第2話その後
「睦っくん!急いで!」
「わかってる!ちょっと待てよ!」
睦月が急いで部屋を出ると、既に車にエンジンをかけて出かける準備を終えた皐月が頬を膨らませて助手席で待っていた。
「遅い!」
「悪い悪い」
睦月は運転席に座ると
「じゃ行こうか」
隣の皐月に微笑むと…
「うん!」
笑顔の皐月にホッとすると車を走らせた…
無事目的に到着すると…
「じゃ…また後でね」
皐月がバイバイと手を振り笑顔で建物に入って行った…。
車を停めて睦月も建物に入ると…
「高橋様、こちらにどうぞ」
綺麗な女性に案内されて通された部屋で用意を済ませると一人にされ窓を眺める…
「やっと…」
(やっと…この時が来た…)
思わず声が漏れる…
睦月は感傷深げに一人の時間を過ごしていた…すると…
「高橋様…ご準備が整いました。こちらへお願い致します」
先程の綺麗な女性に案内されて扉の前に立つと…
「本日は大変おめでとうございます。今日と言う日がお二人に取って特別な日となるよう…精一杯努めさせていただきます」
そう言うと目の前の扉を開いた…
「お父さん?大丈夫?」
皐月が隣に立つ父親の顔を覗き込むと…
「だ、大丈夫だ、!」
声が上擦る…
(全然駄目じゃん…)
「ちょっと!しっかりしてよ!途中でコケたりでもしたら一生笑われるよ!」
「わ、わかってる!」
「大丈夫かなぁ…」
皐月が心配そうに父親を見ていると…
(そうだ!)
「そんなんじゃお兄ちゃんが心配しちゃうよなぁ~」
皐月の一言に…
父親はグッと顔を引き締めた!
「大丈夫だ!そんな事にはならん」
「ふふ…ならいいけど」
皐月は父親の様子にホッとすると扉が開くのを待った…
「おめでとう~」
「おめでとうございます!」
「幸せに!」
睦月と皐月は今日結婚式を挙げた。
会場を移し、披露宴会場に登場すると…招待客からお祝いの言葉を贈られる。
壇上にあげられ…滞りなく式が進んでいく…会社の上司のお祝いの言葉…友人代表挨拶…歌でのお祝い…みんなからのお祝いに皐月は嬉しそうに笑顔が零れていた…。
(よかった…んだよな…)
睦月はそんな様子の皐月を見つめていた…
(葉月…俺今日、皐月と結婚するぞ…お前は許してくれるかな…)
睦月はスっと空を見上げると
「続きまして…新郎新婦様のご友人から祝電を頂戴しておりますので、ご披露致します」
司会の言葉に視線を戻すと
「睦月、皐月結婚おめでとう。大切な二人の結婚すごく嬉しいよ!睦月はなかなか煮え切らないところがあるから皐月のハッキリとした性格にきっと合ってると思う」
どっと笑いが起きる
「本当は間近でお祝いしたかったけど…遠くからごめん、睦月これからも皐月を守ってやってくれ…」
(あれ?こんな祝電あったかな?)
司会の人か読み終え名前を確認すると…
「睦月の一番の親友より」
パチパチパチ…
拍手が起きる。
「すみません…名前が…」
司会者が祝電を端から端まで眺めるが…何処にも名前が書いてない…
申し訳なさそうに新郎を見ると…
睦月は呆然と立ち尽くしていた…その瞳からは涙か流れている。
皐月が心配そうに…
「睦っくん?大丈夫?」
袖を引っ張ると
「あっ…ごめん大丈夫…びっくりしただけだよ…」
睦月が椅子に座ると…
「睦っくん…涙…出てるよ」
皐月がハンカチを渡す。
「さっきの祝電の人…誰かな?私達の共通の友人はみんな招待してるよね?」
皐月が首を傾げると
「睦っくんの親友で私の事も知ってる人…いたっけ?」
「ああ…1人だけいる」
睦月が答えると
「呼ばなかったの?」
「呼べなかったんだよ…でも…良かった一番お祝いして欲しかった奴だから…」
睦月が嬉しそうに笑うと
「ふふ、良かったね!じゃその人の言葉通りこれからもずっと守ってね」
「ああ、改めて誓うよ」
睦月と皐月はテーブルの下で手を繋ぎあった…。
(葉月…ありがとう)
誕生日の奇跡 三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5 @nawananasi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます