第4話

ずっと自分だけしかいない世界だった。

本当は様々なつながりがあった。

それさえも切り離してしまうような、心地よい、孤独があった。

そんな中、あなたが現れた。



寝れない。

楽しくて、楽しくて寝れない。

中毒で、ちょっとした返信も渇望する。


‥2人でプログラミング問題をやりとりしてるから。

飲み会が終わった帰り、ちょっとチャットで話してから、りゅうまもプログラミングができることが分かり、上級者のりゅうまが超絶初心者のかよこに問題を出してもらいながらプログラミングを教えてもらうことになった。

教えてもらっているプログラミング言語は、

i+(アイプラス)

という比較的新しく出来た言語で、(※架空の言語です)今や当たり前のように量産されている、人型アンドロイドの制御などに使われている言語だ。比較的初心者でも取り組みやすい。

「本なら『初心者のためのi+』がえーよ』

通販サイトのURLと共に、長ネギのキャラクターのスタンプが送られてきた。

「なぜ長ネギ?」

「ちなみにこのスタンプ、みのり先輩が作ったやつの一つな。」

「忙しい、忙しいと引きこもって、先輩こんなん作ってたんやね」

「りゅうまだからって、龍がノリノリで踊るスタンプとか作ってくれた。」

「忙しい、忙しいと、三徹した人が優しいね。」

一週間ぐらい、こんな調子でチャットをしている。はるかはニヤニヤしていたが、とびっきり幸せそうな様子のかよこを見て、あれは人にドキドキしてるんじゃない、ロボットにでもドキドキしてるんだ、とあけみが言った。図星だった。

ずっと気になってた憧れのアンドロイド技術が無料で学べる。りゅうまとチャットしてる時間は、この上ない至福の時間だった。しかし、はるかはため息をつく。いい?かよこ、どうしてりゅうま君はこんなに親切に教えてくれると思う?趣味が合うだけじゃないのよ、下心よ、下心。

しかし、かよこはきょとんとしている。

20年間彼氏がいなかった私。顔も体型も成績も普通の私。才能もない私。

才色兼備に囲まれた私。イケメンさえも普通に身近にいすぎてときめかない私。

卑屈に考えればキリがないが、言った。

「でも、私、とにかく楽しくて、りゅうま君と話すのがやめられないの。」

いいんじゃない、それで。あけみが呟いた。


i+の基本文法をほぼほぼ覚えた頃、りゅうま君から、

「朗報!朗報!」

のメッセージが送られてきた。長ネギと共に。

「5月の第1土曜日に○○市で大ロボット展があるってよ!一緒に行く?」

情報が送られてきた。

即答でYES!!

その時、はるかの下心、という言葉がよぎった。返事を送ってしまった後に考えた。はるかの話だと、

「男女の友情って難しくてね〜。どんなに趣味友でも、必ず男女問題が起こる。どちらかがその気じゃなくても。だから、一定以上距離を置くべし。」

「それ例えばたけよしにもあてはまるの?」

「たけよしはね、絶対にないの。」

いつもたけよしのことになると憎まれ口ばかり叩くはるかが真剣に答えた。そして、なぜはるかがそういうのか理由を私達は知っている。‥たけよしがホモとかそういうことではない。でもちとせにベタベタで、はっきり言って怪しいけど。

返信が返ってきた。

「11時に駅前集合で。ファミレスで飯食って、行こう!」


「君は理想の王子様〜!☆夢のレールの手押し車を引いてくれる〜☆時には後ろから、時には前から☆

一緒に転んでもくれる、その時抱きしめてくれる☆

君となら星の裏側も 星屑の先さえもいけるよ☆前ばかり見てられるような優しさと明るさを兼ね備えた☆

男前〜!伊吹シュン!☆」


アニメ、きらっ☆銀河王子のいつもの歌を3人で熱唱中、突然あけみが号泣しはじめた。演奏をすぐさま中止するはるか。

「大丈夫?」

こういう時、理由とか聞かないで背中をさする。

何か聞いてほしいなら、本人が言うから。

「理由は言えんけどな‥」

ティッシュで鼻をかむ。

「ちとせ関係。今、連絡が入って。」

この後2人であけみを家まで送り届けた。ちとせは無事なの?と聞くと、そういうのじゃないから、と。なら良かった。とそれだけ聞いて背中をさすって、なでなでして落ち着かせた。

あけみのただならぬ雰囲気に、私達はあけみの熱烈な恋の終わりを覚悟した。

2人の出会いは高3の春。

当時、咲月夜界隈では無敵で、世界にも敵がいないレベルだったあけみ。何回もメディアに取り上げられ、これほどの天才で美しすぎるゲーマーなのに、素性が一切不明とかなり話題になった。そんな敵なしになったあけみは、

「私に勝てる殿方がいましたら、結婚して差し上げますわ。」

と豪語していた。

咲月夜のルールとして、対戦相手に和歌を送って求婚したり、同盟を組んだり、挑戦状を送りつけることが出来る。挑戦状を送り、相手が受けてたつ返歌をすれば、バトル開始。女性は天皇なら自軍、その他ならば旦那や父、兄弟の軍で戦う。男性は基本自軍だが、妻が天皇なら妻の軍、父や兄弟の軍でも戦える。初期設定では女性は父の軍で戦う。自軍が持てない女性のために、政略結婚に応じれば、主を変えられたり、連合軍などが作れる。反対に、男性はペアになった兄妹の女性と協力して、政略結婚により連合軍を作ることが出来る。天皇の女性と男性は月1交代でランダムに一定数だけ選ばれてなる。男女差別気味にならないように、女性の意思も男性と対等に反映されるように作ってある。和歌が自作出来たり、(それを投稿して皆んなに見てもらえるシステムもある)、非常に緻密な駆け引き、戦略がいることから、やり始めれば非常に奥が深いゲームであり、未だに熱狂的なファンが多く、世界大会まで開かれるほどのゲームである。

そんな中、無名の少年から、あけみに和歌が送られた。

2人は戦い、なんと誰も予想だにしなかったが、少年が勝利する。

あけみは高1からの無敗記録、世界記録を破られる。その少年こそ、早見千歳。

そこから、夕顔の千年の恋が始まる。


ゲーム上で結局2人は結ばれなかった。

夕顔が求婚しても断られ続けた。

そして、2人は一年後、現実世界で出会うこととなる。

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