから垣間見える生足に、英弘を更に興奮させた。
前世から数えて44年。念願の童貞卒業への期待が、一段と高まったのだ!
「……経営状況は芳しくないですね……仕入れの量が多すぎて捌き切っていないし……」
とはいえ、仕事はキッチリとこなすのが、英弘の真面目な部分であろう。
収支額の規模やその差額を見て英弘は、この商会の会頭はきっと、商売下手なのだろうと勝手に決めつけた。
「そうなのよ。私のパパったら、商売下手なくせに無茶苦茶なことするから、いつも赤字なのよ。お陰で私がその尻拭いしなくちゃいけなくて大変だわ」
そう言って、女性は肩を竦める。
どうやら、この女性の方が商売の才能は豊かなようだ。
「成程ね……そのパパさんが、この商会の会頭で?」
「ええそうよ。今も仕入れに行ってる最中よ」
「いつ頃お戻りに?」
「さあ? パパは優柔不断だからねぇ……」
暫く帰ってこないのか……。
その事実を知った時、英弘はごくりと喉を鳴らす。彼の興奮は最高潮に達しようとしていた。目が血走り、呼吸が荒くなりつつ、女性へと視線を送る回数がそれまで以上に増えたのだ。
当然、女性はその変化を見逃さない。
「ところでぇ……私の名前、言ってなかったわよねぇ」
艶めかしく女性は言う。そして自然な動きで、机の上から英弘の膝の上に座り直した。勿論、英弘の怒張する
女性は彼の首に腕を回し、そっと耳元で囁く。
「私の名前は……クエンコ・デ・ダルコよ」
そしてそのまま、女性は自らの唇を英弘のそれに近づける。当然、女性からの積極的過ぎるアプローチに、英弘は体を硬直させた。
唐突過ぎるそれは、童貞には刺激的過ぎたのだ。
だが――。
「ここでキルクの好きに――」
「ちょちょちょっと待って!」
女性が英弘の唇をむしゃぶりつこうとした、まさにその瞬間だった。
膝の上に載られたお陰で、英弘は重心のバランスを取らざるをえない状態となり、それまで見えなかったものが視界に入るようになったのだ。
具体的には、事務所奥にある、絵画らしき作業場と、その絵画が。
「おいおいおい、嘘だろ……」
英弘は女性を、半ば押し退ける形で膝の上から降ろした。
それまで滾っていた
「もう! 何よ! これからが良いところだったのに!」
英弘の背後から、女性の声が聞こえた。が、そんなのはお構いなしとばかりに、英弘は真っ直ぐにその絵画へと駆け寄る。
絵画の作業場らしき部屋に入り、イーゼルに掛けられたその絵を対峙した。
その絵画は、殺風景な背景に、黒い服を着た黒髪の女性が微笑んでいる絵画だ。
その絵画は、前世では誰もが知っているだろう程の、有名過ぎる絵画だ。
その絵画は、世界で最も知られた、最も見られた、最も描かれた、最も歌われた、最もパロディ作品が作られた絵画だ。
「『モナ・リザ』……」
その瞬間から英弘は、脳内からエロを完全に排除し、冷静な思考能力が凄まじい速度で駆け巡る。
これは誰が描いたのか? クエンコと名乗った女性の顔に、絵の具が付いていた。
だとすれば、書いたのはあの女性? であれば、モナ・リザを知っているということは、女性はもしかしたら――。
「なぁんだ。リザのこと知ってるのね」
英弘の体が、ビクリと震える。そっと後ろへ振り向くと、すぐ近くには女性が立っていた。
クエンコは、もしかしたらギフトかもしれない。
そう思いつつ、英弘は聞かずにいられなかった。
「これ、アンタが描いたのか?」
「私以外にいると思う?」
「……もしかして、アンタもギフトなのか?」
「なんだ、じゃぁあなたもギフトなのね!」
「ああ!
「じゃぁ、ヒデヒロちゃんね!」
妙に会話が噛み合っていないようにも見えるが、2人にとってはこれ以上ない程スムーズに会話が成り立った。
たった数回のやり取りで、お互いがギフトであることを知ったのだ。
ただ、英弘としては、クエンコの正体が掴めずにいた。
『モナ・リザ』を描いた偉人、レオナルド・ダ・ヴィンチは……男だ。だが、目の前にいるのは女性である。彼女が描いたとするなら、それはレオナルドより後に生まれ、絵画の才能を持った女性なのだろう。と、英弘は結論付けたのだが……。
バッと作業室へと顔を向け、英弘はその部屋の中を注視する。
そして気付いた。
「あっ! これダ・ヴィンチの『受胎告知』じゃねえか!」
作業場の中に入った英弘は、その作品の数々を目の当たりする。
「こっちは『岩窟の聖母』! あれは『荒野の聖ヒエロニムス』! ダ・ヴィンチの作品がこんなに! これ全部アンタが……」
そして、クエンコへと振り向いた際、英弘の表情は驚愕に彩られた。
作業場と事務所の境となっている壁一面に、大きな下絵があったからだ。
その絵画の下絵は、前世で見た実物大のそれの半分ほどの大きさであったが、それでも英弘は、それが何の絵画かすぐに分かった。
「『最後の晩餐』……」
英弘は涙した。これほど細部までこだわって再現された下絵は、初めて見る。
それも、偉人マニアの英弘が一番尊敬する偉人の、その絵画の数々が、生まれ変わった今、また目の当たりにすることが出来たのだから。
「気に入ってくれたのね。うれしいわぁ」
「ああ……」
感動で半ば放心状態の英弘の腕に、クエンコがその腕を絡めてきた。
それを生返事で返す英弘だったが、続くクエンコの言葉により、その思考の霧が一瞬で晴れることとなる。
「私の作品、知ってくれてるみたいだけれど――」
「『私の作品』? アンタの? 前世の?」
「そうよ。前世で私が描いた作品よ。メディチ家やボルジアの下で働くこともあったけれど、やっぱりフランソワ陛下の下にいる時が一番楽しかったわ」
「うん? メディチ? ボルジア? フランソワ……?」
どういうことだ? 英弘は混乱せずにいられなかった。
何故ルネサンス期のイタリア、フランスの元首らの名前が出てくるんだ?
そんな疑問が英弘の頭の中を支配する中、先程クエンコが言った言葉を思い出す。
『なぁんだ。リザのこと知ってるのね』……モナ・リザの絵画を発見した時に彼女が放った言葉だ。さも、そのモデルの女性と知り合いだと言わんばかりに……。
英弘は、自らの腕に絡みつくクエンコへ、そっと視線を送った。
そういえば、コイツの
「……あんた、一体誰なんだ?」
問わずにはいられない。勿論、その問いは
理解した上で、クエンコはクスクスと笑いながら告げる。
「分かってるくせに~。私の
嘘だ。と、英弘は咄嗟に判断した。
きっと、ダ・ヴィンチ好きの女性に違いないと。
こんなにも妖艶で、綺麗な女性が、あの”万能人”、レオナルドダ・ヴィンチなわけがない。ダ・ヴィンチは、男だったはず――。
と、そこまで思考し、英弘は肝心な事実を確認していないままだということを、今になって気付く。
「……アンタ、男……なのか?」
「そうよ」
「この空間には、今男が2人いるってことで、いいのか?」
「そうなるわね」
恐る恐る問い質す英弘。答え如何によってはセクハラとして訴えられそうな質問だ。しかしそんな英弘に、クエンコ――もとい、レオナルドは、あっさりと答えた。
ハッキリとした回答を得ても、英弘の混乱は収まるどころか更に悪化するばかり。
目の前にいる女性が……俺の腕に絡んでいる女性が……男? それも、あのレオナルド・ダ・ヴィンチ!?
きっと何かの間違いだ。この女は俺を騙しているんだ! と警戒感が英弘の頭の中で警鐘を鳴らす。
「疑っているようだから、証拠見せたげるわ!」
そう言うなり、レオナルドは英弘から離れると、スカートをたくし上げた。
警戒感を露わにしていた英弘は、この突然の行為には流石に驚き、手で視界を遮ろうとする。実際には指の隙間から凝視していたが。
「いや、ちょっと、何して……」
「ほら! 見なさい!
