第7話 取ってきた魔物の肉でお料理

 先生から聞きたい事を聞き終えたアキトが戻ってくるのに合わせる様に、ナオミとアミが声を掛けてきた。


「あんたたち、やるわね。大量じゃない!

 けどムーンラビットか。いつでも手に入るしそっちはどうでもいいわね。

 こっちのジャイアントバットの方が断然楽しみだわ」

「いや、コウモリ肉は微妙じゃないか?

 流石に俺が料理したムーンラビットの方がまだマシな結果になると思う」


 うん。コウモリは美味しくないって聞いた事あるし。

 なんて思って呟いた発言だったが、どうやらナオミのプライドを擽ってしまったようだ。

 彼女は鋭い目でこちらを睨み「そう、じゃあ勝負よ!」と言ってビッと指をさした。


「待て待て待て」と、お断りを告げようと思ったのだが「勝負って言うからには何か賭けるんだよな?」とヒロキが間に入って来た。


 おい! 俺は断るつもりだったんだが?


 ヒロキを引き寄せて止めろとアピールするが「お前の言うとおり、コウモリ肉は最悪だと俺も聞いたことがある。勝てる勝負を捨てるな。お前の望みは叶うんだぞ?」と悪魔の囁きを告げる。

 ついついナオミのグラマラスな胸に目が行ってしまう。


「そうね。料理勝負なら私が負ける事はありえないし、何でもいいわよ。

 そっちに決めさせてあげる」


 なんだとっ!?

 ……いや待て待て。罠に嵌ってはイカン。何だこの悪魔の囁きタイムは。

 うーん……何がいいかな……間違ってもエロい事なんて言えないし……


 ああ、そうだ。

 技術を分けて貰おう。


「んじゃ、俺が勝ったらお前の料理を教えてくれ」

「……えっ!? うん。いいけど……それでいいの?

 あんたら男って作る方は興味無いんじゃないの?」

「俺も作る方だからな。料理得意なんだろ? 一生ものの技術だし悪くない」


 実は俺も料理するの結構好きなんだ。

 母さんは生きていた頃は料理を作ってやるといつも喜んでくれていたからな。


「そ、そうよね!? うん。貴方わかってるじゃない!

 なら賭けはしなくていいわ。どっちにしても教えてあげる。

 今回は勝負じゃなくてあなたがどれだけ出来るか見てあげるわ」

「おっ、ホントか? 助かる!

 折角Aクラスの部屋使えるんだ。料理しなきゃ勿体無いもんな」

「そう! そうなのよ!

 あの調味料の山を見て、昨日の入寮準備で食材を持ち込まなかった事を後悔したくらいよ」


 何てナオミと盛り上がっていたら、隣でアミがユリになにやら交渉を持ちかけていた。


「ねぇ、余りそうならラビットの肉分けてくれないかな?

 何か出来る事があればお返しするからさ」

「そのくらいでお返しなんて要りませんよ。

 あの程度の階層なら直ぐに取りにいけますから。

 それよりも私はあの二人の対決の料理をたべたいです」


 お、当然俺はオッケーだ。

 寧ろユリにならご馳走してやりたいくらいだし、声掛けておこう。


「二人も普通に混ざってくれていいからな。

 それよりも問題はどこでやるかだ。寮に女子生徒連れ込めるのか?

 ダメならどこか場所借りるのか、部屋で作ってお弁当にするとかを考えなきゃだからな」


 全員に相談するように問い掛ければ、アミが一番に声を上げた。


「あ、確かにね。じゃあちょっとヒロキ、先生に聞いてきて!」

「はぁっ!? ちっ、何で俺が……」


 と言いながらも素直に聞きにいくヒロキ。やはりなんだかんだ言っても妹は可愛いのだろうか?

 視線を送っていれば簡潔に聞いて直ぐ戻ってきたヒロキがアミを通り越してナオミに話しかけた。

 アミが「ちょっと、何でそっち行くの」と裾を引っ張っている。

 やっぱり仲良しなんだな。

 

「ああ、入っても大丈夫らしいぞ?

