塩
話ついでに塩についても言及しておきましょう。
拙作「天ぷらに愛を、」には塩作りの場面が有ります。その中の謎工程「析出した塩を麻袋に詰めて水の中で揉んで再度塩水を作る」「麻袋に詰めて脱水機宜しく振り回して脱水する」がどうしてあるかです。
前者の謎工程は水に溶けない不純物を取り除くためです。
海水を煮詰めると、塩化ナトリウム(食塩)と一緒に硫酸カルシウム(石膏)が析出するそうです。それも食塩より先に析出し始めて食塩の析出中もまだ続くと言います。
伝聞調なのは自分で実験した訳ではないからです。以降は断定調になりますが、所々は伝聞調のつもりでお読み下さい。
つまり、単に海水を煮詰めただけでは石膏混じりの食塩になります。石膏は水に溶けないので口に含めばじゃりじゃりです。
その石膏を取り除くには、石膏混じりの食塩を再度水に溶かして漉します。すると水に溶けない石膏が濾紙に残ります。
この部分を象徴的に描いたのが前者の謎工程です。漉すのを同時にやって手間を省く形にしています。
麻袋が濾紙の代わりになる筈もないのですが、そこは謎の力が働いていると言うことでお願いします。
余談ですが、この石膏の件を踏まえると、塩田が何故塩田か理解できます。
塩田では砂に海水を撒いて乾かした後、塩混じりの砂を集めて塩水を作り、上澄みを漉してから煮詰めます。
再度塩水にして漉す、と言う工程が海塩作りには入りますので、一度目の乾燥時に砂が混じっていようと関係ない訳です。その際に太陽の力を借りれば、燃料が節約できるのです。
これを思い付いた昔の人は本当に知恵者です。
ただ、自家製の海塩を作るだけなら少しくらい石膏が混じっていても気にする必要は無いので、石膏が粗方析出したところで石膏を取り除いた後に煮詰めれば良いのではないでしょうか。
後者の謎工程も不純物を取り除くためですが、ここで言う不純物はにがりです。
にがり成分は食塩より後で析出し始めるため、完全に煮詰める前に脱水してしまえばにがりが殆ど分離できることになります。
この場合は析出前の食塩が無駄になりますが、主人公にとっては大雑把に処理できる方が結果的に楽なので振り回した訳です。
にがりを取る場合には作中でも少しだけ工程を変えています。
また、作中には塩絡みで嘘っぽい部分が有ります。
主人公の親友が岩塩由来の塩よりも主人公の作る海塩の方が美味しいように言うところです。
にがり成分が蛋白質を固くするため、肉料理に使えば岩塩を使った場合よ肉が固くなります。殆どの日本人の感覚からすれば肉は固いより柔らかい方が良い筈なので、味覚としてどうかなな部分です。
現地の人々は少し肉が固い方が好みなのだと誤魔化しておきます。
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