第29話 政策の相談
えらいことになってしまった。
それが当選した時のいつわりない本音だった。
今まで町長になろうとしたことなどないため、いざ当選してしまうと何をすればよいのかまったく分からない。
それでも適当に頑張るふりをすれば、なんとかなるかもしれないが、それでは町の振興を切に望み託してくれた森田元町長や町のみんなの願いをないがしろにすることになる。
当選したその日から家で、あーでもない、こーでもないと悩んでいた私に 様々な人が会いに来た。
町議会議員たちは当然のことだが、役場の人たち、街に店を構えている人たち、町で多少なりと影響力を持つ人たちみんなが来た。
そしてそれぞれ自分たちがして欲しいことを言って帰って行く。
みんな私が素人で、特に町の運営に関して強い意見を持っていないことを知っているから、今のうちに自分たちの意見を吹き込んでおきたいのだろう。
私も何も分かっていないので色々話を聞けるのはいいのだが、それぞれ自分たちの都合のよい方向へ色を付けた話をするので何が本当なのか分からなくなって来る。
このままではみんなに流され、しっかりと筋の通った町の運営は出来ないだろうし、どうすれば町を発展させられるのかも見えてこない。
何日か頭を悩ませた挙句、結局は
『お父さんがやりたいことをサポートするから思ったようにやっていいと思うよ。ただ、一つだけ六月議会で提案してほしいの』
珍しく頼み事かと思い、プリントアウトしてくれた提案を見たが、私には理解できなかった。
「
『そうだよ。まあ、一時借入金と地方債を使ってるから分かり難いけど、結局はお父さんの言った通りほぼプラマイゼロになる予定』
「うーん、それじゃ意味ない気がするけど、まあ
『ありがと、全力でサポートするから大丈夫』
私はまだこの時、「全力でサポートする」の意味を正確には理解していなかった。
ただ、娘を連れて登庁していたので、町長室の片隅を仕切って作ったスペースで大人しくしていてくれる程度に考えていたのだ。
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