 ただ、男が女子寮に入る場合は女子の方から寮母さんに申請が必要になるらしい。

 女が男子寮に入る場合はそのまま入れるけど何かあっても自己責任になるってよ」


 ナオミが首を傾けながらじっとこちらを見つめる。恐らく、どっちの部屋にしようかって事だろう。


「出来れば女子の部屋の方がいいな。男子寮にいるのは同学年だけじゃないし。

 何かあっても師匠なら勝てるとは思うけど、目を付けられても困るからな」

「もうっ……みんなの前で師匠は止めて下さいよぉ」

「あはは、何そのイチャつき方。新しいね!」

「イチャついてません!!」


 なんてアミの突っ込みに笑って居れば、いつの間にか場所は彼女の部屋に決まっていた。

 場所を提供するから食わせろという事らしい。思ったよりも律儀だな。

 確かにナオミは料理するし、俺たちは肉をゲットしてきたのだから妥当と言えば妥当なところだ。


「おーい、お前ら解体実習室はこの建物の中だ。さっさと持ってこい!」


 先生からの呼び出しを貰い、荷車を走らせると生徒全員からの視線を浴びた。


 どうやら俺たちの取引を実際に見せて皆にやり方を教える様だ。

 渡した素材の内訳を聞き、解体手数料と売り物になる場所の金額などの数字が並べられていき、差し引きした合計値の半額がその場で支払われた。

 買取に出したのは四羽だ。一人一羽と考えれば分けやすいし、二羽は損傷が激しいので自分達で処理しようという事だ。

 因みに、コウモリなどの途中で戦った魔物は取れる素材は無いそうで置いてきた。魔石は吸収してしまったからこれが全てだ。

 ちなみにナオミは実習で倒した蝙蝠の肉を自分で解体して持ってきているらしい。


 豚に近い大きさ二羽は多いだろうが売れない物は仕方がない。

 冷凍庫があるのだから保存は利くし、今日は焼肉パーティーの予定だから丁度いいだろ。


 そう思っていたのだが、予想外に多かった。

 解体されて出されたのが百二十キロ。四人で分けても三十キロだ。

 食料品に限り、売らない場合は好きにして良い様なので希望者にはお裾分けして量を減らしてから分配した。

 そこまで完了したら先生から今日はここまでだと伝えられた。

 オーウェン先生は『この分配が終わるまでがハンターの仕事だからお前たちは最後までしっかりやれよ』と声を掛けて学院の校舎へと戻って行った。




 俺たちは一度解散して、各々一度部屋へと戻ってから再び集合する事になった。

 お肉を冷凍庫へとしまい、風呂ですっきりしたらラクを抱えていざ出発だ。


 女の子の部屋か……

 だが、所詮は昨日入寮してまだ一日しか使ってない部屋だしな。

 いや、前回も女の子なのだからあるいは……


 おっと雑念が。


 などと考え事をしながら女子寮に入ろうとしたところで、女子寮入り口でモジモジしていたヒロキとアキトがサッと俺の斜め後方に付いた。

 まあ、女子寮に入っていくなんて思春期の男子には高いハードルだからな。

 いや、俺もキツイけど……


「おい、せめて隣に付け!」と俺は若干スピードを落として並ぶ。

 そして寮母さんに声をかけた。


「一年のルイ、ヒロキ、アキトの三人なんですが、アミの部屋に呼ばれてるんですけど……」

「ええ、聞いているわ。料理対決するんですってね?」

「はは、どちらかと言えば教わりに行く感じですけどね」


 と、和やかな感じですんなりと通して貰えた。

 部屋番は聞いている。作りも番号の振りも一緒だから迷う事はなさそうだ。

