第24話 スッポン

金田一

「さてと、お次は誰ですか?」


司会

「はい、スッポンですね。多分あのことわざですよ。それではスッポンさんお入りください」


スッポン

「こんにちは、よろしくお願いします」


司会

「こちらこそよろしくお願いします。早速ですがスッポンさんの提訴したいことわざは何ですか?だいたい予想はできていますが、多分月が出てくるやつでしよう?」


スッポン

「はい、お察しのとおり『月とスッポン』です」


司会

「一般には『姿形は同じだがその大きさや内容は全く違うこと』の例えですね」


スッポン

「はい、そうです。私たちの甲羅の形と満月が似ているからでしょうね」


司会

「このことわざの何が気に入らないのですか?」


スッポン

「私もいろいろ動物が入ってることわざは知っていますが、あんなに大きな月と比較されているのは私たちだけなんです」


司会

「言われてみればそうですよね」


スッポン

「それはあんな大きなものと比較されたら誰でも負けるに決まってますよね。あなたがた人間でも勝てますか?」


司会

「いやいや、人間でも絶対無理ですね」


スッポン

「でしょ?それを人間よりも小さい我々に押し付けているんですよ」


司会

「なるほど、よくわかりました。かなりご不満のようですね。それでは今日の提訴の内容はっきりとおっしゃってください」


スッポン

「はい。天体の月にはもう勝ち目がないのははっきりしています。でもどうせ負けるんであれば、もう少し大きな木星とか太陽とかに負けたいと言う気持ちがあります」


司会

「提訴の内容はよくわかりました。それでは金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「要するに『どうせ負けるなら月よりももっと大きな天体に負けたい』と言うお気持ちなんですね」


スッポン

「はい。その通りです。この際、負けは負けで潔く認めます」


金田一

「なるほど、潔い決意ですね。それではどうでしょう。この100年間で天体観測技術が飛躍的に発展してきました。現在確認されているところで太陽の2倍の大きさがある、おおいぬ座のシリウスなどはいかがでしょうか?」


スッポン

「大きいですね。『シリウスとスッポン』ですか・・・ゴロもいいですね。ちなみにもっと大きい星はありますか?」


金田一

「ありますよ。おうし座のアルデバランは太陽の36倍あります」


スッポン

「36倍ですか、それはでかい!まだありますか?」


金田一

「ありますよ。オリオン座のベデルギウスがなんと太陽の1000倍の大きさがあります。ちなみに太陽系の中にベデルギウスを太陽の位置に置くとその大きさは木星の軌道まで達します」


スッポン

「せ、1000倍ですか!ちなみに今まで観測されている中での最大の星はなんですか?」


金田一

「最近のNASAの観測結果で最大の星は『たて座UN』ですね。大きさは太陽の2000倍あります」


スッポン

「それはでかい!ではそれでお願いします。これなら負けっぷりもいいし、敗れたとはいえ悲壮感はありません」


司会

「そうですね。むしろ『スッポンさん、よく戦った』と健闘を讃えたくなるような言葉ですね。これはもう勇者の領域ですよ」


金田一

「わかりました。明日からは意味は据え置きで『たて座UNとスッポン』と変更するようにします。またこれは副次的効果として子供たちにもちょうどいい理科の学習になりますね」


司会

「スッポンさん良かったですね」


スッポン

「はい、待った甲斐がありました。ありがとうございます」


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