サンマ

 生を丸焼きにする魚で一番に思い浮かぶのはサンマではないだろうか。


 鯛?


 ……庶民の味として、生を丸焼きにする魚で一番に思い浮かぶのはサンマではないだろうか。


 そして焼き上がった姿を思い浮かべると、頭と尻尾が生っぽくはないだろうか。


 往々にして七輪やガスコンロの口径が原因だろう。

 頭と尻尾がはみ出すのだ。

 広がりを考慮しても精々二五センチほどの範囲の火の上に大きければ四〇センチのサンマを乗せる。

 これではみ出さない筈がない。


 半分に切って焼くと、内臓がでろでろっとはみ出して、これはこれで残念なことになる。

 で、どう焼くかと言えば、頭の方半分を焼き、焼き上がったら尻尾の方半分を焼く。

 手際が悪いとサンマが真ん中から折れたり、網を引っ繰り返してサンマを台無しにしたりする。

 焼くのも結構大変なのである。


 そうして焼き上がった時、真ん中付近は頭と尻尾を焼く際にそれぞれで火が掛かるため、少し焼きすぎになる。

 真ん中を焼きすぎないようにとすれば頭と尻尾が生っぽくなるのであった。


 だったら内臓を取ってから焼けばいいじゃないか。


 そうなのだけど、サンマに限っては内臓を好んで食す向きもある。

 腸の中身を気にせずに食べられるのだから、好きな人が食べない筈もない。


 サンマは腸が短く、食べたものが一日と掛からずに出て行ってしまうと言う。

 そんなサンマを締める前に、餌を与えないまま生け簀で泳がせる。

 すると腸の中身が空っぽになり、目出度く食しても大丈夫になるのである。


 ただ、個人的には苦いのが苦手で内臓は食べないのでありました。

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