練炭コンロ

 ついつい七輪と呼んでしまいがちだが、練炭を使うのは練炭コンロと呼ぶらしい。


 石油ストーブが普及する前には練炭コンロ、木炭用七輪、炭団などは暖房器具でもあった。掘りごたつの熱源でもあった。

 当然ながら、より安全な暖房器具の普及によって一般家庭からは姿を消したのである。


 この練炭、元は石炭ではあるものの、炭には違いなく、練炭コンロなどが居間に鎮座していた時代には、何らかの炭火が一家団欒の直ぐ傍に有ったことになる。


 炭火と言うものは焼いて食べるものであれば何を焼いても美味しくなる。硫黄の臭いが少し付くであろう練炭コンロでもガスコンロの火に比べると美味しいのだ。恐らく硫黄の臭いについては、鼻が馬鹿になる程度に周りに充満していて気にならなっている。


 そんな炭火が直ぐ傍にある。するとどうするか。

 焼くのだ。

 魚であったり、サザエであったり、椎茸、茄子、さつまいもなど、焼いて美味しいものは何でも焼く。

 とりわけ、餅であろうか。


 想像でしかないが、餅の消費が減ったと言われるのは、核家族化とかの問題よりも家庭から炭火が消えたからなのかも知れない。


 餅は時間が経つと固くなり、焼くかどうかしないと食べられなくなる。

 しかし、炭火が直ぐ傍に有るならば、焼いちゃおうかとなる。

 だから正月三が日に余っていても、その内に食べてしまう。


 それが石油ストーブだったらどうなるか。

 焼けなくはないけれど、ここで焼かなくてもいいんじゃないかな、となる。

 灯油の火で焼いても、味はガスコンロの火で焼いたのと変わりがないので感動が無い。

 ガスコンロよりも時間が掛かる分だけ面倒くさくもある。


 こうなれば、餅を焼かなくなる。

 勢い、余ってしまう。

 余ったら、次の年末には搗く餅を減らす。

 そしてまた余る。

 更に搗く量を減らす。

 やっぱり余る。

 だったらもう搗かない。


 食べたい分だけ切り餅を買えばいいよね。


 時代の流れなのであった。

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