 俺たちはおっかなびっくり歩を進めなんとかアミの部屋へとたどり着いた。


「おーい、来たぞー」


 コンコンとノックをして声をかける。

 ポストの穴から中を覗こうとするヒロキをそれはいけないと引き留めていれば、間を置かずして戸が開いた。


「やっと来たわね。さぁ、早速下準備に入るわよ!」

「おう。これだけの人数分作るのは初めてだな」

「何言ってるのよ。六人分なんて楽勝じゃない!」


「ほら、早くしなさいよ」と若干はしゃぎ気味なナオミに引かれてラクをゲージに入れてそのままキッチンへと向った。もう既にユリも寛いでいてアミと雑談している。

 なんかこんな風に皆に料理を作るなんて不思議な感じだな。


「じゃあ始めるわ。先ずは肉に塩を揉みこんで置きなさい。

 それからこのスパイスを刻んで――次はこれよ。酸味がいいアクセントに――」


 と、彼女の怒涛の指示に必死に付いて行き、どんどんといい匂いが漂っていく。

 あ、これ絶対旨いやつだ、と確信を持てる匂い。

 そう言えば、コウモリ肉はどうしたのだろうと思い尋ねてみたら、そっちは初めて使う食材なので調整に時間が掛かるから、先ずは腹ごしらえを終わらせたいらしい。

 ガチの料理職人だった。


「あぁ肉だけってのも寂しいな。訓練場にある商店で何か買ってくれば良かった」

「商店っ!? ま、待ちなさい! 何よそれ、聞いていないわ!」


 いや、そもそも聞かれてないし。責める様に問い掛けるナオミに「落ち着け」と言葉をかけつつも、説明した。

 半分以上雑貨屋だが、食材も置いている商店が学院内にある事を。


「まあ、今日は仕方ないよな。元々お肉料理勝負から始まった訳だし」

「そうね。新しいお肉が手に入った日はまたこうして集まって料理することにして、商店の食材を使うのは次回にしましょ。場所が無ければ私の部屋を提供するわ」

「おう。俺もこういう空気は嫌いじゃない。料理も覚えられるし助かる」


 うん。どっちにしても夜は料理しなきゃまともなもの食えないんだから、毎日でもいいくらいだ。

 まあ、それは流石に迷惑だろうから言わないけども。

 てかあいつらは何してんだろうとカウンター越しに様子を伺ってみれば、ほっこりした顔で魔獣のゲージに四人ならんで手を入れている。

 和んでいるようで何よりだ。

 それにしても、女子寮と言っても代わり映えしないな。

 アミの部屋だからもっと女の子女の子してるかと思っていたんだが……

 軽くキッチンの中を見渡してみれば、バーベキューセットが目に付いた。


「あっ、これ使わないか?」

「え? 部屋の中で使う気?」

「あー、そうだったぁ……」

「うん。気持ちはわかるわ。私も炭火を使えるなら使いたいもの」


 だよなぁ。と手に持った炭を元の場所に戻した。

 だが、ここにあるって事は使える場所があるって事だろう。今度寮監さんに聞いてみよ。 


 そして、彼女の指示に従い続ける事三十分。漸く料理が完成した。

 彼女は盛り付けにもきちっと拘るようだ。まるで高級な料理店の皿の様になっている。

 レアで仕上げたウサギ肉にドレッシングを掛けたものや、こんがり焼いて特性の酸味の効いた塩たれで味付けしたもの、他にも四種類ほど作った。

 早く味見をしたいものばかりだ。


「さあ、出来たわよ」

「ほら、取り合えず手洗って席に付け!」


 皿を並べながらそう言えば、皆サッと台所に言って直ぐに戻ってきた。


「やっとできたの!?

