第3話 カッパ

金田一

「司会さん、お次は誰かな?」


司会

「はい、カッパです。なんかかなり怒っていますよ。はい!ではお待たせしました。カッパさんどうぞ」


カッパ

「百年待ったけど、今日は白黒付けさせてもらうぞ」


司会

「はい、カッパさんいきなり穏やかではありませんが何を提訴したいのですか?」


カッパ

「決まっているだろう!『屁のカッパ』だ!」


司会

「一般に『すぐにできるとか簡単な作業』の例えですね」


カッパ

「ああ、百年前にも怒って提訴したが上手いことウヤムヤにされたからな」


司会

「このことわざの何が気に入らないんですか?」


カッパ

「何がどころか文法的にどうよ。屁が主語なんだぞ!」


司会

「たしかにそうですね」


カッパ

「わかるか?本来ならここに主語の屁が来て提訴しなければならないんだぞ」


司会

「たしかにカッパの屁ではなく、屁のカッパですね」


カッパ

「そもそもこのことわざは意味をなしていないだろうが?」


司会

「おっしゃる通り全く意味を成していませんね。これは盲点でした」


カッパ

「全く意味をなしていない言葉がなんで『簡単な例え』になるんだ!むしろ難しいだろうが!」


司会

「わ、わかりました。金田一先生よろしくお願いします」


金田一

「まず日本語では『の』は所有を表わします。つまり『屁のカッパ』とは『屁が所有しているカッパ』という意味なので確かにカッパさんの提訴通り逆にこれは『難しい例え』になりますね」


カッパ

「見ろ、わかっただろう。ただでさえ俺たちは悪い言葉の『屁』と組み合わされているんだ。しかもその『屁』の所有物なんだぞ。お前たちが『屁の人間』と言われて気持ちがいいか?」


司会

「まあまあ、落ち着いて。カッパさん」


金田一

「カッパさん、話は変わりますがあなたがたの日常生活で体内から屁を出す時は簡単ですか?難しいですか?」


カッパ

「屁か?俺たちカッパは肛門の筋力が弱いから人間よりは簡単だ」


金田一

「では決まりました。明日からは人間界に通達して語順を入れ替えて『カッパの屁』が簡単なことの例えにします」


司会

「カッパさん、いかがでしょうか?」


カッパ

「お、おう!それで頼むわ」





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