第12話 ネズミ

金田一

「さてと、次は誰かな」


司会

「はい、えーと。次はネズミですね。はいネズミさんどうぞ入ってきてください」


ネズミ

「はい、今日はよろしくお願いします」


司会

「よろしくお願いします。さて早速ですがネズミさん、提訴することわざはなんですか?」


ネズミ

「はいズバリ言って『ネズミ講』です」


司会

「一般には『商品を販売する際に複数の下のメンバーに順次買わせていく販売方法 別名マルチ商法』をさしますね」


ネズミ

「そうです」


司会

「この言葉の何が気に入らないんです?」


ネズミ

「気に入る、気に入らないの以前にこの言葉は犯罪用語になってます。数ある動物のことわざで犯罪用語に使われているのは我々ネズミだけなんです。それってどう思いますか?」


司会

「たしかに・・・おっしゃるとおりあまりいい気持ちにはなりませんね」


ネズミ

「ですよね。それでなくても我々ネズミは『ネズミ小僧』や『袋のネズミ』などと犯罪がらみの例え話に利用されてダークなイメージを持たれて困ってるんです」


司会

「言われてみればそうですね」


ネズミ

「『ネズミ講』に使われるのは、たまたまわれわれが多産系の動物だと言う理由でこのことわざに使われているのでしょうけれども、私たちも別に好きで多産系なのではありません。劣悪な環境の中で多くの子供を産むことによって成人に達する確率を上げているだけの事なのです」


司会

「それはよくわかります。人間も戦前同じような理由で子供をたくさん産んでいた時期がありました」


ネズミ

「しかもよく産むといってもハムスターを買った経験があるならわかると思いますけれども1回に10匹も20匹も産むことありません」


司会

「それわかります。うちの娘はハムスター飼ってますが、この前6匹生まれたと言って喜んでました」


ネズミ

「でしょう!たかだか6匹ですよ。自然界にはもっとたくさんの子供を産む生物がたくさん存在します。例えば豚さんも15匹産むこともあるし、マンボウさんなんかは一度に10万個の卵を産卵するらしいじゃあないですか」


司会

「わ、わかりました。それではネズミさんの提訴は名前の変更ですね」


ネズミ

「はい、この際もっと我々より多産系の動物に譲りたいと思います」


司会

「それでは金田一先生よろしくお願いします」


金田一


「ネズミ講は正式名称を『無限連鎖講』といいまして確かに現行刑法では処罰の対象となっています。1979年5月には『無限連鎖講防止法』が施行されました。国民にはわかりやすく『ネズミ講防止法』と呼ばれています」


ネズミ

「でしょう!やはりそんな物騒な名前からはすぐにでも外して下さい!」


司会

「ネズミさんまあまあ、落ち着いて」


金田一

「名前の変更を希望とおっしゃいましたが例えば仮に『豚講』や『マンボウ講』にしたところでネズミさんと同じような思いを豚さんやマンボウさんに向こう百年間強いることになります」


司会

「そうですね。結局は誰かがこの『汚れ役』をやらないいといけないのですね」


ネズミ

「私たちはその『汚れ役』をもう長年やってきましたからどうか今回で免除して下さい」


金田一

「わかりました。そもそも実際の動物を考えるから無理が生じます。ここは一気に『プヨプヨ講』に変えましょう」


司会

「は?プヨプヨ・・・先生、お気は確かですか?」


金田一

「テレビゲームに出てくるプヨプヨは知ってますよね?」


司会

「はあ・・・もちろん知ってます」


金田一

「では、今からプヨプヨを生み出したゲームソフト会社の設定書を読みます。『プヨプヨはプヨの雄とプヨの雌が交配して産まれます。一度に150匹を産む多産系の哺乳類です。プヨの子供は子プヨと呼ばれて体長が8-10mmあります』と書いてあります」


司会

「なるほど、そもそもが創造上の生物だから絶対苦情はこないし、すでに子供を中心に多くの国民にも衆知されていますね。ネズミさんプヨプヨいかがでしょうか?」


ネズミ

「はい、そのプヨプヨさんには悪いんですが私たちの名前が無くなるのならそれで結構です」


司会

「それでは明日からは『無限連鎖講』は『プヨプヨ講』に変わるということでよろしくお願いします」


ネズミ

「本当にありがとうございました」











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