 こんなにいい匂いさせてこんなに待たされるなんて拷問だよぉ」

「ええ。空腹時にこれは効きました」 


 やっと最後の皿を手にとってテーブルに運んでみれば、俺の席が無かった。

 いや、当然だろう。そもそも備え付けの椅子は四つしかないのだ。

 あぶれたもう一人に目を向ければいつまでも魔獣と戯れていたユリだった。

 ちらりとこちらに視線を向けたので、小さく頷き二人分の椅子を作って席に付いた。


「おお、そんな高級そうな椅子まで作れんのかよ。

 いやー、お前ホント便利だよな。家に置いておきたいわ」 

「おい、人を道具みたいに言うな! 今の所俺を使って良いのはハンターの師匠であるユリと料理の先生であるナオミだけだ」

「ほら、そんなことより食べるわよ。冷めたら味が落ちるでしょうが!」

「お、おう」


「「「「いただきまーす」」」」


 そして、料理に手を付けた俺たちは無言になった。

 運動後で空腹、そしてプロ級の料理である。味わいながら黙々と食べるしか道が残されていなかった。

 そして、全員が満足して食べるペースが遅くなってきた頃、丁度料理が無くなる。

 何この料理人、量の調整まで完璧とか凄すぎる。

 俺は食べ終わった直後、思わず呟いた。


「もうあれだな。パーティーに料理人枠を作るしかねぇな」

「「「「それだ!」」」」

「ま、まあ、一緒に組みたいって言うなら入ってあげなくもないけど……?」


 ナオミは少し顔を赤くしてチラチラとユリに視線を送っている。

 そう、なんだかんだ言っても俺たちがパーティーを組むとなればリーダーはユリだ。入試試験も学年トップでダンジョンにも魔物にも詳しい。

 まあ、基本的に気弱な所があるからリーダーには気質が少し合わない感じもするが、それでも今日の感じを見る限り問題無くやれていた。


「え? 私が決めるんですか?」


 そのユリの言葉に全員が頷き「どう考えてもリーダーはお前だろ!」とヒロキが断言する。

 そして再びユリに視線が集まる。


「では、この六人で組みますか? 男性陣の実力は大体見させてもらったので、後は仮に補助職だけでも十分やれそうですし」

「へぇ、ユリちゃんにおんぶに抱っこで倒してきた訳じゃないんだ?」

「いえ、最初から一切手を出していません。私がしたのは索敵だけですよ」


「「えっ!?」」


「でもやれそうな数かどうかまで調べて貰えたし、魔物も余り強くなかったよね」

「ああ、ムーンラビットは突っ込みが激しいっつぅか多少やり辛く感じたけど、それでも普通に倒せたな。一番焦ったのはルイの魔装だわ」

「ああ、わかる。凄い音だったしね。あれは僕も度肝を抜かれたよ」

「ええ、私も驚きました」


 皆の頬が若干、引き攣っている気がするので「……わるかったよ。あれはもう使わない」と約束した。


 俺も血まみれにさせられたし、かなりグロかったのだから気持ちはわかる。

 うん。素材も売れなくなるしチェーンソーは一先ず封印だな。


「ええー、何それ! 気になるんですけど!」

「グロいぞ。血が吹き出して肉がぐちゃぐちゃになる。そんな武器だ」

「うへ……じゃあいいや」

「そうね。肉が台無しになる武器はダメね」


 そうなると新しく考えないとダメかな?

 いや、普通に剣技を習得する方向で行ったほうがいいのか?

 うーん……

 でもヒロキやアキトの動きを見る限り、どう見ても一番弱いの俺なんだよな。

 なんていうか、身体能力強化を使う前提で動けてるっていうか……それ以前に強いというか……

 こいつらは普通にその速さに頭が付いていってるんだよな。


「どうしたですか、そんなに難しい顔して……」

「いや、強くなりたいなってさ」

「あらあら? ルイ君はユリちゃんゲットの為に最強を目指しちゃうのかな?」


 いや、そもそも狙える立ち位置にいねぇから。

 ユリが無駄にあわあわしてなんか可哀そうな事になってるじゃねぇか。

 手を横に振ったり両手で頭を抱えたりジタバタしている様はとても愛らしい。

 女性的な意味ではなくユルキャラ方面で、だが。


「止めろって……

 俺、この三人と比べたらネタ枠だと言われてもおかしくないくらい弱いんだよ。

 せめてヒロキたちには追いつかねえと仮に最強目指すなんて言っても笑い話にもならねぇっての」


 こんな事はいいたくないが、パーティーを組むと決まったのなら知っておいて貰わないと困るので無理に伝えたのだがアミは「そ、そうなんだ……」と気まずそうに視線を逸らした。

 その時、ユリが何か言いたそうな顔で顔を上げたが、先に口を開いたのはナオミだった。


「そう。でも気にする事はないわ。胸を張りなさい。

 貴方は他の皆が行っていない三階層の魔物を一人で一匹は倒しているのでしょう?

