予兆

第1話 大きな頭

「大きな頭ですね」

思えばきっかけは何気ないその一言だった。


もともと生まれる前から頭が大きいことは分かっていたし、周りの人がその事に気が付くことも頭の中では分かっていた。


それでも大丈夫だ。

そんなことは娘が健康でいてくれれば些細なことだと、自分自身に言い聞かせていた。


それなのに面と向かって言われた瞬間、私の心は折れてしまった。


確か近所の公園だったと思うが、それが誰だったのかすら覚えていない。

多分近所のおばさんだろう。

娘はまだ6カ月ぐらいの頃だった。


それを覚えているのは成長の遅い娘の首がようやく座り始め、外に連れて行けるようになったからだ。

それまではあまり外出をしていなかったし、出かける時はベビーカーに乗せて頭が目立たないようにしていた。


悪意はなかったのは分かっている。しかし、その一言がきっかけで娘を外へ出すことに関し極端に奥手になってしまった。

もはや引きこもりと言ってもいい。

0歳にして引きこもりとはやるせない。


いや、引きこもっているのは私だから大丈夫か。

娘は私の引きこもりに巻き込まれているだけだ。


そして、この引きこもるという選択がその後起こった多くのことを引き起こしたことは確かだ。

しかし、この時の私は知る由もなかった。







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