第6話

満天の星空。

非日常の世界。

「わあ〜!!タイムワープ!?」

「あはは、次はこれ。」

「キッチン」とロボットに話しかける。瞬時にあたりが洋風のダイニングキッチンになった。

「これフライパンとか使えるの?」

「実際に使えるものを出せるかはまだ研究中らしい。」

かよことりゅうまは◯◯市の大ロボット展に来ている。一瞬にして舞台背景をリアルに映し出してくれるロボットのブースで2人ははしゃいでいる。

「お次は歌声を楽譜にしてくれるロボット。」

「めちゃくちゃやってみたいけど、人前では恥ずかしくて歌えないよね。」

りゅうまがマイクに進み出た。


「魔法のコンパクトを開いて変身っ☆♪可愛いドレスとお気にの靴で私はプリンセス〜♡プリンセス☆マ〜メイド〜☆♪‥」

「やめいっっ!!!」

必死でかよこがりゅうまを制止した。突然大の男がこどもに大人気のアニメ、「プリンセス☆マーメイド」を熱唱しはじめたのでみんなポカン、としていたが、小さい女の子が、

「私も歌うー!!」

と言い出し、マイクで歌い出した。

周りの客は一瞬にして盛り上がり、小さな歌姫の歌声に耳を傾け、歓声を送った。

「ほら、さっきの歌声の楽譜もらえた!」

「う、うん‥」

かよこは壁に手をつき頭をうなだれる。

「りゅうま君、ほんと、思いっきりいいよね‥」

「今のかよこさんもなかなか変だよ。さ、次々!」


次はアンドロイドのブースに入る。

「ようこそ!アンドロイドのコーナーへ。」

「こんにちは〜」

「こんにちは。私は受付案内ロボ・YUkAR Iです。」

「お姉さんもアンドロイドなんや!!!」

綺麗なボブカットの受付嬢は、にっこり笑う。

「はい、そうです。」

「ひょえ〜!!!普通に受け答えしてる!!!」

「かよこさん、めちゃ良い反応。このコーナーはこの展示の最大の売りで、ほんとのほんとの最先端のアンドロイドを展示してる。普通に、人間みたいやろ?」

しばしYUkAR Iさんとお話した後、お姉さんさいなら〜と次の展示にうつる。

「お姉さん彼氏いますか?!って聞いたら秘密だって!!!」

「ちょっと、何ナンパしてんの。お次はイケメンやで。」

展示に、スポーツロボ・アンディとかいてある。

「やあ、こんにちは!!はじめまして!!」

芝生のステージに、サッカーユニフォームを着た外国人男性が現れた。

「Wow!! Are you a robot??」

「かよこさん、相手日本語話しとるやん。」

「そうだよ!ロボットだよ!色んな世界の言葉が分かるよ♪」

アンディは主にサッカー用に作られたアンドロイドで、人間の代わりに一緒にプレーしたり、大会の手伝いをしたりする為に作られた。

アンディを選手としてプレイさせるかは賛否両論分かれている。アンディ以外にも、様々なスポーツでアンドロイドが開発されている。

「俺は他にバレーロボとか見たことある。」

「すごーい。どこで見たの?」

「ほら、俺、天才だから!」

すごい、まったく受け答えになっていない。りゅうま君はこんなに情報工学、アンドロイドに詳しいから、きっとこういう展示とかめちゃくちゃ行ってるのだろう。羨ましい。

しばし、アンディの華麗な足さばき、技を見学した。

展示のパネルを見ていると、近くの部屋からピアノの音が聞こえてきた。ドビュッシーの「月の光」だ。

部屋を覗くと、グラウンドピアノを弾く可憐な女性がいた。

「この人は楽器演奏ロボット・奏(かなで)。他にも色んな楽器が弾けるよ。」

「はじめまして。奏です。リクエストにお応えしますよ。弾いて欲しい曲をおっしゃってください。」

りゅうまはさっきもらった自分の歌声の楽譜を渡した。

「承知しました。」

曲が始まると、さっきまで静かな雰囲気だったのに、楽しい感じの違う雰囲気になり、子ども達が一斉に、

「プリンセス☆マーメイドだ〜!」

と言って集まり始めた。

もしかして‥

もしかして、こどもを楽しませるために‥?

歌声を楽譜にするコーナーで、可愛い歌声を披露してくれた女の子は、りゅうまが歌うまで、

「プリンセス☆マーメイド歌いたいけど、恥ずかしいな〜‥」

ともじもじしていた。手にはプリンセス☆マーメイドの人形を抱えて。

りゅうま君、やるじゃん!

「ごめん、りゅうま君、ただのノリのいい変な人だと思ってたよ。」

「いきなりけなして褒めた!?」


お手洗いから帰ってくると、りゅうまはお土産コーナーを見ている。

「お、かよこさん、アンディの写真集だって。買う?」

それは無視して、『日本アンドロイド図鑑』という本を購入した。日本が開発した、名だたるアンドロイド達を紹介した本だ。他にも本を書いたかったが、予算的に我慢した。

「これで展示は全部終わりかな?」

「いや、まだまだよ。向こうに◯◯市秘蔵の展示があるらしい。」

りゅうまはお手洗いの先の長い、暗い廊下を指差した。

「ラスボスってわけね。じゃあ、行こう。」

りゅうまの後ろにくっついていって進む。

突き当たりの重いドアを開ける。

また廊下だ。

「わあ、かなり大事なものなの?奥深くにあるみたい。」

「かなりやばいものらしい。」

突き当たりにまた扉が見える。

関係者以外立ち入り禁止

と書いてある。

「えっ、ほんとにここであってる?順路間違えてない?」

かよこの言葉を無視してりゅうまが扉を開ける。今度は地下に続く階段が現れた。

「りゅうま君!?何する気なの!?」

「大丈夫。俺、犯罪者でも非常識なやつでもないから。ここに入ることは許可されてんの。」

りゅうまは、顔写真入りのライセンスカードを見せる。

「詳しいことは後で話すけど、今回のイベントはうちの大学と様々な企業が連携して行っている研究を世に広く知らしめようって狙いがあって、その研究にみのり先輩も中心になって携わってるし、俺もみのり先輩の助手を特別にさせてもらってて、深く携わってる。だから、全然関係者なの。」

「ええっっ!?みのり先輩ってロボットの研究してたの!?天才ハッカーではなく!?しかも2人ともめっちゃすごいじゃん!!!」

「あはは、あっさり信じるあたりがかよこさんだな。‥まあ、本当なわけだけど。」

その証拠を色々お見せするよ!まあついてきて!

りゅうまに促され、地下階段を降りていく。

「私なんかがこんなとこ来ていいの!?」

「私"なんか"じゃないよ。かよこさんだから連れてきた。理由は後で。友人だから遊びで連れてきたんじゃないよ。」

りゅうまは自分のことを「友人」と言ってくれた。そこにジーンとしている間に、地下に着き、また廊下を歩き、いくつもの認証付きの扉を抜けてきた。

まるでSFの世界だ。いや、かよこ達が生きる2×××年は、SFという概念も変わってきているといわれている。

「さあ、ここで最後。長かったね。」

あまりにも漫画設定にうきうきわくわくしていたために、距離とか、扉の数とか忘れてしまった。本当、いかに自分が普段頭を使っていないかを思い知らされた。

最後の認証扉を開くと、真っ黒な部屋。

りゅうまがスイッチみたいなものをつける。

そこには‥



「‥ええっ!?ちとせ‥!?!?」

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