 それなら評価は稼げるもの。追いつく為に使える時間は沢山あるわ」


 ……ナオミがこんな風に言ってくれるとは思わなかった。思わず目を見開いて見つめてしまった。


「あ、ああ。ありがとな。俺、頑張るわ」

「ええ。そうしなさい」


 うん。なんかいい感じにヤル気出てきた。

 けど、何すりゃいいんだ?

 そう思っていたら、ぐいっと腕の裾を引かれた。

「どうしたんだ?」と隣に座るユリに視線を送れば彼女は目を逸らして少し焦った風に口を開いた。


「じゃ、じゃあ特訓ですね。ルイ、次は何時にしましょうか?」

「ああ、それな。授業の予定がわからんから如何したもんだか……」 

「ちょーっと待った。それ、俺も参加させてくれよ。教えてくれるんだろ?」

「そうだね。是非ともあの約束は守ってもらわないとね」


 いや、その前に時間の予定が立てられないって話をしてんだよ。


「そういえば先生が言ってたけど、最初の半年は座学に出ないとダメだけど午後は自由らしいよ。ダンジョン潜って稼いできたお金が評価に繋がるんだってさ。

 自信ない人だけが先生と一緒に行動すればいいみたい。

 解体とか戦うスキルとかそういった技術の習得は個人で好きにやればいいって」


 なるほどな。確かに結局の所ハンターって魔物倒してお金稼いでなんぼだもんな。

「ナイス! そんな情報待ってた」とアミに伝えれば、さっきのを気にしてたのか少し安堵したように控えめにピースサインを返してきた。


「そうですか。ではどちらを先にやりましょうか?

 ダンジョン探索で魔力総量を上げるか、修練場で魔法習得や戦闘技術を磨くのか、どうしますか?」


 ユリの問い掛けに、皆が皆どうするうと視線を彷徨わせた。


「ユリはどう思う?

 パーティーとしてどっちを先に補うべきかな」

「それは当然、戦闘技術の方ですよ。

 ただ、一刻も早く金銭や評価が欲しい方も居るかなと提案に出しただけです。

 そちらからでも少し遠回りになりますが出来ない事はありませんし」


 どうやら戦い方に悪い癖がつく可能性を懸念しているようだ。

 命が掛かって居るのだから、ある程度自分の戦い方が形になるまでは本格的に潜るべきではないとユリは言い切った。

 であれば、答えは決まっている。


「なら、頼む。出来るだけ弱音は吐かないから、全力で鍛えてくれ」

「いや、男なら言い切れよ。出来るだけとかいらんから」

「ヒロキ、いいの? 自分もなんだよ?」

「仕方が無いわね。私も参加してあげるわ」


 こいつら、会話のキャッチボールをする気がねぇ……

 アキト、頼むからまとめて?


「それじゃ、明日の午後は個室を借りて特訓って事で決まりだね。

 ただ、メインはルイの戦力アップだから、僕らは魔法さえ覚えられればダンジョンでも良いか」

「あ、ルイの習得速度は異常ですから一つの魔法習得に数ヶ月は見てくださいね?」


 いや、そんなにはいらねぇだろ。と思っていたが、ヒロキが「俺、実は……身体能力強化の魔法、習得に一年以上掛かったんだよな」と呟いた。


 元ハンターの母親に魔法陣を見せて貰いながら出来ない事を続けるのが苦痛で仕方がなかったと語る。


「ならお前らも俺みたく専用装備を作る為に魔力をこねくり回す所から始めたらどうだ。

 お前らが便利だって言ってたことを自分で出来る様になれるぜ?」


 と、俺としてはナイスな提案をしたつもりだったのだが、何故か不評で「それはいいよ」と流されてしまった。解せん。


 そんなこんなで第一回、ナオミのお料理教室は終わりを告げた。

 最後に皆で美味しかった。ごちそうさまとナオミに伝えたら、彼女は「まぁ、美味しいのは当然ね?」と嬉しそうにツンツンしていた。

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