「待て待て待て――へ?」
スカートの下から見える下着を、レオナルドは強引に下ろした。
そこには、立派な
それをマジマジと見つめてしまう英弘。
第三者から見れば、異様に見える光景だろう。
この時英弘は、幼いころの記憶を呼び起こしていた。それは、父アルクやセルクと共に入った風呂での記憶だ。アルクの
そして、目の前にそんなものをブラ下げている女性――もとい、男性は……本人が告白した通りの人物であると、英弘は遅まきながら理解した。
「あなた、初めて会った時からサライに似てるって思ってたのよねぇ……」
「……へ?」
レオナルドの言葉に、英弘は彼女――もといレオナルドの顔を見やる。
レオナルドは、恍惚の笑みを浮かべて舌なめずりしていたのだ。まるで、獲物を前にした肉食獣の如く。
「あ、いや、その……」
ことここに至って、英弘は先ほどまでのやり取りを思いだした。
筆おろしに期待し、レオナルドの生足に興奮し、
いや、そんなことを思い出している場合ではない。何故なら、今まさにレオナルドが目の前まで迫って来たからだ。
「あなた、まだまだ若いけれど、私が今から
「いや、あの、俺そんな趣味ないんで!
庭に咲く、一輪のバラが、その花びらを1枚ハラリと散らしていった。
それと英弘の叫び声にどんな関係があるかはわからない。
ただ一つ言えるのは……レオナルドは、オカマだったのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
―レリウス歴1586年7月同日夜
パノティア王国、王都ルナ、王宮の会議室―
いつもの会議室には、
坂本英弘、豊臣秀吉、栗林忠道、ウィリアム・フレデリック・ハルゼー……そして、レオナルド・ダ・ヴィンチ。その5人が。
「で、そ奴を連れ帰ってきたと?」
「ええ、まあ……そういうことです……」
当然、5人目のギフトを連れ帰ってきたのは、やつれた姿の英弘である。
秀吉らほかのギフトを集め、事情を説明したのだ。
英弘曰く、あの後、何とか
帰ってきたダルコ商会の会頭であるレオナルドの父に対しても、是非を伺った。
当初は渋られたものの、レオナルド自身が乗り気だったことと、王国によるダルコ商会の保護を条件に、話はまとまったのだったのだ。
「クエンコ改め、レオナルドよ! よろしくねぇ!」
屈託のない笑みで手を振るレオナルド。
それも皆、レオナルドよりも後の時代に生きた人ばかりだ。後世の科学の進歩がいかなるものか。彼はそれを知りたくて堪らなかったのである。
「よろしくね、っつってもよ……」
「なんか、僕達の聞き知ったダ・ヴィンチ像と待ったく違うのだけれど……」
「こんな別嬪が、まさか男とはのう……言うとくが、儂には衆道の気はないぞ」
「あら、勝手に失望されるなんて、失礼しちゃうわぁ」
レオナルドは口をへの字に歪める。遺憾だと言わんばかりの表情でそっぽを向く姿は、やはり女性にしか見えない。英弘は、実は騙されているんじゃないのか? と1人疑心暗鬼になっていたのだった。
「お主が絵を描けるのは分かった。ほかに何が出来る?」
挑むような面持ちで秀吉が問う。秀吉としては、レオナルドに何が出来て、何が出来ないのかを知りたかったのだ。
「そうねぇ……」
レオナルドは、まず意味深に独り言ちる。そうやってもったいぶりつつ、考える素振りを見せた。
そして挑発的な笑みを秀吉に差し向け――。
「音楽、解剖学、生理学、天文学、物理学、数学、建築学、幾何学、光学、動植物学にその他もろもろ。色々噛り付くしたわ」
自慢するかのように答えた。
”万能人”としての才能は伊達ではないのだ。
「武器、兵器の開発は出来るかい?」
「もちろんよタダミチちゃん。そういうの、私、大得意!」
「じゃあよ、船の設計はどうだ?」
「船の設計も天才的だから任せなさい。ハルゼーちゃん!」
レオナルドは絶対の自信を持って答えた。それほどの自信と知識が、彼には備わっているのだろう。
ここにいる誰もがそう感じたし、レオナルド自身、要望に応えられる自信があったのだ。
英弘は改めて、レオナルドを仲間として迎え入れられたことに歓喜した。
歴史上類を見ない程の偉人に出会え、そして同じギフトとして肩をならべられることに、英弘は歓喜したのある。
それだけではない。これで軍事、政治的分野だけでなく、芸術や科学分野でもパノティア王国は発展するだろう。そういった打算的な歓迎も、頭の隅では行われていたのだった。
事実、レオナルドを召し抱えたパノティア王国は、様々な技術的、科学的発展を見せるのである。
過去、ヌーナにエジソンというギフトがいたことも、大きな一因であろう。
それを勘案したとしても、レオナルドの貢献は計り知れない
それほどに、レオナルド・ダ・ヴィンチという”万能人”は、パノティア王国に大きく貢献していくのであった。
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