第100話 ヘビ 2回目

 金田一

「はい、次は誰かな?」


 司会

「次はヘビですね。2回目になります。それではヘビさんどうぞお入り下さい」


 ヘビ

「こんにちは、今日はよろしくお願いします。前回は『蛇の道はヘビ』でお世話になりました」


 司会

「こちらこそ。よろしくお願いします。早速ですがヘビさん、今日は何を提訴されますか?」


 ヘビ

「はい、是非『夜口笛を吹くとヘビが来る』を提訴したいです」


 司会

「これは子供に対してよく使いますね。なかなか寝付けない子供が口笛を吹いている時にに『こら!ヘビが来るからやめなさい』とよく言われたものです」


 ヘビ

「やはり司会さんも言われましたか?」


 司会

「はい、おばあちゃんによく言われました」


 ヘビ

「で、その後実際にヘビは来ましたか?」


 司会

「いや、一回も見たことがありません」


 ヘビ

「ですよね。実は我々もそんなに暇じゃないんですよ」


 司会

「といいますと?」


 ヘビ

「実は我々ヘビは夜行性の動物なんです。すなわち昼は寝ていて、夜に起き出して獲物探しをします。まあ人間でいう夜勤専門ですね」


 司会

「なるほどヘビさんや多くの爬虫類が夜行性というのは聞いたことがあります」


 ヘビ

「ですから大勢の子供たちが口笛を吹いているからと言って、ノコノコ出かけるような時間も暇もないんです。そもそも子供たちの前に現れても私たちに何のメリットもありません」


 司会

「なるほど、よくわかりました。という事ですが金田一先生よろしくお願いします」


 金田一

「はい確かにヘビさんがおっしゃるように、多くのヘビは夜は非常に忙しい動物なんですね。太陽が昇る前になんとか獲物を仕留めなければなりませんから死活問題なんですね」


 ヘビ

「そうなんです。ほんとに大変なんですよ」


 司会

「それでは、なんで口笛を吹けばヘビさんが来ると言われるようになったんですか?」


 金田一

「今でもインドの蛇使いは、笛を使って蛇を操ります。昔その光景を観た人が『笛を吹くと蛇が操れる』→『口笛を吹くと蛇が集まってくる』といわれるようになったそうです」


 司会

「しかし夜に限定されたのは何ででしょうか?」


 金田一

「はい、口笛が夜に限定されているのは夜更かしする子供の躾の意味合いが強いですね」


 ヘビ

「日本にいる子供の数っていうのは何千万人といますよね。いちいちその子たちが口笛を吹いただけで我々が行く事は物理的に不可能です」


 司会

「あちこちから口笛が聞こえたら、移動も含めて不可能ですね」


 ヘビ

「はい、さらに悪いことに口笛を吹いてもヘビが現れないもんだから、子供たちから『いつになったらヘビは来るんだ!』とまで言われてウソつき扱いされています」


 金田一

「わかりました、かなり深刻ですね。それでは、『夜口笛を吹いてもヘビは忙しい』ではいかがでしょうか?」


 司会

「先生、意味は何でしょうか?」


 金田一

「意味は『忙しいヘビさんに頼らずに、自分たちで子供を寝かせる努力をちゃんとしよう』という親に向けての戒めです」


 司会

「なるほど、枕元で昔話を語ったり絵本とか読んであげるのですね」


 金田一

「そうです、ズボラは駄目ですよ!という意味です」


 司会

「ヘビさん、いかがでしょうか?」


 ヘビ

「はい、これで安心して明日から夜勤に専念できます。今日はどうもありがとうございました」

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